公務員は住宅ローン審査で有利になる?借入限度額の目安と利用できる住宅ローンの種類

2024年06月26日

住宅ローンを検討している公務員の方のなかには、どれくらいまで借りられるのか、どこで住宅ローンを組めば良いのかわからない方もいるのではないでしょうか。

国や地方自治体などの職員である公務員は、民間企業で働く人と比べると収入が安定しています。そのため、公務員は住宅ローンの審査で有利になる傾向にありますが、借入額の多さや返済状況などが理由で、審査に通らないケースも珍しくありません。

本記事では、公務員が住宅ローンの審査で有利になる理由、審査に落ちる原因、借入限度額の目安、公務員が利用できる住宅ローンの種類について解説します。

公務員は住宅ローンの審査に通りやすい?

公務員は、民間企業で働く会社員よりも住宅ローンの審査を通過する傾向にあります。ここからは、公務員が審査で優遇される2つの理由をみていきましょう。

収入が安定しており、審査で優遇される傾向にある

国や地方自治体が民間企業の倒産にあたるような事態に陥る可能性はほとんどありません。また、景気の影響で給料が減るリスクが低いうえに、基本的には自己都合で退職しない限り、定年まで働き続けることが可能です。

さらに公務員は、出産・病気・介護などでの休暇が取りやすく、子育てや介護をしながらでも働きやすい環境にあります。このように、公務員は長期的に安定した収入が見込めるため、審査で優遇されやすい職業だといえます。

退職金制度が確立しているため返済見込みがある

公務員の退職金制度は、法律で規定されています。役職や勤続年数によって金額は異なりますが、公務員の定年退職金は平均2,000万円以上支給されるため、退職金で住宅ローンを一括返済することも可能でしょう 。

退職金で住宅ローンを完済できる見込みがあるため、金融機関も安心して融資できるのだと考えられます。

公務員でも住宅ローンの審査に通らないことも

公務員が住宅ローンの審査で優遇される傾向にあるのは、長期的に安定した収入が見込めるからです。しかし、公務員の方でも、以下のケースに該当すると審査に通らない可能性があります。

●マイカーローンやキャッシングなど住宅ローン以外の借り入れが多い
●クレジットカードの支払い滞納など、信用情報に問題がある
●健康状態に何かしら問題があり、団体信用生命保険に加入できない
●返済負担率が高い

金融機関が融資する人は、毎月滞りなく返済できる人です。そのため、申し込みの時点で何件もの借り入れがある、過去に返済を滞納したことがある人は、公務員であっても審査に落ちる可能性が高いでしょう。

団体信用生命保険とは、住宅ローンの債務者に万が一の事態が生じた場合に、残債の支払いに保険金を充てられる保険です。団体信用生命保険への加入は、融資の条件であることが多いため、健康状態が悪く加入できない場合は住宅ローンを組むことが難しくなります。

また「返済負担率」とは、住宅ローン以外の借り入れも含めた、収入に対する年間返済額の割合のことです。借り入れが多いほど年間返済額が大きくなり、返済負担率も高くなります。

公務員の住宅ローン借入限度額について

前述したように、返済負担率が高いと住宅ローンの審査に通らないことがあります。返済負担率をもとに自身の借入限度額を正しく把握すれば、審査に通過しやすくなるでしょう。

【返済負担率の計算方法】
返済負担率は「年間返済額÷年収×100」で計算します。例えば、年収が600万、月に12万円(年間返済額144万円)を返済する場合の返済負担率は、次のとおりです。

144万円÷600万円×100=24%

実際の設定は金融機関によって異なりますが、住宅ローンの審査基準として、返済負担率の目安は30%~35%とされていることが多く、この基準を超えた場合は住宅ローンの審査に落ちる可能性が高くなります。

また、毎月安定して返済できる返済負担率の目安は、20%~25%以下です。返済負担率が20%~25%以下であれば、住宅ローンの審査に通りやすく、毎月無理のない状態で返済できるでしょう。

なお、以下の条件における、年収別・返済期間別の借入限度額の目安は次のとおりです。

●固定金利1.5%
●返済負担率25%
●頭金なし
●年齢30歳
●元利均等返済

住宅ローンの金利には、大きく分けて「固定金利」と「変動金利」があります。

固定金利は完済まで金利が一定で変わらないため、返済計画を組みやすいでしょう。一方、金利が定期的に見直される変動金利は、現状では固定金利よりも金利が低い傾向にあります。ただし、将来的に金利が上がれば、返済額が増える可能性もあるため注意しなくてはなりません。

