固定資産税計算シミュレーションを実践|不動産投資初心者向けに計算方法も解説

2024年06月26日

不動産をはじめとする固定資産の所有者に課せられる税金が固定資産税です。固定資産税は毎年支払う必要があり、所有物件で不動産投資を行なう方も当然納める必要があります。不動産投資初心者のなかには、どれくらいの固定資産税が課せられるのか不安に感じている方もいるのではないでしょうか。

この記事では、固定資産税の計算方法や軽減措置などを解説したうえで、固定資産税計算シミュレーションを実践します。この記事を通して、不動産投資における固定資産税の基本を習得しましょう。

固定資産税の基本と計算方法

土地・家屋などの不動産を所有する場合、年に1回固定資産税が課税されます。まずは、固定資産税の基礎知識とベーシックな税額の計算方法を解説しましょう。

土地・家屋それぞれにかかる固定資産税

固定資産税は、土地・家屋・償却資産などの固定資産を毎年1月1日時点で所有している人に対して課せられる地方税の一種です。課税主体は市町村ですが、東京23区に関しては東京都が徴収することになっています。

毎年春頃に自治体から送付される納税通知書にしたがって、1年分を一括もしくは4回に分けて納付するのが基本です。

なお、1月1日時点での所有者が納付する必要があるため、期中で売買した物件の場合、所有期間に応じて売り主・買い主間で精算するケースが多くなっています。

基本的な固定資産税の計算方法

固定資産税の標準税率は「1.4%」となっています。課税主体となる市町村ごとに異なる税率を設定できますが、実際には大半の自治体で標準税率に統一されている傾向です。よって、基本となる固定資産税額の計算式は「課税標準額×1.4%」です。

課税標準額とは

上記の計算式に登場する「課税標準額」とは、固定資産税の税額計算のベースとなる金額を指します。土地・建物ともに、固定資産税評価額と課税標準額は基本的には同額です。

ただし、後ほど紹介する「住宅用地の課税標準の特例」が適用されると、特例措置が適用されたあとの金額が課税標準額となります。

都市計画税の課税有無に要注意

固定資産税とともに押さえておくべき税金に「都市計画税」があります。都市計画税は、都市計画事業や土地区画整理事業の費用に充てるため、市町村(東京23区の場合は東京都)が、原則として市街化区域内にある土地・家屋の所有者に対して課す税金です。

税率は「0.3%以下」とされ、市町村ごとに異なる税率を設定できますが、これも多くの自治体で「0.3%」が適用されています。税額の基本の計算式は「固定資産税の課税標準額×0.3%」です。ただし、都市計画税にも「住宅用地の課税標準の特例」があります。

都市計画税はすべての自治体が課税しているわけではありません。物件の所在自治体が都市計画税を徴収しているのか、あらかじめ確認しておきましょう。

固定資産税評価額の確認方法

固定資産税額の計算のベースとなる課税標準額には、原則として固定資産税評価額が使用されます。ここからは固定資産税評価額はどのように確認すればいいのか見ていきましょう。

3年ごとに評価替えが行なわれる固定資産税評価額

固定資産税評価額は土地・家屋ごとに定められるもので、総務大臣が定める「固定資産評価基準」をベースとして、各市町村長(東京23区は東京都知事)が決めるとされています。

土地の評価額は、その土地の用途によって評価方法が異なります。課税対象となっている土地は宅地・田・畑などに分類され、田や畑などの場合、おもに売買実例価額をベースに評価額を算出します。また、宅地の評価額は、地価公示価格や鑑定評価価格などの7割が目安です。

家屋の評価額は「再建築価格×経年減点補正率」で算出します。再建築価格とは、評価時点で同じ家屋を新築する場合にかかると想定される金額のことです。また、経年減点補正率は、築年数の経過による評価減を考慮するために定められた比率を指します。

