鉄骨鉄筋コンクリート造のメリットは?耐用年数や鉄骨造との違い

2024年07月30日

マンションを選んでいて、鉄骨鉄筋コンクリート造がどのような建築構造なのか、気になっている方もいるでしょう。

鉄骨鉄筋コンクリート造は、鉄骨やコンクリートといった頑丈な資材を使った強度の高い建築構造です。その他の建築構造の特徴と比較することで、自分が住むのに適したマンションを選ぶ際の参考となるでしょう。

この記事では、鉄骨鉄筋コンクリート造の定義やその他の建築構造との違い、メリット・デメリットなどについて解説します。

鉄骨鉄筋コンクリート造の定義とは?

鉄骨鉄筋コンクリート造とは、鉄骨と鉄筋コンクリートとの組み合わせによって形作られる建築構造のことです。英語表記にあたる「Steel Reinforced Concrete」を略して、SRC造とも呼ばれます。

鉄骨鉄筋コンクリート造では、H形鋼などの頑強な鉄骨の柱の周りに鉄筋を組み、さらにコンクリートを施工します。鉄骨が加わっている分、通常の鉄筋コンクリート(RC)造よりも強度が高いため、タワーマンションや高層ビルといった大規模な建物に多く使われます。

鉄骨鉄筋コンクリート造とほかの建築構造の違い

鉄骨鉄筋コンクリート造の特徴をよく理解するには、ほかの建築構造との比較が役に立ちます。建築構造はおもに4種類(S造/RC造/SRC造/W造)に分けられるため、鉄骨鉄筋コンクリート造とその他3種類の建築構造の違いを押さえておくとよいでしょう。

ここでは、鉄骨鉄筋コンクリート造とほかの建築構造の違いについて解説します。

鉄骨造(S造)との違い

鉄骨造とは、柱や梁などの骨組に鉄骨を使用した構造のことです。鉄骨の厚さが6mm未満の軽量鉄骨造と、6mm以上の重量鉄骨造の2種類に分けられます。軽量鉄骨造は、小さな店舗や通常の住宅に、重量鉄骨造はビルなどの大きな建造物に採用されるのが一般的です。

鉄骨造の特徴には、鉄骨鉄筋コンクリート造に比べて低コストかつ工期が短い点が挙げられます。また、設計の自由度が高く、窓を大きくするなど開口部を広めに取れるメリットがありますが、コンクリートを採用している鉄骨鉄筋コンクリート造に耐火性の面で劣るのはデメリットです。

鉄筋コンクリート造(RC造)との違い

鉄筋コンクリート造は、鉄筋の周りに作った枠へコンクリートを流して固める建築構造です。鉄筋コンクリート造では、鉄筋とコンクリートがそれぞれの弱点をカバーし合うことで高い耐久性を実現しています。

鉄筋は引く力に強いものの押しつぶす力に弱く、コンクリートは引く力に弱いものの押しつぶす力には強い、という性質があります。これらを併用することで、耐久性を高めつつ、鉄筋の耐火性の低さをコンクリートでカバーできています。

鉄筋コンクリート造のメリットは、鉄骨がない分、鉄骨鉄筋コンクリート造よりも設計の自由度が高いことです。ただし、強度確保の目的で鉄骨鉄筋コンクリート造よりも太い柱を採用するため、建物自体の重量が増します。その重量を支えるには頑丈な地盤が求められ、場合によっては地盤改良工事を要するなど、施工が難しくなる点がデメリットです。

木造(W造)との違い

木材を柱や梁といった重要な構造部に使う木造は、日本でも古くから採用されている伝統的な建物構造です。低層アパートや一般住宅に多く用いられており、自然の暖かみが感じられる構造として広く受け入れられています。ツーバイフォー工法や木造軸組工法など、同じ木造でも工法によって強度や間取りが変わります。

