遺留分とは?仕組みや計算方法、トラブルの防止策まで詳しく解説
2026年01月16日
「遺言書で相続分がゼロになってしまった」「不公平な相続内容で納得できない」など、相続に関する悩みを抱えていませんか?
このような場合でも、法定相続人には「遺留分」という最低限の相続分を請求する権利があります。
本記事では、遺留分の基本的な仕組みから具体的な計算方法、請求の流れまで詳しく解説します。また、遺留分が問題となるケースや、事前にトラブルを防ぐ方法についても紹介するため、相続予定がある方や、遺言書の作成を検討している方にとって役立つ内容となっています。
遺留分を正しく理解することで、相続時の不安を解消し、適切な対策を講じることができるでしょう。
相続時に知っておくべき「遺留分」とは

遺留分とは、一定の相続人に最低限保障されている相続の取り分のことです。遺言書の内容に関係なく、配偶者や子どもなどの相続人が主張できる権利として、民法で定められています。ここでは、遺留分の概要について見ていきましょう。
遺留分は最低限保障される相続分
遺留分制度は、相続人の最低限の生活基盤や公平性を確保することを目的として、法律で定められた仕組みです。
例えば、遺言書に「全財産を長男に相続させる」と記載されていても、配偶者やほかの子どもは、遺留分として最低限の財産を受け取る権利があります。遺留分は遺言の内容によって奪われることのない権利のため、不公平な遺言があった場合でも、相続人の生活を守ることができるのです。
ただし、あくまで権利であるため、侵害されても自ら請求しなければ遺留分を受け取ることはできません。
遺留分を請求できる相続人
遺留分を請求できる相続人には制限があり、すべての相続人が対象となるわけではありません。対象となるのは、被相続人(亡くなった方)の配偶者、直系卑属(子どもや孫)、直系尊属(親や祖父母)に限られます。
注意すべきなのは、被相続人の兄弟姉妹には遺留分が認められていない点です。また、直系尊属が遺留分を請求できるのは、被相続人に子どもや孫がいない場合のみです。
なお、被相続人の子どもが先に亡くなっている場合は、代襲相続により孫が遺留分を受け取る権利を持ちます。
遺留分の対象になる財産
遺留分の対象となるのは、下記の4種類の財産です。
1.相続開始時の財産
2.生前贈与した財産の一部
3.債務
4.遺産に対して多すぎる生命保険金
不動産については、自宅はもちろん賃貸物件や投資用物件も対象です。また、被相続人が生前に贈与した財産や、遺言書で第三者に遺贈する財産も遺留分の計算に含まれます。
一方で、借金などのマイナスの財産がある場合は、プラスの財産から差し引いて遺留分を算出します。
このように、遺留分は単純に相続開始時の財産だけでなく、生前の贈与なども含めて総合的に判断されます。
相続人ごとの遺留分の割合と計算例
遺留分の具体的な金額を求める際は、「総体的遺留分」と「個別的遺留分」という2つのステップで算出されます。
総体的遺留分とは、相続財産全体に対して保障される最低限の割合です。相続人が直系尊属のみの場合は相続財産の1/3、それ以外の場合は相続財産の1/2となります。
次に、個別的遺留分は、各相続人が実際に請求できる具体的な割合で、総体的遺留分の割合に、それぞれの法定相続分をかけて計算します。
関連記事:法定相続人とは?範囲や法定相続分の割合などについて解説
以下で前提条件を整理し、2つの例を使って計算してみましょう。
・相続財産額:3,000万円
・相続人の種類:配偶者、子ども1人
・総体的遺留分(全体):相続財産の1/2 → 1,500万円
・法定相続分:配偶者 1/2、子ども 1/2
計算手順:
1.配偶者の個別的遺留分=総体的遺留分1,500万円 × 法定相続分1/2=750万円
2.子どもの個別的遺留分=総体的遺留分1,500万円 × 法定相続分1/2=750万円
→ 配偶者:750万円、子ども:750万円
・相続財産額:3,000万円
・相続人の種類:子ども3人
・総体的遺留分(全体):相続財産の1/2 → 1,500万円
・法定相続分:子ども3人で均等=各1/3
計算手順:
1.各子どもの個別的遺留分=総体的遺留分1,500万円 × 法定相続分1/3=500万円
→ 子ども3人:それぞれ500万円
このように、遺留分は相続人の組み合わせによって金額が異なります 。
遺留分が問題になるのはどのようなとき?
