不動産登記における建物の登記事項証明書とは?種類・取得方法・必要書類などを解説

2024年07月09日

登記記録に記載されている事項の全部または一部を証明したものを「登記事項証明書」と呼びます。登記事項証明書は法務局で誰でも取得でき、証明書の内容を確認することで、不動産にかかる権利関係の確認が可能です。

この記事では、不動産登記における建物の登記事項証明書について、種類や取得方法、取得にあたって必要な書類を解説します。

不動産登記とは?

不動産登記とは、所有者の住所や氏名、該当の土地や建物の所在や面積などを登記簿に記載し、一般に公開することで権利関係の状況を誰でもわかるようにするものです。登記事項証明書や登記簿謄本を取得したり、登記情報提供サービスを利用したりすることで、登記の内容を確認できます。登記事項を確認すれば不動産の権利関係を明らかにできます。

不動産登記が必要な場面としては、新たに不動産を取得した場合や、登記内容を変更した場合です。原則として、不動産登記は登記によって利益を受け取る登記権利者と、登記によって権利を喪失する登記義務者が共同して行ないます。

また、不動産の権利に関する登記は司法書士が、不動産の表示に関する登記は土地家屋調査士が代理で行なえるため、登記手続きに不安がある場合は手続きを委任するとよいでしょう。

登記事項証明書とは?

登記事項証明書の概要を解説します。

権利関係を証明する「登記事項証明書」

登記事項証明書は、登記記録に記載されている情報の全部もしくは一部を証明した書面です。手数料を払えば法務局で誰でも取得できます。

なお、登記には、不動産に関するもの以外にも、会社や法人、成年後見、債権譲渡・動産譲渡、船舶に関するものもあります。

登記事項証明書と登記簿謄本の違い

登記事項証明書と混同されやすい書類に、登記簿謄本があります。

現在、登記記録は磁気ディスクに登録され、コンピュータシステムにより登記事務が行なわれていますが、コンピュータシステムで取り扱えない登記記録については、紙の登記簿を使用しています。

コンピュータシステムを利用して登記簿の一部または全部を証明したものが、登記事項証明書です。また、コンピュータシステムで取り扱えない紙の登記簿の全部を複写して証明したものを登記簿謄本、一部を複写して証明したものを登記簿抄本と呼びます。

登記事項証明書と登記簿謄本・登記簿抄本は、いずれも登記されている事項を公示するものです。それぞれ作成方法は異なりますが、証明書として同様の効力を持っています。

不動産登記における登記事項証明書が必要になる場面

登記事項証明書は以下のような場面で必要になります。

登記事項証明書が必要になる場面

登記事項証明書の内容と見方

登記記録は1筆の土地または1個の建物ごとに、表題部と権利部に分けて作成されています。法務省が公表している「登記事項証明書(不動産登記)の見本(建物)」を参考に、登記事項証明書の内容と見方を解説します。


引用:登記事項証明書(不動産登記)の見本(建物)|法務省

表題部

表題部には土地と建物についての情報が記載されます。表題部に示された登記を「表示に関する登記」とも呼びます。

表題部の内容
●土地:所在、地積(土地の面積)、地番、地目(土地の現況)など
●建物:所在、地番、床面積、家屋番号、構造、種類など

引用:登記事項証明書(不動産登記)の見本(建物)|法務省

見本の登記事項証明書の場合、不動産は木造かわらぶきの2階建てで、令和1年5月1日に新築され、附属建物として木造かわらぶき平屋建ての物置が設置されていることがわかります。また、不動産の所有者は法務五郎さんであり、特別区に住んでいることもわかります。

権利部(甲区・乙区)

権利部は所有権に関する情報が記録された甲区と、所有権以外の権利に関する情報が記録された乙区に分かれています。

権利部(甲区・乙区)の内容
●甲区:所有者に関する事項(住所、氏名、取得原因年月日、所有権移転登記、差押え、所有権に関する仮登記、仮処分など)
●乙区:所有権以外の権利に関する事項(抵当権、地上権、地役権など)

なお、マンションなどの区分建物について敷地権が記録されるときは、敷地権の権利関係も建物の権利部に記されます。

引用:登記事項証明書(不動産登記)の見本(建物)|法務省

見本の登記事項証明書の場合、不動産の所有権は法務五郎さんにあります。また、不動産には住宅ローンを理由として抵当権が設定されており、抵当権者は株式会社南北銀行であることがわかります。