鉄骨鉄筋コンクリート造と比べたときの木造のメリットは、通気性や吸湿性に優れていること、低コストかつ短期間で完成することです。ただし、ほかの建築構造よりも火事や地震に弱く、耐久性の面でも劣っています。

鉄骨鉄筋コンクリート造の性能的な特徴

鉄骨鉄筋コンクリート造の大きな特徴は、鉄骨+鉄筋+コンクリートの構造で実現する強度の高さです。ここでは、耐用年数や地震・火事への耐性など、その他の性能について解説します。

耐用年数

耐用年数とは、減価償却資産に適用される、法令で定められた使用期間のことです。鉄骨鉄筋コンクリート造の耐用年数は、住宅用の場合だと47年です。

鉄筋コンクリート造も同じ年数で、住宅用の鉄骨造だと重量鉄骨造が34年、軽量鉄骨造が19年もしくは27年と設定されています。木造住宅は22年と、鉄骨鉄筋コンクリート造の半分以下になっています。

耐用年数はあくまでも目安であり、必ず定められた期間の使用に耐えるとは限りませんが、長く住むには鉄骨鉄筋コンクリート造のほうが安心だといえるでしょう。

耐火性

鉄骨や鉄筋は熱に弱い特性がありますが、鉄骨鉄筋コンクリート造は熱に強いコンクリートが鉄骨や鉄筋を覆っています。そのため、上で紹介した4つの建築構造のなかでは、最も耐火性が高い構造だといえるでしょう。

火事などに耐える安全性を求めるなら、鉄骨鉄筋コンクリート造のように耐火構造を採用しているものを選ぶのがおすすめです。

耐震性

鉄筋・鉄骨・コンクリートの3種類を構造に取り入れることで、地震の揺れによる変形にも強いのが鉄骨鉄筋コンクリート造の特徴です。耐火性と同様に、耐震性についても4つの建築構造のなかでは、鉄骨鉄筋コンクリート造が最も優れているといえるでしょう。

現行の建築基準法では、構造に関係なく震度6~7に耐える性能が必要だと定めています。なお、1981年5月以前に建てられた建物は旧耐震基準に則っているため、注意が必要です。

防音性

コンクリートを流して固める鉄骨鉄筋コンクリート造は隙間ができにくく、防音性能の高さでも優れています。

ただし、鉄骨鉄筋コンクリート造の防音性は、壁の厚さや使用する材質によって変わります。例えば、軽量化のために石膏ボードやケイ酸カルシウム板を取り入れている場合、コンクリートのみを使った場合よりも遮音性が低くなるでしょう。

鉄骨鉄筋コンクリート造の3つのデメリット

ほかの建築構造に比べて優れた性能を備えている鉄骨鉄筋コンクリート造ですが、デメリットがないわけではありません。ここからは、鉄骨鉄筋コンクリート造の3つのデメリットを紹介します。

建築費用が割高なため価格も高くなる

鉄骨鉄筋コンクリート造の大きなデメリットといえるのが、さまざまな面で発生するコストです。鉄骨鉄筋コンクリート造では、鉄骨と鉄筋、コンクリートはもちろんのこと、建築に際して多くの建材を要するため、材料費のコストがかかります。

また、鉄骨鉄筋コンクリート造はその複雑な構造上、建築工程がほかの建築構造に比べて多く、建築にあたっては専門知識も必要です。必然的に工事期間が長くなるので人件費が高くつき、建築費用全体のコストが増加します。建築自体にコストがかかるため、建物の価格や賃貸物件の家賃も高くなるでしょう。

さらに、強度の高い鉄骨鉄筋コンクリート造は崩すのが難しく、解体にも相当の費用がかかります。建て替えやリフォームで予想外の出費につながる場合もあるため、注意が必要です。

