遺産分割協議書とは?必要なケース・作成に必要なもの・作成手順を解説

2026年01月16日

財産を所有している人が亡くなった場合、どのように遺産を分割するのかを決める必要があります。

相続を受ける相続人同士で遺産分割について協議することを遺産分割協議と呼び、協議での決定事項を記したものを遺産分割協議書と呼びます。遺産分割協議書は、 相続に関する手続きで使用されるほか、相続後のトラブルを避ける効果もあるため、必要に応じて作成しておきましょう。

今回は、遺産分割協議書の概要や記載する内容、作成に必要なもの、作成手順などを詳しく解説します。遺産分割の予定がある方はぜひ参考にしてください。

遺産分割協議書とは

遺産分割協議書は、遺産を相続人の誰がどのように相続するのかを記載した書類で、すべての相続人によって行なわれる遺産分割協議をもとに作成されます。作成された遺産分割協議書にすべての相続人が署名と実印の押印をし、一人1通ずつ所持します。

なお、遺産分割協議書の作成にはすべての相続人の合意が必要です。相続人同士で端的に合意形成できれば良いですが、相続人探しに苦労したり必要書類の入手に手間取ったりと、協議が難航して合意に至らない場合もあります。

遺産分割協議書の作成には時間がかかると考え、早めに準備を進めておくことが大切です。

遺産分割協議書の要否

遺産分割協議書の作成は法律で義務付けられているわけではありません。遺産分割協議書は相続の内容を文章化することで、相続人同士のトラブルを避けるために作成されます。そのため、トラブルが発生する余地のない場合は、遺産分割協議書を作成する必要はないでしょう。

ここでは、遺産分割協議書の作成が必要なケースと不要なケースをそれぞれ解説します。

遺産分割協議書が必要なケース

以下のようなケースでは遺産分割協議書の作成が必要です。

・遺言書がなく、法定相続分とは異なる遺産分割を行なう
・遺言書に記載がない財産が発覚した
・相続によるトラブルを防ぎたい
・相続登記などの手続きが必要
・相続した財産の名義変更を行なう場合

遺言書がない場合は、法定相続分(民法の定める相続割合)もしくは相続人同士の話し合いで遺産分割を決めることになります。話し合いで決める際は、遺産分割協議を行なうため遺産分割協議書の作成が必要です。遺言書に記載がない財産が発覚したケースも遺産分割協議書を作成し、財産の相続先を明記しておきましょう。

相続によるトラブルを防ぎたいケースでは、必ずしも必要なわけではありません。しかし、あとから「言った」「言わない」というような問題に発展しないためにも作成しておくことをおすすめします。

また、不動産や自動車などの相続登記(名義変更)などの手続きでは遺産分割協議書が必要な場合があるため、作成しておきましょう。

遺産分割協議書が不要なケース

以下のようなケースでは遺産分割協議書の作成は不要です。

・相続人が1人だけ
・遺言書がある
・法定相続分にしたがう

相続人が1人だけのケースでは、協議する相手がいないため遺産分割協議書を作成する必要がありません。また、遺言書があるケースも作成は不要です。ただし、相続人全員の合意があった場合は遺産分割協議での遺産分割ができることになるため、その際は遺産分割協議書を作成する必要があります。

法定相続分にしたがい遺産分割するケースも、遺産分割協議書は不要です。ただし、相続後にトラブルが発生する可能性がある場合は、念のため遺産分割協議書を作成しておくとよいでしょう。

遺産分割協議書の記載内容

遺産分割協議書に決まった様式はありません。協議内容を正確に記録できるよう、遺産分割協議書には以下の内容を記載しておきましょう。

<遺産分割協議書に記載すべき内容>
・作成日付
・被相続人の名前と死亡日
・相続人が遺産分割内容に合意していること
・相続財産の具体的な内容
(預金の場合は銀行名、支店名、口座番号など)
(土地の場合は所在、番地、地目、地積など)
・相続人全員の名前や住所
・相続人全員の実印の押印

法務局では、以下のような遺産分割協議書の記載例を公開しています。記載例を参考にしながら、協議内容をふまえて遺産分割協議書を作成しましょう。

引用:遺産分割協議書記載例|法務局

なお、遺産分割協議書の作成は、パソコン・手書きどちらでも問題ありません。自分で作成することもできますが、作成する自信がない場合は弁護士などに相談するのがおすすめです。

遺産分割協議書作成に必要なもの

遺産分割協議書を作成する際は以下のような書類が必要です。書類をそろえるのには時間がかかるため、早めに申請手続きをしておきましょう。

<遺産分割協議書作成に必要なもの>
・被相続人の出生から死亡までのすべての戸籍謄本等
・被相続人の住民票の除票(もしくは戸籍の附票)
・相続人全員の戸籍謄本、印鑑登録証明書、実印
・遺産に預貯金がある場合は、預貯金通帳や口座残高証明書
・遺産に不動産がある場合は、不動産の全部事項証明書
・遺産の内容がわかる書類
・財産目録(あれば)
・相続放棄者がいる場合は、相続放棄申述受理証明書または相続放棄申述受理通知書(あれば)

ただし、相続する財産の種類によって必要書類は異なります。相続関係が複雑な場合や相続財産が多い場合は、専門家の協力も得ながら準備していきましょう。

協議書作成までの流れ

遺産分割協議書は以下の流れで作成します。

1.相続人を確定する
2.相続財産を調査・評価する
3.遺産分割協議を行なう
4.遺産分割協議書を作成する
5.遺産分割協議書にしたがって各種手続きを行なう

1.相続人を確定する

遺産分割協議には相続人全員の参加が必要です。相続人は被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本を集めて確認します。万が一協議に参加すべき相続人が足りていないと、協議内容が無効になってしまうためしっかりと調査を行ないましょう。

