生前贈与で相続税を賢く節税!失敗しないための基礎知識と注意点を解説
2026年01月16日
「相続税の負担が多くなるかもしれない」「大切な財産を確実に家族に引き継ぎたいが、
良い方法がわからない」という悩みを抱えている方は多いのではないでしょうか。
そこで注目されているのが「生前贈与」という方法です。生前贈与を活用することで、相続税の節税対策ができるだけでなく、自分の意思で「誰に、いつ、どのくらい」財産を譲り渡すかを自由に決められるようになります。
ただし、生前贈与には贈与税がかかるなど、注意すべきポイントがあるのも事実です。計画的に進めないと、かえって税負担が重くなってしまう可能性もあります。
この記事では、生前贈与の基礎知識から具体的なメリット、暦年贈与や相続時精算課税制度といった仕組みの活用方法、さらには気を付けるべき注意点までわかりやすく解説します。自分の希望に沿った財産の移譲を実現するために、ぜひ参考にしてください。
生前贈与とは?相続との違いを理解しよう

財産を次世代に引き継ぐ方法として「生前贈与」と「相続」の2つがあります。ここでは生前贈与の概要と、2つの違いについて見ていきましょう。
生前贈与の基礎知識
生前贈与とは、自分が生きている間に、財産を誰かに無償で譲り渡す手続きを指します。財産を譲り渡す人を「贈与者」、受け取る人を「受贈者」と呼び、贈与者が譲り渡すことを意思表示し、受贈者が受け取ることを承諾することで成立する契約です。
生前贈与をしておけば、相続の際に残る財産が少なくなるため、相続税の節税対策として利用できます。
相続との根本的な違い
生前贈与も相続も財産を譲り渡すことですが、大きく異なるのは財産が移譲されるタイミングです。
生前贈与は、財産の所有者が生きている間に、譲り渡したい時期を自由に選べます。一方、相続は所有者の死亡によって自動的に開始され、法律で定められたルール(法定相続分や遺言)に基づいて財産が移譲されます。
つまり、生前贈与のほうが、より柔軟で計画的な財産の移譲が可能といえるでしょう。
生前贈与を選ぶ理由は?5つのメリット
なぜ多くの人が相続を待たずに生前贈与を選ぶのでしょうか。節税効果はもちろんですが、それ以外にもさまざまなメリットがあります。
1.計画的な相続税対策ができる
生前贈与を計画的に活用することで、将来発生する相続税の負担を軽減できるでしょう。
後述する「暦年贈与」の基礎控除(年間110万円)などを利用して、非課税で少しずつ財産を移譲させれば、相続時の財産総額を減らすことができ、相続税の負担を抑えられます。例えば、毎年110万円ずつ10年間贈与すれば、1,100万円の財産を非課税で移譲できる計算になります。
早めに始めることで、より大きな節税効果が期待できるでしょう。
2.譲り渡したいタイミングや相手を決められる
生前贈与は、財産の所有者が譲り渡したいタイミングを決められます。例えば、譲り渡したい相手が住宅購入を検討していたり、事業開始を検討していたりするなど、まとまった資金を必要としているときに、的確なサポートができる点がメリットです。
また、相続では、財産を譲り渡す相手が基本的に法定相続人に限られますが、生前贈与なら法定相続人以外にも自由に財産を譲り渡せます。例えば、お世話になった息子の妻や、可愛がっている孫にも贈与が可能です。
3.資産価値上昇のリスクを回避できる
相続税は、相続時点での資産価値を基準として計算されます。不動産や有価証券など、将来値上がりが予想される資産を持っている場合、早めに贈与しておけば、相続時に評価額が膨らむのを防げるでしょう。
例えば、今後開発が予定されている地域の土地や、成長企業の株式などは、将来的な価値上昇が見込まれるため、現在の低い評価額で贈与しておくことで、大きな節税効果を得られる可能性があります。
4.遺産分割トラブルの予防になる
遺産相続時に最も避けたいのは、親族間での争いではないでしょうか。生前贈与なら、財産の所有者が存命のうちに手続きを行なえるため、贈与の意図を親族に詳しく説明することができ、相続トラブルのリスクを低減できるでしょう。
例えば、長男に事業用資産を譲り渡したい場合、ほかの親族から「なぜ長男だけが事業用資産を引き継げるのか」といった疑問が発生しても、相続と異なり、財産の所有者本人が親族に意図を説明できる状況にあるため、トラブル拡大を防げます。
円満な家族関係を保つためにも効果的な方法といえるでしょう。
5.不動産などの分けにくい財産の移譲がスムーズに