鉄骨鉄筋コンクリート造のマンションは少ない

鉄骨鉄筋コンクリート造は耐火性や耐震性などに優れており、長く住みたい場合におすすめの建築構造ですが、そもそも物件数が少ないというデメリットもあります。

先述のとおり、鉄骨鉄筋コンクリート造の家を建てるには大きなコストがかかるため、取り扱う業者は多くありません。また、価格が高めで、それなりの予算設定が必要です。

このような理由から、鉄骨鉄筋コンクリート造に限定しての物件探しは難航する可能性があるでしょう。

間取りなど設計の自由度が低い

鉄骨鉄筋コンクリート造は構造が複雑であり、設計の自由度が低いこともデメリットの一つです。鉄骨と鉄筋コンクリートの組み合わせによる高い強度の代償として、自由な設計がしにくくなっています。

鉄骨鉄筋コンクリート造では間取りの高さや角度を自由に調整できないため、デザイン面の追求が難しいでしょう。住宅のデザイン性にこだわりたい方には、ほかの建築構造のほうが適していると考えられます。

鉄骨鉄筋コンクリート造の3つのメリット

先述のとおり、鉄骨鉄筋コンクリート造は性能に優れた建築構造であり、選ぶことで得られるメリットも少なくありません。ここでは、鉄骨鉄筋コンクリート造のメリットを3つ紹介します。

安全性が高い家に住むことができる

鉄骨鉄筋コンクリート造は耐火性や耐震性に優れ、法定の耐用年数もほかの建築構造に比べて長く設定されています。火事や地震が起きても被害の広がりにくい構造であり、高い安全性が確保された環境で暮らせるのは大きなメリットだといえるでしょう。

また、重量の大きなコンクリートで覆われている鉄骨鉄筋コンクリート造は防音性にも優れているため、騒音などの問題が起こりにくいのも特徴です。

夜にぐっすり眠りたい、小さな子どもに気兼ねなく遊んでほしいといった希望がある方は、鉄骨鉄筋コンクリート造の家を検討するとよいでしょう。

高気密・高断熱で光熱費を削減できる

コンクリートの使用による隙間の少なさは、防音性のみならず気密性や断熱性の高さにもつながります。

気密性や断熱性が高い家は冷暖房などの効率が良くなり、少ないコストで快適な温度を維持しやすくなります。鉄骨鉄筋コンクリート造を検討する際は、家自体の価格が高くても、光熱費の安さが長期的な節約につながることを考慮に入れておきましょう。

広い部屋を作ることができる

鉄骨鉄筋コンクリート造は設計の自由度が低い一方で、構造の強度が高いという特徴があります。小さな柱や梁を採用し、さらに柱同士の間隔も長く取れるため、広い部屋を作ることが可能です。

建築構造に鉄骨鉄筋コンクリート造を採用することで、20畳以上の大リビングなどが建築可能になります。広々とした部屋で暮らしたい方、家具を自由に置きたい方などには鉄骨鉄筋コンクリート造の住宅がおすすめです。

まとめ

鉄骨鉄筋コンクリート造は主要な建築構造のなかで最も耐久性が高く、防音性や断熱性などの面でも優れています。広い空間の確保にも向いているため、安全で快適な家に長く住みたい方におすすめの建築構造だといえるでしょう。

ただし、建築にコストがかかる、間取りの自由度が低いといったデメリットもあるので注意が必要です。鉄骨鉄筋コンクリート造とその他の建築構造の違いを押さえたうえで、予算や希望条件を考慮しながら家の種類を決めるとよいでしょう。

■監修者

名前:齋藤 彩(さいとう あや)
所有資格:CFP(Certified Financial Planner)、1級FP技能士、薬剤師免許

おもなキャリア:
急性期総合病院において薬剤師として勤める中、がん患者さんから「治療費が高くてこれ以上治療を継続できない」と相談を受けたことを機にお金の勉強を開始。ひとりの人を健康とお金の両面からサポートすることを目標にファイナンシャルプランナーとなることを決意。現在は個人の相談業務・執筆活動を行っている。