なお、人数が多い場合は相続関係図を作成しておくと、相続人が誰であるかを判別しやすくなります。

2.相続財産を調査・評価する

相続人が確定したら、被相続人のプラスの財産とマイナスの財産を確定させます。以下では、それぞれの財産の例を紹介します。

<プラスの財産とマイナスの財産の例>
プラスの財産例
・現金や預貯金 
・不動産(土地、建物など)
・有価証券(株式、債券など) 
・売掛金
・自動車やバイク
・ゴルフ会員権 
・知的財産権(特許権、商標権、著作権など)
・美術品、宝石類  
など

マイナスの財産例
・ローン(住宅、自動車など)
・未払金(家賃や税金、医療費など)
・借入金 
・買掛金 
など

金融機関の通帳やキャッシュカード、不動産の権利証、借用書などがないか調べ、財産目録を作成しましょう。

3.遺産分割協議を行なう

財産目録などを参考にしながら相続人全員で遺産分割協議を行ないます。

協議は相続人全員が一堂に会して話し合うのが理想的ですが、遠方に住んでいるなどの理由から参加できない場合もあるでしょう。話し合いでは相続についての合意が得られれば良いため、対面ではなく電話やメールで意思表示することも可能です。後々のトラブルを避けるためにも、丁寧に話し合いを進めていきましょう。

また、寄与分(相続財産の維持や増加に特別に貢献した割合を示すもの)がある場合には、遺産分割で法定相続分以上の遺産の取り分をもらえる可能性があります。

遺産分割協議に期限はありませんが、相続税の申告・納付は被相続人の死亡を知った日の翌日から10ヵ月以内に行なわなければならないとされています。相続税申告期限までに協議を終えられるよう早めに準備しておきましょう。

4.遺産分割協議書を作成する

すべての相続人から遺産分割の合意を得られたら、遺産分割協議書を作成します。遺産分割協議書は自分で作成することもできますが、トラブルを避けるには税理士や弁護士などの専門家に作成を依頼するのがおすすめです。

遺産分割協議書に相続人全員の署名と実印の押印が済んだら、相続人がそれぞれ1通ずつ所有・保管します。

5.遺産分割協議書にしたがって各種手続きを行なう

相続にあたって、以下のような手続きを行なう場合は遺産分割協議書が必要です。必要書類と併せて、遺産分割協議書を適宜活用しましょう。

・預金の名義変更や払戻し
・株式の名義変更
・不動産の名義変更
・自動車の名義変更
・相続税の申告

遺産分割協議書作成のポイント

遺産分割協議書は遺産分割協議を行なわなければ作成できません。相続放棄は相続開始を知った日から3ヵ月以内、相続税の申告・納付は相続開始を知った日から10ヵ月以内に行なう必要があるため、協議はできる限り早めに始めましょう。

また、遺産分割協議は原則としてやり直しができません。内容に抜けや漏れなどの不備があると、協議書が無効になってしまう可能性がある点にも注意が必要です。

なお、生命保険金や死亡退職金は遺産分割の対象外です。遺産分割協議書に記載する必要はありません。

遺産分割協議書に関するよくある質問

最後に、遺産分割協議書に関するよくある質問を紹介します。

遺産分割協議書作成後に新たに遺産が見つかったらどうなる?

遺産分割協議書作成後に新たに遺産が見つかった場合、新たな遺産についての遺産分割協議が必要です。その際、以前行なった遺産分割協議は有効であり、取り消されることはありません。

再度遺産分割協議を行なうことになると、相続トラブルが再燃する可能性もあるでしょう。トラブルを避けるためにも、最初の遺産分割協議で「後日新たに遺産が発見された場合は誰が相続するのか」を定めておくのがおすすめです。

遺産分割協議書をなくしてしまったらどうなる?

遺産分割協議書は相続人がそれぞれ1通ずつ所有して保管します。協議書に書かれている内容はすべて同じであるため、仮に遺産分割協議書をなくしてしまっても、ほかの相続人の遺産分割協議書を借りれば問題なく手続きを行なえます。

ただし、自身が紛失した原本を新たに作成する場合は、相続人全員の協力が必要です。遺産分割協議書は紛失しないよう、取り扱いには十分注意しましょう。

遺産の一部のみの協議も可能?

遺産分割協議では、遺産の一部についての協議も可能です。ただし、いったん成立し作成した協議書の内容を覆すことは困難であるため、協議を急いで内容を疎かにしないようにしましょう。

まとめ

遺産分割協議書は、相続後のトラブルを避けたり相続に関する手続きをしたりするための重要な書類です。ただし、遺産分割協議書の作成は法律で義務付けられているわけではありません。「相続人が1人だけ」「遺言書がある」「法定相続分にしたがう」といった場合は作成不要です。

なお、遺産分割協議書の作成には相続人全員の同意が必要です。協議では話し合いが難航してなかなか合意できなかったり書類集めに手間取ったりすることもあるため、早めに準備を進めましょう。

遺産分割によって資産が増えたら、投資を始めるのもよいでしょう。

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本記事は、執筆時点(2025年9月31日)における税制・法律等の情報をもとに作成しています。税制や関連する法律・制度は、今後の法改正や運用の変更などにより、内容が変わる可能性があります。
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の方の状況に応じたアドバイスを行うものではありません。
実際の手続きや判断にあたっては、必ず最新の情報をご自身でご確認いただくとともに、必要に応じて税理士・弁護士などの専門家にご相談ください。

■監修者

氏名:太田 照明
保有資格:損害保険トータルプランナー、生命保険協会認定FP、CFP、1級FP技能士
主なキャリア:大学を卒業後、自動車と外食産業の営業を経験し、その後保険業界へ。