毎月支払う管理費とは?共益費との違いや相場を解説
2024年08月09日
マンションなどに住んでいると毎月「管理費」が発生します。ただ、管理費は必要なものとわかっていても、実際に何に使われているのかはよく知らないという方もいるのではないでしょうか。また、似た用語である「共益費」とも混同されがちです。
この記事では、管理費の概要や共益費との違いなどについて解説します。管理費の相場や値下げ交渉についても紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。
管理費とは?共益費や修繕積立金との違い
管理費とは何を目的に集められているものなのでしょうか。以下では、管理費の概要とともに、よく耳にする「共益費」や「修繕積立金」との違いなどについて解説します。
管理費とは物件を管理するための費用
管理費とは、物件の維持や管理に使われる費用のことです。マンションなどの物件に住んでいる入居者は、毎月この費用を支払う義務があります。
不動産公正取引協議会連合会の「不動産の公正競争規約」では、管理費は以下のように定義されています。
「マンションの事務を処理し、設備その他共用部分の維持及び管理をするために必要とされる費用をいい、共用部分の公租公課等を含み、修繕積立金を含まない」
マンションには、エントランスや廊下、エレベーター、階段などの共用部分が存在します。管理費はこれらを維持管理するための費用や、物件の運営に必要な人件費・事務費用などに使われます。管理費の具体的な用途は以下のとおりです。
2.共用設備の保守・点検・維持管理費
3.事務管理業務費
4.共用部分の水道光熱費
5.清掃費やごみの処理費用
6.植木・植栽の管理費 など
このように、管理費はマンションの快適な住環境を維持するために使われるほか、マンション全体の運営においても必要不可欠なものといえます。
共益費や修繕積立金との違いは?
管理費と混同されがちな言葉として、共益費や修繕積立金があります。
共益費とは、マンションなどにおける共用部分の維持やメンテナンスのために毎月徴収される費用のことです。管理費は管理組合の事務費用など物件の運営に関する費用も含んでいるのに対し、共益費は共用部分の維持管理費用だけを指しています。つまり、共益費は管理費の一部というイメージです。
とはいえ、管理費と共益費はほとんど同じ意味と考えてよいでしょう。どちらの用語を使うかは不動産会社やオーナーによって異なりますが、管理費と共益費が別々に徴収されることはありません。
修繕積立金は、共用部分の大規模修繕などに備えて積み立てられる費用のことです。毎月徴収され、長期的な修繕計画に基づいて管理されます。マンションでは、エレベーターや外壁などの性能を維持するために修繕を定期的に行なう必要があります。その際は大きなコストがかかりますが、積立金として定期的に積み立てておけば、修繕時に住民の負担を軽減できるというわけです。
なお、修繕積立金は分譲マンションなどの所有者に発生する費用で、賃貸の方が支払うことは通常ありません。
分譲と賃貸における管理費の違い
分譲マンションと賃貸マンションでは、管理費の性質に違いがあります。
分譲マンションでは、物件の管理・維持コストを住民で割って負担します。管理組合の規約には管理費がどのような目的で使用されるのか明記されており、必要な費用が安ければ管理費も安くなる可能性があるでしょう。
一方、賃貸マンションの管理費はオーナーの収入の一部として扱われることがほとんどです。賃貸における家賃と管理費は一緒くたに管理されることが多く、管理費をどのように使うか、金額をいくらに設定するかは、オーナーの裁量に委ねられます。
例えば、賃貸マンション探しサイトで「家賃○万円以下」の条件で検索されるために家賃を下げ、代わりに管理費を上げてオーナーの収入を確保するケースなども考えられます。この場合、管理費が高くても必ずしも管理が手厚いとはいえません。
管理費の相場は?
