老後のマンションの後悔しない選び方|戸建てや賃貸との違いも解説

2024年07月04日

年齢を重ねると、家族の形態や自身の体力などさまざまなことが変化し、より住みやすい家を求める方もいるでしょう。住み替えを検討するにあたり最初に考えることの一つが、マンションにするか戸建てにするかです。

マンション暮らしを選択するにしても、購入するのか、賃貸借契約を結ぶのか、判断に迷うこともあるかもしれません。

この記事では、老後のマンション暮らしで後悔しないよう、それぞれのメリット・デメリットやマンション選びのポイントを紹介します。

老後をマンションで暮らすメリットとデメリット

まずは、老後におけるマンション暮らしのメリットとデメリットを紹介します。特にデメリットは入居後に悔いが残らないよう、住み替え前に把握することが大切です。

老後のマンション暮らしのメリット

老後のマンション暮らしのおもなメリットとして意識しておきたいポイントは以下のとおりです。

●防犯性
セキュリティ面が高いマンションを選ぶと、防犯面の不安がなく安心して暮らせます。玄関にオートロックや防犯カメラが備えられた物件を選べば、空き巣などの心配が軽減できるでしょう。

●立地の利便性
マンションは駅の近くなど都市部に建てられている物件も多く、商業施設や医療機関が近いといった、立地面でのメリットも挙げられます。

●維持管理の簡易性
維持管理のしやすさもメリットです。マンションの共用部分は基本的に管理会社がメンテナンスをするため、入居者は自宅内の維持管理を行なうだけで生活できます。

老後のマンション暮らしのデメリット

一方で、老後のマンション暮らしのおもなデメリットになり得るポイントは以下のとおりです。

●設備の充実度
設備の充実度は、マンションによって異なります。例えば、エレベーターや防犯カメラがついておらず、階段の上り下りでの負担や防犯面での不安など、設備の不足や古さから暮らしづらさを感じることがあるかもしれません。さらに、エレベーターが設置されているマンションであっても災害時に使用不可となり、階段で移動せざるを得ないシーンも想定されます。

●間取り
戸建てと比べて間取りの自由度が低い点もデメリットです。マンションは戸建てより面積が小さく部屋数が少ないことに加え、庭がない場合がほとんどです。若い頃に比べて余暇が増える老後では、多くの時間を家で過ごすことになるでしょう。室内や庭に関連する趣味がある場合は、この点も考慮しなくてはなりません。

●費用負担
費用面の負担が大きいこともマンションの特徴です。住宅ローンだけでなく、管理費・修繕積立金などの維持費がかかるため、生活費を加えると想定以上に資金が必要となると考えられます。

老後の後悔しない住まいはマンションか戸建てか

前述したとおり、マンションは戸建てに比べると住宅メンテナンスの負担が少ないものの、庭を確保できない場合があるなど、我慢しなくてはならない点もあります。マンションと戸建てのどちらが適しているか判断するために、戸建てのメリットとデメリットも確認しましょう。

老後を戸建てで暮らすメリットとデメリット

戸建てのメリットとデメリットを、それぞれ紹介します。

戸建て暮らしのメリット

戸建て暮らしのおもなメリットは以下のとおりです。

●隣人など周囲の音が気になりにくく、静かに暮らせる
●子どもや孫に土地を資産として残すことができる
●庭や余裕のある間取りなど、趣味や余暇のためのスペースが確保しやすい
●リフォームが自由にできる

住宅が独立して建っているため隣人との距離があり、プライバシーを確保できる点が戸建ての特徴です。また、マンションでリフォームを行なう場合は、持ち家だとしても申告や許可を求められることがありますが、戸建てはその必要がありません。

戸建て暮らしのデメリット

一方で、戸建て暮らしのおもなデメリットは以下のとおりです。

●掃除やメンテナンスなど維持管理が大変
●2階建ての場合、足腰への負担などから2階を活用しなくなる可能性がある
●駅などが遠く不便な立地になるケースがある

マンションよりも面積がある分、維持管理や移動に負担がかかる点はデメリットです。入居した当時は上下階の移動に支障がなくとも、老後には厳しくなることが考えられます。

立地の不便さも同様です。入居当時は車で移動ができて負担が少なくても、老後には免許を返納している場合もあるでしょう。

老後の住まい|マンションか戸建てかを決めるポイント

立地的な利便性が高くて外出しやすく、維持管理の負担が少ないほうが良い方にはマンションが向いているでしょう。反対に、自宅で趣味などをして過ごす時間を重視し、他者を気にせず静かに暮らしたい方には、戸建てが向いているといえます。