共同担保目録

共同担保目録は、1つの債権に対して複数の不動産を担保として設定している際に記載されます。記号や番号、担保の目的である権利などが記載されており、見本の登記事項証明書では、土地と建物が担保として設定されていることがわかります。

引用:登記事項証明書(不動産登記)の見本(建物)|法務省

登記事項証明書を取得する際に必要なもの

手数料を払えば、誰でも登記事項証明書を取得可能です。手数料は取得方法によって異なり、オンライン請求して法務局の窓口で書類を受け取る場合が最も安くなっています。

登記事項証明書の取得に必要な手数料

また、証明書を取得する際は、証明書の対象となる不動産の地番・家屋番号が必要です。地番や家屋番号は、登記権利証や固定資産税の納税通知書に記載されています。証明書を請求する前に調べておきましょう。

登記事項証明書を取得する3つの方法

登記事項証明書の取得方法は、「法務局(登記所)の窓口で取得する」「最寄りの法務局(登記所)から郵送で取得する」「オンラインで取得する」の3つがあります。それぞれの方法について手続き内容を簡単に見ていきましょう。

なお、証明書が不要で登記事項を確認したいだけなら民事法務協会の「登記情報提供サービス」を利用すれば、簡単に登記事項をオンライン上で確認できるので、利用してみてください。

法務局(登記所)の窓口で取得する

請求対象の土地や建物を管轄する法務局(管轄登記所)または最寄りの法務局に、必要項目を記載した請求書を提出して書類を取得する方法です。書類は即日発行されます。可能な限り早く証明書が必要な場合や、法務局が近隣にある方には、窓口での取得がおすすめです。

法務局は平日8時30分~17時15分まで利用でき、土日祝日などの休日は利用できません。

交付請求書の様式は以下のとおりです。請求書に請求人の住所や氏名、請求したい土地や建物の地番、家屋番号などを記載して提出しましょう。添付する収入印紙は法務局で入手できます。


引用:登記事項証明書 登記簿謄本・抄本 交付請求書|法務局

最寄りの法務局(登記所)へ郵送で取得する

法務局(登記所)へ郵送で書類を請求する方法です。請求書を法務局のサイトでダウンロード、または法務局で入手し、不動産を管轄、または最寄りの法務局(登記所)に郵送して申請し、書類を取得しましょう。

郵送する際は、返信用の切手と返送先の宛先を記載した封筒またはメモを同封しなければなりません。また、収入印紙を所定の場所に必ず貼付しましょう。

郵送で取得する場合、書類が返送されるまで3日~1週間程度かかります。時間に余裕をもって書類を請求しましょう。

オンラインで取得する

インターネットを利用してオンラインで交付請求する方法で、平日の午前8時30分から午後9時まで請求可能です。請求した証明書は自宅や会社に郵送、または最寄りの登記所や法務局証明サービスセンターで受け取れます。

オンライン請求は窓口での交付請求や郵送での交付請求より手数料が安く、インターネットバンキングで電子納付できるため収入印紙を用意する必要もありません。自宅や会社から簡単に手続きできるため、インターネット環境がある方はオンラインでの請求がおすすめです。

参考:オンラインによる登記事項証明書等の交付請求(不動産登記関係)について|法務省
登記・供託オンライン請求システム|法務省

不動産登記における登記事項証明書の種類

登記事項証明書は記載される内容によって以下の5種類に分けられます。それぞれの違いを知り、必要な書類を入手しましょう。

不動産登記における登記事項証明書の種類

まとめ

登記事項証明書を見れば、不動産の権利関係を明らかにできます。最寄りの法務局で請求するか、オンラインで請求することで誰でも証明書を取得可能です。

登記事項証明書は不動産の情報を調べたいときや、住宅ローンを利用するとき、不動産を売却するときなどに必要です。証明書は内容によっていくつか種類があるため、目的に合った種類の証明書を選択しましょう。

■監修者

名前:齋藤 彩(さいとう あや)
所有資格:CFP(Certified Financial Planner)、1級FP技能士、薬剤師免許

おもなキャリア:
急性期総合病院において薬剤師として勤める中、がん患者さんから「治療費が高くてこれ以上治療を継続できない」と相談を受けたことを機にお金の勉強を開始。ひとりの人を健康とお金の両面からサポートすることを目標にファイナンシャルプランナーとなることを決意。現在は個人の相談業務・執筆活動を行っている。