前提として、賃貸マンションの管理費は物件オーナーの裁量によって決まるため、物件ごとに金額は異なります。
そのうえで、賃貸マンションの管理費の相場は、およそ家賃の5~10%といわれています。ただし、オートロックやエレベーターなどの設備が充実していると、管理費は上がる傾向です。また、新築マンションも管理費・共益費が高めのケースが多いでしょう。
一方、分譲マンションの相場はファミリータイプの物件で1万5,000円程度です。金額は、一般的に以下の計算式で算出されます。
専有面積が広い部屋のほうが管理費は高くなります。また、プールやフィットネスジムなど共用設備が豪華なマンションは全体の管理コストが高くなるため、個々の負担も増えるでしょう。
賃貸は入居するタイミングで管理費が変わるケースも
物件にもよりますが、賃貸マンションは入居する時期によって管理費が変わるケースがあります。
引越しの閑散期である8~10月は新規入居者が少ないため、空室を埋めるための施策の一つとして、オーナーが管理費の金額を下げることがあるのです。一方で、転職や異動、進学などの理由で引越しが増える1~3月は需要が高まるため、管理費も相応の金額に戻ることが多いでしょう。
管理費0円は本当にお得?考えられるリスクとは
「管理費0円」という表記は、一見するとお得に感じるかもしれませんが、損をする可能性もあるためよく確認が必要です。
管理費0円と記載されている物件は、その分家賃が高めに設定されている可能性があります。不動産会社に支払う仲介手数料や入居時に必要な敷金・礼金は、通常「家賃の○ヵ月分」と設定されるため、家賃が上がると初期費用も高額になることに注意しましょう。これは、家賃の記載が「管理費込み」の場合も同様です。
また、共用部分を管理しないことにより管理費が0円というケースもありますが、清掃や設備の保守が不十分な物件であるリスクがあります。ただし、規模が一定以上のマンションについては設備の点検と行政へ報告する義務が定められているため、仮に管理費が0円だとしてもまったく管理されていないということはありません。
そのほかに、以下のような問題がある可能性もあるでしょう。
●築年数が古い
●空室期間が続いている
管理費0円だからといって即座にお得だと判断せず、本当に管理費がかかっていないのか、実際の管理状態はどうかなどを確認することが大切です。
管理費0円が本当にお得になるケース
特定の状況では、管理費0円によって得をするケースもあります。例えば、勤め先の家賃補助が家賃にのみ適用で、管理費・共益費は自己負担となるケースです。この場合、管理費0円または家賃に管理費込みの場合、自己負担額が減りお得になるでしょう。
管理費が高い=良い物件とは限らない
管理費が高い物件は、新築・築浅で設備が充実している、管理人が常駐しているなど、利便性やセキュリティが高く、メリットが大きい傾向にあります。
しかし、管理費が高い物件が良い物件とは限りません。前述のとおり、賃貸マンションの管理費はオーナーが決めており、使用用途もオーナーの裁量次第です。高い管理費が設定されていても、物件が十分にメンテナンスされているとは限らないため、管理の質が高いとは言い切れません。
そのため、物件を選ぶ際は、その物件が管理費に見合った管理がされているか確認することが重要です。さらに、物件を比較検討する際には、家賃だけや管理費だけで比較せず、全体のコスト(家賃+管理費)に注目して考えましょう。
管理費は値下げ交渉できる?
管理費の値下げ交渉や交渉のコツなどについて、賃貸と分譲それぞれ解説します。
賃貸の管理費は値下げ交渉可能
賃貸マンションの場合、管理費の値下げ交渉は可能です。これは、賃借人に認められている「借賃増減請求権」に基づくもので、家賃が値下げ交渉できるのと同様に、管理費も交渉する権利があります。実際に、家賃の値下げはできなくても管理費の値下げは叶ったというケースもあるようです。
値下げ交渉のおすすめのタイミングは、賃貸契約の更新時です。入居直前に交渉する選択肢もありますが、オーナーに悪い印象を与えてしまう可能性があるため、慎重に判断しましょう。
更新は契約内容を見直す機会でもあるため、共用部分の清掃や設備の管理が不十分であることを示す証拠があれば、交渉がスムーズに進むかもしれません。ただし、入居時の契約書に「契約期間中の家賃・管理費の変更はない」などの記載がある場合は交渉できないことに注意してください。
分譲の値下げ交渉は難しい
分譲マンションでは、管理費の値下げ交渉は難しいでしょう。前述のとおり、分譲マンションでは管理規約に基づいて管理費の用途や徴収額が明確に定められているためです。管理費を下げるには規約を変えて管理組合に承認される必要があり、非常にハードルが高いといえます。
管理費の勘定科目
賃貸オフィスなどを借りた際などに発生する管理費の勘定科目について解説します。
賃貸物件を借りた場合、家賃と管理費(共益費)は一括で支払うことが多いため、管理費を家賃に含めた形で「地代家賃」や「支払家賃」の勘定科目で処理するのが一般的です。ただし、節税の観点から、家賃と管理費(共益費)を区分して仕訳することもあります。
反対に、管理費を受け取った場合は、「売上」もしくは「受取家賃」の勘定科目を使用します。どちらを使用するかは事業内容によって変わりますが、不動産事業をメインにしている場合は「売上」、そうでない場合は副収入として「受取家賃」とすればよいでしょう。
まとめ
管理費はマンションなどの維持管理にかかる費用で、入居者が快適に物件に住むために重要な役割を果たしています。ただし、賃貸マンションの場合は単にオーナーの収入の一部として扱われることが多いため「管理費が高いから管理が行き届いている」とはいえない点に注意しましょう。
逆に、管理費0円の賃貸マンションは必ずお得とも言い切れません。物件の管理状態と管理費のバランスを見て、管理費の金額が適切なのかを総合的に判断することが大切です。
■監修者
名前:齋藤 彩(さいとう あや)
所有資格:CFP(Certified Financial Planner)、1級FP技能士、薬剤師免許
おもなキャリア:
急性期総合病院において薬剤師として勤める中、がん患者さんから「治療費が高くてこれ以上治療を継続できない」と相談を受けたことを機にお金の勉強を開始。ひとりの人を健康とお金の両面からサポートすることを目標にファイナンシャルプランナーとなることを決意。現在は個人の相談業務・執筆活動を行っている。