住宅ローンを利用するときは、返済計画を考えたうえで自分に合った金利を選びましょう。

公務員におすすめの住宅ローンの種類

公務員は住宅ローンの審査で優遇される傾向があるうえに、借入先が多いことも特徴です。ここからは、公務員の方におすすめの住宅ローンの種類について解説します。

ろうきん(労働金庫)

公務員は、ろうきんに出資している団体の構成員であることから、住宅ローンを利用することが可能です。

ろうきんとは、労働組合や生協(生活協同組合)、国家公務員・地方公務員の団体、その他労働者の団体などで資金を出し合う、協同組織の福祉金融機関であり、全国に13の組織があります。営利目的の金融機関ではないため、金利の低さと事務手数料の安さを実現できています。

住宅ローンの融資条件は取引をするろうきんによって異なりますが、「安定継続した年収が150万円以上ある方」「同一勤務先に1年以上勤務されている方」などです。一般の金融機関と比較すると厳しくはありません。

また、マイホーム以外の用途でお金を借りたい場合には、「マイプラン」というカードローンを利用できます。

「マイプラン」の金利はろうきんによって異なりますが、関東1都7県を営業エリアとする中央ろうきんの場合、団体会員の構成員の金利は、年3.875%~7.075%(2024年4月時点)です。一般のカードローンよりも低い金利で資金を調達できる可能性があります。

共済組合

公務員が加入する共済組合では、資金の貸付事業を行なっています。公務員が共済貸付で住宅ローンを借り入れる場合のメリットとデメリットは、次のとおりです。

通常の住宅ローンでは不動産を担保にし、返済が滞った際には連帯保証人などに返済を求めますが、共済貸付では不動産や連帯保証人などの担保が不要です。また、信用情報の確認がないため、過去に返済の滞納があったり、ブラックリストに載っていたりしても審査には関係しません。

ただし、住宅貸付の上限額は1,800万円程度と低いうえに、組合員期間によって限度額が異なります。期間が短い方は借入額が数百万円となる場合がありますが、その場合には住宅ローンの頭金や建築の諸費用など、一時的な費用に用いるとよいでしょう。

教職員互助会

教職員互助会は、教職員とその家族の相互扶助や福祉の向上を目的として、事業を行なっています。毎月かけ金を支払うことで、貸付や給付金などの相互扶助を受けることが可能です。

貸付の上限額は民間の金融機関より少ないものの、比較的低い金利でお金を借りられます。

ただし、都道府県や市ごとに互助会があり、給付金制度や金額などはそれぞれ異なるため、お住まいの地域の互助会へ確認が必要です。

民間の住宅ローン

銀行などの金融機関が扱っている住宅ローンは、金融機関によって融資条件が異なります。原則として、住宅ローンを利用して購入する建物とその土地への担保設定と団体信用生命保険への加入が必要です。

ローン審査では申込者の収入や職業の安定性が重視されるため、公務員は有利です。金利面で優遇される可能性もあります。

また、民間金融機関を窓口として、住宅金融支援機構が取り扱う公的ローンである「フラット35」を借り入れることができます。フラット35は保証人不要で、団体信用生命保険への加入も必須ではありません。全期間固定金利で、適用金利は取扱金融機関によって決められます。

まとめ

公務員は収入と雇用が安定しているため、住宅ローンの審査が優遇される傾向にあります。民間の金融機関だけでなく、ろうきんや共済組合、教職員互助会と、借入先が多いのは公務員の特権といえるでしょう。

ただし、住宅ローン以外に借り入れが多かったり、信用情報に問題があったりする場合には、公務員でも審査に落ちることがあります。

住宅ローンの審査を確実に通過するためには、借入限度額を正しく把握し、自分に合った住宅ローンを選ぶことが大切です。

■監修者

名前:八木 満里子(やぎ まりこ)
所有資格:日本証券アナリスト協会認定アナリスト、日本FP協会認定AFP、日本証券業協会一種外務員資格、消費生活アドバイザー

おもなキャリア:
地方銀行で通算21年間勤務、おもに市場リスク管理を担当。
その後、コンプライアンス意識の高さと金融関連資格を強みに金融系ライターとして活動中。
2024年より、一般社団法人日本金融教育支援機構認定講師。