なお、土地・家屋の固定資産税評価額は3年に1回「評価替え」が実施され、評価が見直されることになっています。

中古物件の固定資産税評価額の確認方法

中古物件の場合、自治体から毎年送付される納税通知書に添付の「課税明細書」に、土地・家屋別の固定資産税評価額が記載されています。軽減措置適用後の課税標準額も同じ書類で確認可能です。

なお、購入した年については通常売り主宛てに課税明細書が届くため、必要な場合は不動産会社の担当者に確認してコピーをもらうなどしましょう。

不動産の固定資産税評価額は、「固定資産課税台帳」の閲覧や「固定資産評価証明書」の取得によっても確認できます。ともに申請先は市町村の役所、東京23区の場合は23区の都税事務所です。ただし、23区の台帳閲覧は固定資産の所在する区の都税事務所に限ります。

1月2日以降に売買で所有者となった場合には、登記簿謄本など、所有権を証明する書類とともに申請することが必要です。固定資産課税台帳の閲覧には、自治体によっては1月1日時点の所有者(売り主)の委任状が求められます。詳細は物件所在地の自治体などに問い合わせてください。

新築物件の固定資産税評価額の確認方法

新築物件の場合、購入時点では固定資産税評価額が算出されていません。

そのため、新築物件の固定資産税評価額は、建物完成後に行なわれる資料による家屋調査、もしくは自治体の担当者が現地立ち会いのもと行なう家屋調査の結果をもとに計算されます。つまり、購入して調査を実施したあとでないと正確な評価額はわかりません。

ただし、不動産会社に確認すれば、完成前でも概算額は教えてくれるはずです。固定資産税額は資金計画を立てるうえでも大切な情報なので、事前に確認しておくとよいでしょう。

不動産投資でも適用できる固定資産税の軽減措置

固定資産税の基本的な計算式を紹介しましたが、実際にはいくつかの軽減措置が設けられています。ここでは、不動産投資でも適用できるおもなものを土地・家屋ごとに紹介します。

土地の固定資産税の軽減措置:小規模住宅用地の特例

土地の固定資産税で適用できる可能性がある軽減措置が「小規模住宅用地の特例」です。

この特例は、住宅用家屋の敷地となっている土地など(住宅用地)に関しては、一定の面積まで固定資産税の課税標準額を減額するものです。要件と特例の内容は次のとおり定められています。

※ただし、適用は家屋の床面積の10倍までの土地に限られる。

200m2を超える分が一般住宅用地となるので、例えば1戸220m2の物件の場合、200m2までは1/6に減額、残りの20m2分に関しては1/3の減額となります。

この特例は、自身が居住せず賃貸に出している物件であっても、居住用の家屋の敷地であれば適用可能です。なお、マンションやアパートの場合は、敷地全体の面積を戸数で除した面積によって算出されます。

家屋の固定資産税の軽減措置:新築住宅の税額の減額措置

家屋に関する軽減措置では「新築住宅の税額の減額措置」が適用される可能性があります。その名のとおり、新築物件に投資する場合のみの措置となるため注意が必要です。

この制度は新築住宅を取得した場合、家屋の固定資産税の120m2までに対する税額が一定期間1/2に減額されるというもので、節税効果が大きくなっています。適用対象の新築住宅には床面積などの要件があります。減額される期間は次のとおりです。

期間限定の措置とされていますが、令和6年度税制改正により、適用期間が2026年3月末まで延長されました。

固定資産税計算シミュレーションを実践

ここまで説明した内容を前提に、固定資産税計算シミュレーションを実践してみます。以下では、新築マンションと中古アパートに関して試算しましょう。

新築マンションの固定資産税計算シミュレーション

まずは、新築マンションを購入して投資を行なうケースの固定資産税額を試算します。購入するのは次のような物件です。

●土地の固定資産税額(固定資産税評価額=土地価格の7割と想定)
(2,000万円×70%)×1/6(小規模住宅用地の特例)×1.4%≒3万2,700円

●家屋の固定資産税額(固定資産税評価額=建物価格の5割と想定)
(7,000万円×50%)×1/2(新築住宅の税額の減額措置)×1.4%=24万5,000円

この場合、購入当初の固定資産税額は土地・家屋合計で約27万7,700円となります。

中古アパートの固定資産税計算シミュレーション

続いて、中古アパートを購入して投資を行なうケースについても固定資産税額を試算してみましょう。次のような物件を購入するものとします。

●土地の固定資産税額
8,750万円×1/6(小規模住宅用地の特例)×1.4%≒20万4,200円
(200m2×10戸=2,000m2までが小規模住宅用地)