自宅やアパートなどの不動産は、現金のように簡単に分割することができません。かといって相続時に共有名義にしてしまうと、将来の売却や建て替えの際に全員の同意が必要になり、思うように活用できなくなるリスクもあるでしょう。
生前贈与であれば、不動産の名義を一人に集中させるなどで、財産のスムーズな移譲が可能です。特に賃貸物件などの収益不動産は、管理の一元化により効率的な運営を継続できるメリットもあります。
生前贈与の2大制度「暦年贈与」と「相続時精算課税制度」
生前贈与の税金対策を考えるうえで重要なのが「暦年贈与」と「相続時精算課税制度」の2つの制度です。どちらを選ぶかによって節税効果や手続きが大きく異なります。
コツコツ続ける「暦年贈与」
暦年贈与(暦年課税)は、一般的で利用しやすい贈与の方法といえるでしょう。1年間(1月1日~12月31日)に受け取った財産の合計額に対して贈与税が課税される制度で、受贈者1人当たり110万円の基礎控除が設定されています。
つまり、毎年110万円の(範囲内で)基礎控除を活用すれば、非課税かつ申告不要で確実に財産を移譲でき、長期間にわたって続ければ、大きな節税効果が期待できる方法です。さらに、この基礎控除は「受贈者ごと」に適用されるため、例えば2人に110万円ずつ贈与すれば、それぞれ非課税となります。贈与する相手の人数に制限はないため、受贈者を増やせば節税効果が高まります。
ただし、毎年同じ時期に同じ金額を贈与し続けると、一つの契約(定期贈与)とみなされ、初年度に贈与総額に対して課税されるリスクがあるため注意が必要です。
大きな財産を一度に譲り渡せる「相続時精算課税制度」
相続時精算課税制度は、贈与額2,500万円までは贈与税が課税されず、2,500万円を超えた額には20%の贈与税が課される制度です。60歳以上の父母または祖父母から、18歳以上の子もしくは孫に対して贈与する場合に選択できます。
この制度を利用した生前贈与は相続税の対象となりますが、将来値上がりが予想される財産を生前贈与しておけば、相続時には生前贈与時の低い価額で評価されるため相続税の節税になるでしょう。
さらに、2024年1月1日以降の贈与から、年間110万円までの基礎控除も利用可能になりました。これにより、例えば3,600万円を贈与する場合、毎年110万円の基礎控除に加え、相続時精算課税制度の活用により累計2,500万円の特別控除を利用できるため、贈与を10年間に分割して毎年360万円(基礎控除110万円+特別控除250万円)を贈与する形をとれば、その贈与について贈与税はかかりません。
ただし、この制度は「課税の先送り」であり、2,500万円までの贈与であっても最終的には相続税の対象となる点に注意が必要です。
この制度を利用するには事前の届出が必要で、一度この制度を選択すると、同じ贈与者からの贈与は暦年贈与に戻せないため、慎重な判断が求められるでしょう。
【目的別】贈与税の非課税特例
生前贈与の2大制度以外にも、特定の目的のために利用できる贈与税の非課税特例があります。これらを併用することで、さらに大きな節税効果が期待できるでしょう。
住宅取得等資金の贈与
子や孫など直系卑属が、マイホームを新築・取得・増改築するための資金を贈与される場合、贈与税が一定額まで非課税となります。
受贈者は、贈与を受けた年の1月1日時点で18歳以上であり、かつその年の所得が2,000万円以下であるなどの制限があります。非課税限度額は、省エネなどの基準を満たした住宅は1,000万円、そのほかの住宅は500万円となっています。
適用期間は2024年度の税制改正で2026年12月31日までとされており、住宅取得を検討している家族がいる場合は、積極的に活用したい制度といえるでしょう。
教育資金の一括贈与
30歳未満の子や孫などに対して、教育資金(入学金、授業料、塾の費用など)を一括で贈与する場合、最大1,500万円まで非課税となります。
この特例を利用するには、信託銀行などに教育資金を信託する手続きが必要です。適用期間は2023年度の税制改正で2026年3月31日までとされています。
教育費は高騰傾向にあり、特に私立学校や海外留学を考えている場合などでは、大きなメリットが期待できる制度といえるでしょう。ただし、手続きが複雑な点は注意が必要です。
参考:
財産をもらったとき|国税庁
祖父母などから教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度のあらまし|国税庁
結婚・子育て資金の一括贈与
