【ファンド運用秘話】再開発プロジェクトを仕入れ担当者が語る
2024年01月30日
本記事では、ファンドが実際にどのように、そしてどのような想いで運用されているのか。運用担当者に迫ります。
今回は、「虎ノ門 再開発プロジェクト フェーズ1」の対象物件の仕入れをしたSさんに、仕入れ背景などをインタビューしました。
※2022年6月時点の内容です。
本物件は、最寄駅から徒歩1分とかなりの好立地ですが、どうやって物件情報を入手できたのでしょうか?
今回取得する物件は4人の地権者さんが中心となり、複数の仲介会社へ売却の依頼を出されていました。
売主側の仲介会社の1社が偶然我々とも繋がりがあったため、今回の話が進みました。
その土地に住む地権者さんにとっても、今回の再開発で約5年かけて新しい建物が建つまで引っ越しをして待たなければいけないこともあり、現時点で売却されることを決められたようでした。
また、今回の再開発プロジェクトでは、みずほ系の不動産会社である日本土地建物を中心に、住友不動産とかUR都市機構などの大手が絡んでいて、これまで地権者さんと様々な交渉経緯があったんだと思います。
「いくらで買いますよ」とか、「立て替えたらこれぐらいになりますよ」のような交渉をすると思いますが、基本的にディベロッパー側も、あまり大風呂敷広げて「今回の再開発プロジェクトはものすごく最高ですよ」ってやると、将来的に環境が変わった時や、建築費が割高になるリスクもあるため、価格を抑えて交渉することが一般的です。
さらに、ディベロッパーが販売用として取得する割合はなるべく多い方が、当然儲かるわけじゃないですか。
つまり、どちらかと言うと、地権者側とディベロッパー側はセイムボートじゃないんですよね。同じ船にいながら、ディベロッパーとしてはなるべく少しでも利益が狙えるように。
そういった前提があり、安い価格でしか買い取ってくれないのではと感じていたから、今回地権者さんから仲介会社を通してお話がきたとも感じています。
今回ファンドの利益はどうやって発生するのでしょうか?
再開発に伴って「権利変換制度」が設けられています。
この制度によって、ファンドにて取得する従前資産の代わりに、再開発により新たに建築される建物の一定床面積部分が提供されます。
一定床面積部分を決定する際は、従前資産の評価により個々で判断されることになりますが、現在予定されている約96坪の一定床面積部分の取得だけみても、開発後の建物は資産価値が上昇する予想がされていることから、利益が出る想定となっています。
さらに今年行われる権利変換の交渉次第では、取得できる床面積部分がさらに増えることになり、更なる利益を期待することができます。
今回対象になるエリアにおいては、都市計画決定がされており、この計画の中には法定の基準よりも遥かに高い180mの建物の開発が行われることが既に決定しています。
法定基準よりも高い建物は、特別な環境が手に入ることから、一般的に資産価値の上昇が見込まれます。
この都市計画決定がなされるまでは非常に大変なんです。
前回COZUCHIの「品川駅前 再開発エリア3区分レジファンド」では、あくまでも都市計画決定がされる可能性があり確定ではなかったのですが、今回は正式に決まっている点が大きく異なり、計画が実行される蓋然性はかなり高いと言えます。
この都市計画決定自体が覆ることはあるのでしょうか?
それはないと考えています。
僕自身も中止になった事例は心当たりありませんが、もし仮に急に日本の政権が変わって計画を取りやめるってなったら、計画を信じて不動産の売買や事業計画を進めている方々も当然いると思いますので、賠償責任問題にまで発展することも想定でき大変な事態になることも考えられます。
そのため、都市計画決定が覆ることは考えにくいといえます。
今年で権利変換の対象床面積が確定するため、今回ファンドはかなり重要なフェーズになりますよね?
権利変換の対象割合が今年決まるので、そこで勝負がつくことになります。
より多くの床面積を権利変換の対象に出来れば、再開発後の資産価値は上昇し、さらなる利益配当が望めることになります。
投資家さんが安定して利回りを取れる設計が立てられていますが、そのうえで、あくまでも妥当のラインで、追加取得し床面積を増やしていく。
「そもそも147坪までしか買えないって言ってるけど、本当なんですか」と交渉は続ける予定です。
今回対象物件の表地の容積率が約800%ぐらい、裏地が約300%なので、中間地点は仮にならして約500%と考えるじゃないですか。
その土地に、容積率約1500%の建物が建つわけです。
(※容積率とは、敷地面積に対する建物の延べ床面積の割合。容積率が高いほど高い建物が建てられる。)
つまり、元々建てられる高さの、3倍高い建物を立てることになります。
今回の場合、単純に考えてみると、現状このうち3分の2はディベロッパー側が販売する面積になるんです。
ただ、僕からするとちょっと取りすぎじゃないかと思っています。
開示されてる資料によると、プロジェクト全体で約1700億円ぐらいの事業費で、そのうち地権者側の従前評価の合計は約700億円ぐらいになります。
つまり、1,000億円分の事業費はディベロッパー側の建築費とか様々なコストがかかりますと。
そうすると約1700億円分の約700億円は地権者の権利とみれるじゃないですか。
そう考えると17分の7の床面積を権利変換してもらえると考えられるわけじです。
そうしたら僕たちが建築費出したら追加でもらえるんですか、と交渉が出来るとも思っています。
他に考えられるリスクというと、何かあるのでしょうか?
4、5年先まで開発が続く先のことなので、もちろんマーケットが激減していて、今回虎ノ門のような都心でもグレードAがどこまで価値が上がっているのか不透明なところもありますよね。
オフィスビルが供給過剰になって価値が伸び悩むんじゃないかっていう見方をしてる方もいますが、私としては、海外の投資家に支えられると個人的には思っていて価値は落ちにくいと考えています。
海外の投資家さんから日本の不動産はその調達金利が安く、いわゆるその利回りから調達金利を引いた「イールドギャップ」という値が高いと言われていて、そういう意味で海外の投資家さんが日本の不動産を買いたいっていう意欲は引き続きあると考えています。
日本は政治も安定してますしね。
政権が急に変わり、ルールが全部変わるわけではないですし。
そういう意味で言うと、リスクは限定的だと考えています。
利回りはどのように決定されたのでしょうか?
今回プロジェクトの最終的な利益から逆算して、利回りは決定しています。
虎ノ門ほどの都心の一等地は需要があり安定するため価格は高くなりますので、利回り(取得コストに対する1年間で得られる収益)で考えると低くなります。
再開発後の建物においては、エリア周辺のデータを参考にすると、表面利回り2%ぐらいになると考えています。
国際的なビジネス拠点になっている虎ノ門エリアのオフィスビルは人気があって、利回り4%として一般的には絶対買えないですからね。
今回COZUCHIでは、一般的な利回りを上回る4%でファンド化しています。
そのような都心の一等地を個人の方が利回り4%として持てる世界って、僕はすごいことかなと思っています。
立地は本当にとても安定していると言えますから。
ただ、今回のファンドにおいてもCOZUCHIの配当ポリシーは変わりませんので、利回りは設定しているものの権利変換などの状況によっては想定を上回る可能性はあるかと考えています。