●家屋の固定資産税額
再建築価格:17万7,000円(東京都所在の木造建物の令和5年分工事費用単価)×250m2=4,425万円
経年減点補正率:0.37(木造・経過年数15年)

4,425万円×0.37×1.4%≒22万9,200円

こちらの購入当初の固定資産税額は合計約43万3,400円となります。新築のような減額措置はないものの、経年減点補正率により家屋の固定資産税額が大きく抑えられているのが特徴です。

参考:国税庁「地域別・構造別の工事費用表(1m2当たり)【令和5年分用】
参考:法務局「経年減価補正率表

不動産投資の固定資産税計算で気を付けるべき3つのこと

最後に、不動産投資において固定資産税に関して気を付けるべき点を3つ紹介します。

(1)固定資産税も資金計画に盛り込んでおく

固定資産税は、不動産投資でかかる費用のなかでも当初からある程度見込みが立つものの一つです。新築物件だと想定値にはなるものの、不動産会社に確認すればだいたいの想定額はつかむことができます。年額で考えれば数十万円単位の固定資産税ですが、毎年必ずかかる費用であるため、物件の収支にも影響します。

不動産投資の資金計画を立てる際は、都市計画税と併せて、固定資産税を忘れずに盛り込んでおきましょう。

(2)新築物件は途中で固定資産税が実質上がる

一定の要件を満たす新築戸建て・マンションの場合、家屋の固定資産税の減額措置が受けられるのは先ほど紹介したとおりです。一般の戸建てで当初3年間、一般のマンションで当初5年間、固定資産税の税額が1/2に抑えられるという措置で、購入当初の新築物件は税額がかなり抑えられます。

期間終了によって税額が「もとに戻る」だけですが、実質は税額が上がるのと変わりません。新築物件に投資する場合、一定期間で税額が高くなると認識しておきましょう。

(3)固定資産税額の見込みだけで物件を判断しない

不動産投資用の物件を購入するにあたっては、固定資産税以外にも多くの費用がかかります。

固定資産税を抑えるには資産価値の低い物件のほうが有利ですが、資産価値の低い物件は担保価値も低くなるため、ローン借り入れの条件が厳しくなる可能性があります。また、立地や周辺の賃貸ニーズによって、空室がなかなか埋まらないといった懸念もあるでしょう。

物件を探すときは固定資産税の見込みだけでなく、出口戦略や入居率・家賃水準なども踏まえて、総合的に判断することが重要です。

まとめ

土地・家屋にかかる固定資産税額の基本的な計算式は「課税標準額×1.4%」ですが、「住宅用地の課税標準の特例」や「新築住宅の税額の減額措置」が適用され、税額が軽減されるケースもあります。

固定資産税は1年単位で考えれば数十万円程度の支出ですが、毎年支払いが生じるため、不動産投資の収支に与える影響は小さくありません。物件の収支計画を立てる際は、固定資産税の支払いを忘れずに盛り込みましょう。

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■監修者

名前:八木 満里子(やぎ まりこ)
所有資格:日本証券アナリスト協会認定アナリスト、日本FP協会認定AFP、日本証券業協会一種外務員資格、消費生活アドバイザー

おもなキャリア:
地方銀行で通算21年間勤務、おもに市場リスク管理を担当。
その後、コンプライアンス意識の高さと金融関連資格を強みに金融系ライターとして活動中。
2024年より、一般社団法人日本金融教育支援機構認定講師。