18歳以上50歳未満の子や孫などに対して、結婚・子育て資金(挙式費用、新居の家賃、不妊治療費、子の医療費など)を一括で贈与する場合、最大1,000万円まで非課税となります。この特例を利用するには、信託銀行などで結婚・子育て資金を信託する手続きが必要です。
適用期間は2025年度の税制改正で2027年3月31日までとされています。結婚や出産、育児にかかる費用は想像以上に高額になることが多く、若い世代にとって大きな経済的負担となるため、家族でサポートできる有効な制度でしょう。
参考:
財産をもらったとき|国税庁
父母などから結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度のあらまし|国税庁
夫婦間の居住用不動産の贈与(おしどり贈与)
婚姻期間が20年以上の夫婦間で、居住用の不動産そのもの、またはそれを取得するための資金を贈与する場合の特例です。暦年贈与の基礎控除110万円とは別に、最大2,000万円まで配偶者控除が受けられます。長い婚姻関係が条件となるため「おしどり贈与」とも呼ばれています。
例えば、夫名義の自宅を妻に贈与する場合などに活用でき、将来の相続時における配偶者の居住権確保や相続税対策として効果的でしょう。ただし、不動産取得税や登録免許税などの費用も考慮して検討することが大切です。
参考:No.4452 夫婦の間で居住用の不動産を贈与したときの配偶者控除|国税庁
生前贈与の手続きと流れ

実際に生前贈与を行なう際の大まかな手続きと流れを解説します。計画的に進めることで自分の希望に沿った贈与が実現できるでしょう。
1.財産を確認する
まず財産を確認し、相続税が発生するかどうか、相続税がいくらになるかを確認しましょう。
財産総額が、基礎控除額の「3,000万円+600万円×法定相続人の数」未満であれば、相続税は発生しません。例えば、配偶者と子ども2人が相続人の場合、基礎控除額は4,800万円となり、財産総額がこれを下回れば相続税はかからないことになります。
現金・預金だけでなく、不動産、有価証券、生命保険、退職金なども含めて正確に把握することが重要です。
2.贈与計画を立てる
次に「誰に、何を、どのタイミングで贈与するのか」を明確にし、贈与税や将来の相続税への影響をシミュレーションしつつ、利用する制度を決めましょう。
暦年贈与と相続時精算課税制度のどちらを利用するか、各種特例制度を活用するかなど、最適な方法を選択します。
贈与者の年齢や健康状態、受贈者の状況なども考慮し、家族全体のライフプランに合わせた計画を策定することが大切です。
3.贈与契約書を作成する
受贈者の合意をとり、口約束ではなく、必ず書面で「贈与契約書」を作成しましょう。これは、贈与の事実を証明したり、ほかの相続人とのトラブルを防いだりするために必要です。
贈与契約書には、契約締結日のほか、贈与者・受贈者の氏名、贈与財産の内容、贈与の時期、条件などを明記します。特に家族間の贈与であっても、税務調査や相続時に贈与の事実を客観的に証明できる重要な書類となるため、必ず作成しておくことをおすすめします。
4.財産の移譲を実行する
贈与契約書を作成したら、実際に財産を移譲します。
現金・預金は受贈者名義の口座に振り込むなど、贈与の記録が客観的に残る方法で行ないましょう。手渡しではなく銀行振込を利用することで、贈与の事実と日時が明確に記録されます。
不動産は、法務局で所有権移転登記の手続きを行ないます。登記手続きには登録免許税や司法書士報酬などの費用がかかりますが、確実な所有権移転のために必要な手続きです。
5.贈与税を申告・納付する
贈与税の申告・納付を行なうのは、贈与者ではなく受贈者です。暦年贈与で年間の贈与額が基礎控除額(110万円)を超える場合や、相続時精算課税制度を選択する初年度の場合、各種特例を利用する場合は、贈与税の申告と納付が必要となります。
申告期間は贈与を受けた年の翌年3月15日までです。申告が必要にもかかわらず期限内に申告しなかった場合、加算税や延滞税などのペナルティが課される可能性があるため注意しましょう。
生前贈与の注意点
生前贈与は多くのメリットがありますが、無計画に進めるとかえって損をしてしまう可能性もあります。生前贈与を実行する前に、以下のデメリットと注意点を必ず確認しておきましょう。
高額な贈与税がかかる可能性がある
生前贈与には贈与税がかかる場合があり、贈与税は相続税に比べて税率が高く設定されています。