遺留分は、遺言書の内容や生前贈与によって、法定相続人の相続分が著しく侵害された場合に問題となります。ここでは、具体的なケースを見ていきましょう。
遺言や贈与で相続分がゼロになった場合
遺言書で「長男にすべての財産を相続させる」「愛人に全財産を遺贈する」といった内容が記載されている場合、ほかの法定相続人の相続分がゼロになってしまいます。
このような状況では、遺留分を侵害された相続人と、多くの財産を受け取る相続人との間で意見がまとまらず、トラブルに発展することが少なくありません。
たとえ法的に有効な遺言書であっても、遺留分は遺言の内容によって奪われることのない権利のため、遺留分を侵害された相続人は、遺留分侵害額請求を行なうことができます。
相続財産が不動産中心の場合
相続財産の大部分が不動産で占められており、現金や預金が少ない場合も遺留分が問題となりやすいです。
不動産は物理的に分割することが困難なため、遺留分の清算は原則として金銭で行なわれます。しかし、遺産に現金が少なく、不動産を相続した人に遺留分を支払うだけの資金がない場合、どのように清算するかでトラブルになりがちです。
このような状況では、遺留分の精算を行なうために不動産の売却や金融機関からの借り入れなど、具体的な解決策を検討してもらう必要があります。
遺留分を侵害されたら?

遺留分が侵害された場合、法的な救済手段が用意されています。ただし、自動的に遺留分がもらえるわけではなく、適切な手続きが必要です。
遺留分侵害額請求が可能
遺留分を侵害された相続人は、「遺留分侵害額請求」によって、侵害された分の金銭の支払いを求めることができます。
この制度は、遺留分を多く受け取った相続人や、遺贈を受けた人に対して行使する権利です。ただし、あくまでも権利であるため、侵害されていても自ら請求の手続きをしなければ遺留分を受け取ることはできません。
なお、2019年の民法改正前は「遺留分減殺請求」と呼ばれており、侵害された遺産そのものを取り戻す制度でした。現在は金銭で清算する制度に変更されたため、不動産などの共有状態を避けることができます。
遺留分の請求期限・時効に注意
遺留分侵害額請求権には時効があるため、いつでも請求できるわけではありません。
請求期限は「相続の開始および遺留分を侵害する贈与・遺贈があったことを知ったときから1年間」と定められています。また、相続の開始や遺留分の侵害を知らなかった場合でも、相続開始から10年が経過すると請求権は消滅します。
上記のうち、「相続開始から10年」については除斥期間と呼ばれ、事情に関わらず機械的に進行するため注意が必要です。遺留分が侵害されていると知った場合は、速やかに専門家に相談し、適切な手続きを進めましょう。
遺留分を請求するときの流れ
遺留分侵害額請求は段階的に進められます。まずは当事者間での話し合いから始まり、解決しない場合は法的手続きに移行していくのが一般的な流れです。
1.相続人同士での話し合い
遺留分侵害額請求の第一歩は、相続人同士での話し合いです。
遺留分を侵害している相続人に対して、侵害額の支払いを求める協議を行ないます。この段階で合意に至れば、支払い金額や期日などを明確にした合意書を作成しておきましょう。合意書があることで、後々のトラブルを防ぐことができます。
話し合いでは、遺留分の計算根拠を明確に示し、冷静かつ論理的に主張することが重要です。当事者同士の協議で解決できれば、時間や費用を大幅に節約できるメリットがあります。
2.内容証明郵便を使った請求
相続人同士の話し合いで合意に至らない場合は、内容証明郵便を使って遺留分侵害額請求の意思表示を行ないます。
口頭やメール、普通の手紙でも構いませんが、内容証明郵便を利用することで送付日や内容を公的に証明可能です。これにより、時効になる前に請求を行なった事実が証明でき、のちに「請求されていない」と言われることを防げます。
内容証明郵便には、請求者と相手方の氏名と住所、遺留分を侵害している遺贈・贈与の内容、金銭の支払いを求める旨、請求日を明記することが大切です。