例えば、1000万円の贈与を行なった場合、基礎控除110万円を差し引いた890万円に対して贈与税が課され、一般税率では231万円、特例税率では177万円もの贈与税が発生してしまいます。これを相続で取得した場合には、同じ1,000万円に対して相続税率は10%(課税価格が1,000万円以下の場合)となり、納付額は100万円程度で済みます。このように、贈与は相続に比べて負担が大きくなる傾向があります。
そのため、非課税制度などを理解せずに一度に多額の財産を贈与すると、受贈者が想定外の高額な税金を負担することになるでしょう。
贈与を検討する際は、事前に贈与税額をシミュレーションし、相続税額と比較検討することが重要です。また、各種特例制度を活用することで税負担を軽減できる場合もあるため、専門家に相談することをおすすめします。
関連記事:贈与税計算のやり方は?基礎控除から税率適用まで具体例で詳しく解説
相続税の「生前贈与加算」に該当すると課税対象になる
生前贈与加算とは、亡くなる前の一定期間内に行なわれた贈与は無かったものとみなされ、相続財産に持ち戻して相続税の課税対象とするという制度です。この期間が、2024年1月1日以降、従来の「死亡前3年」から「死亡前7年」に延長されました。
生前贈与で財産を減らしたつもりでも、贈与者が亡くなる直前7年以内に行なわれた贈与は、相続税対策としての効果がなくなってしまうため注意が必要です。ただし、死亡前4年から7年以内の贈与については、総額100万円まで相続財産に加算されない措置があります。
この制度を理解せずに贈与を行なうと、期待していた節税効果が得られないかもしれません。
ほかの相続人の「遺留分」の侵害に注意する
遺留分とは、法定相続人に最低限保障されている遺産の取り分のことです。特定の相続人や第三者に多額の生前贈与をした結果、ほかの相続人の遺留分を侵害してしまうと、トラブルに見舞われるおそれがあるでしょう。
例えば、長男にだけ多額の生前贈与を行なった場合、ほかの兄弟姉妹から遺留分侵害額請求を受けるリスクがあります。生前贈与する額が、遺留分を侵害しない範囲内であるか注意が必要です。
円満な相続を実現するためには、贈与を行なう前に家族全員で話し合い、理解を得ることが大切です。また、遺言書の作成も併せて検討することで、トラブルを未然に防ぐことができるでしょう。
関連記事:遺留分とは?仕組みや計算方法、トラブルの防止策まで詳しく解説
一度成立した生前贈与は取り消せない
一度成立した生前贈与は、基本的に一方的な都合で取り消すことはできません。
生前贈与は、贈与者と受贈者の合意によって成立する契約行為であり、法的拘束力を持ちます。贈与後に受贈者との関係が悪化する可能性もあるため、贈与する金額や時期は慎重に判断する必要があるでしょう。
また、贈与者の老後資金が不足してしまった場合でも、原則として贈与した財産を取り戻すことはできません。そのため、生前贈与を行なう際は、自身の将来設計も十分に考慮し、余裕のある範囲内で実行することが重要です。
贈与契約書を作成する際も、条件や内容を明確にし、後々のトラブルを避けるよう配慮しましょう。
まとめ
生前贈与は、生きているうちに財産を譲り渡すことで、相続税対策や財産の円滑な移譲を実現できる有効な手段といえるでしょう。
暦年贈与や相続時精算課税制度をはじめ、住宅取得等資金の贈与や教育資金の一括贈与などの特例制度を活用することで、大きな節税効果が期待できます。ただし、贈与税の負担や生前贈与加算、遺留分の問題など注意すべき点も多く、計画的な実行が重要でしょう。
財産の確認から贈与計画の策定、贈与契約書の作成、財産の移譲、税務申告まで適切な手続きを踏むことで、自身の希望に沿った生前贈与が実現できます。
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本記事は、執筆時点(2025年9月31日)における税制・法律等の情報をもとに作成しています。税制や関連する法律・制度は、今後の法改正や運用の変更などにより、内容が変わる可能性があります。
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の方の状況に応じたアドバイスを行うものではありません。
実際の手続きや判断にあたっては、必ず最新の情報をご自身でご確認いただくとともに、必要に応じて税理士・弁護士などの専門家にご相談ください。
■監修者

氏名:太田 照明
保有資格:損害保険トータルプランナー、生命保険協会認定FP、CFP、1級FP技能士
主なキャリア:大学を卒業後、自動車と外食産業の営業を経験し、その後保険業界へ。