3.家庭裁判所での調停申し立て
内容証明郵便による請求でも合意が得られない場合は、家庭裁判所に遺留分侵害額請求調停を申し立てます。調停では、第三者である調停委員が当事者の間に入り、話し合いによる解決を目指します。
裁判所を介した手続きですが、あくまでも話し合いによる合意形成が目的です。調停が成立すれば調停調書が作成されます。これは確定判決と同じ効力を持つため、強制執行も可能です。
調停は親族間の紛争解決に適した手続きといえるでしょう。
4.遺留分侵害額請求の訴訟
調停でも合意が成立しない場合は、最終手段として訴訟を提起します。
請求する遺留分侵害額が140万円を超える場合は地方裁判所、140万円以下の場合は簡易裁判所が管轄です。
訴訟では、裁判所が証拠に基づいて遺留分の存在や侵害額を判断し、判決によって結論を示します。訴訟の準備や法廷での主張には専門的な知識が必要なため、弁護士に依頼するのが一般的です。
判決が確定すれば、強制執行により相手方の財産を差し押さえることも可能になります。
遺留分トラブルを事前に防ぐ2つの方法
遺留分に関するトラブルは、事前の対策により避けることが可能です。被相続人が生前に適切な準備をしておくことで、相続人同士の争いを防ぎ、円滑な相続を実現できます。
生前贈与や遺言書作成時に遺留分を考慮する
遺言書の作成や生前贈与を行なう際は、遺留分を侵害しない内容にすることが重要です。
遺留分は、遺言書の内容にかかわらず相続人の権利として認められているため、これを無視した遺言はのちにトラブルの原因となります。例えば、特定の子どもにすべての財産を相続させたい場合でも、ほかの相続人の遺留分に相当する財産は確保しておく必要があります。
また、生前に法定相続人全員に対して相続の方針を説明し、理解を得ておくことも大切です。事前の話し合いにより、相続人の納得を得られれば、遺留分の問題を未然に防ぐことができます。
専門家に相談する
遺留分の計算は複雑で、例えば生前贈与した財産の場合、贈与の時期や内容によって対象となる財産の範囲が変わります。また、事業承継の場合には「遺留分に関する民法の特例」が適用され、事業用資産の贈与が遺留分の計算から除外されるケースもあります。
このような特例の適用には事前の手続きが求められ、法律の専門知識が必要です。税理士や弁護士などの専門家に相談することで、個々の状況に応じた最適な相続対策ができるでしょう。専門家のアドバイスを受けながら、遺留分を考慮した遺言書の作成や生前贈与の実施を検討することが大切です。
まとめ
遺留分は、被相続人の配偶者や子ども、親などに保障された最低限の相続分で、遺言書の内容にかかわらず請求する権利があります。ただし、被相続人の兄弟姉妹には認められていません。
遺留分が侵害された場合は、遺留分侵害額請求により金銭での清算を求めることができますが、相続開始および遺留分が侵害された事実を知った日から1年、または相続開始から10年経つと、請求権が消滅するため注意しましょう。
トラブルを避けるためには、遺言書作成時に遺留分を考慮した内容にすることや、専門家への相談が重要です。
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本記事は、執筆時点(2025年9月31日)における税制・法律等の情報をもとに作成しています。税制や関連する法律・制度は、今後の法改正や運用の変更などにより、内容が変わる可能性があります。
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の方の状況に応じたアドバイスを行うものではありません。
実際の手続きや判断にあたっては、必ず最新の情報をご自身でご確認いただくとともに、必要に応じて税理士・弁護士などの専門家にご相談ください。
■監修者

氏名:太田 照明
保有資格:損害保険トータルプランナー、生命保険協会認定FP、CFP、1級FP技能士
主なキャリア:大学を卒業後、自動車と外食産業の営業を経験し、その後保険業界へ。