マンションか戸建てか決める際は、老後にどのような生活をしたいかをイメージし、資金計画と照らし合わせて決めることが大切です。

老後の後悔しないマンション暮らしは持ち家か賃貸か

新たにマンションを購入して住み替える際は、多くの場合、住宅ローンを利用することになるでしょう。

一方、賃貸の場合は住み続ける限り、家賃支払いが発生します。後悔しないためにも、持ち家と賃貸のどちらが適しているのか、それぞれのメリット・デメリットを把握し、支払いのシミュレーションを実施して決めることをおすすめします。

老後を賃貸マンションで暮らすメリット・デメリット

前述したマンション暮らしのメリット・デメリットは購入した場合でしたが、ここからは賃貸の場合のメリット・デメリットを紹介します。

賃貸で暮らすメリット

賃貸マンションのおもなメリットは以下のとおりです。

●転居しやすい
●管理費は月々の支払いに含まれているうえに、修繕費は大家が負担するケースが多いため、支出の想定がしやすい
●固定資産税などがかからない

賃貸の場合、持ち家ではないため固定資産税や都市計画税の負担がなく、月々の費用負担のみを考えるだけで良い点がメリットです。

また、賃貸マンションの修繕費については、民法第606条で以下のように定められており、借りている側の責任でない限り大家が負担します。

賃貸人は、賃貸物の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負う。ただし、賃借人の責めに帰すべき事由によってその修繕が必要となったときは、この限りでない。

引用:民法|e-Gov法令検索

賃貸で暮らすデメリット

一方で、賃貸マンションのおもなデメリットは以下のとおりです。

●持ち家の場合ローンはいずれ払い終えるが、賃貸の場合はずっと家賃を払い続けなければならない
●年齢を重ねるほど物件が借りにくくなる
●自由にリフォームできない

賃貸暮らしでは、住み続ける限り家賃支払いの負担があるため、払い終わりがある住宅ローンと比較すると、デメリットになることがあります。また、老後にはバリアフリー環境へのリフォームが想定されますが、賃貸では大家への相談が必要なうえ、許可されるとは限りません。

老後に過ごしやすい物件へ引越しをするとしても、高齢者は健康面や金銭面のリスクがあるため物件を借りにくい傾向があるのが現状です。

老後のマンション暮らし|持ち家か賃貸か決めるポイント

マンションを持ち家にするか賃貸するかを決める際には、特に資金計画が重要になります。住宅ローンの金額と借入期間を、賃貸の家賃額や支払い想定期間と照らし合わせて考えましょう。

住宅ローン完済までの道筋がしっかりしていて余裕があり、資産として家を持ちたい方には、持ち家が適しているといえます。一方で、いずれ子どもの家に同居することが決まっているなど気軽に引越しがしたい方や、住宅ローンのリスクを避けたい方には賃貸が適しているでしょう。

老後のマンション暮らしを後悔しないための選び方

マンションと戸建て、持ち家と賃貸、それぞれのメリット・デメリットや決めるポイントをチェックしてきました。そのうえで、ここからはマンション購入において後悔しないための注意点を紹介します。

住宅ローンや管理費など支払いシミュレーションに余裕がある

マンション購入後は、おもに住宅ローンや管理費、修繕積立金などが月々の出費として想定されます。しかし、収入が減少して予算がなくなるといった、不測の事態が起こることもあるかもしれません。そのような場合でも、支払いが継続できるように資金的な余裕が必要だといえます。

いざというときには、リースバックを利用するのもよいでしょう。リースバックとは、マンションの売却と同時に賃貸借契約を結び、その後は家賃支払いを行ないながら同じ物件に継続して住み続けられるシステムです。

ただし、住宅ローンの残債がマンション売却価格を上回る場合は、リースバックを原則として利用できないため注意しましょう。

安全な間取りや設備、セキュリティ対策が整っている

老後のマンション選びには、高齢になっても住みやすい間取りや設備があるかが重要なチェックポイントになります。段差が少なく転倒のリスクを軽減できる、ヒートショック対策が実施されているなど、部屋の設備を確認しましょう。

また、高齢者を狙った空き巣などのリスクを避けるため、セキュリティ対策が整っているマンションを選ぶことも重要です。警察庁が公開している「令和4年の 刑法犯に関する統計資料」によると、共同住宅における侵入窃盗の被害は3階以下よりも4階以上のほうが少なく、選ぶ階でも防犯性を高められます。

参考:警察庁「令和4年の 刑法犯に関する統計資料

病院や買い物スポットなど周辺環境が整っている

マンションの購入時には通勤環境を優先したものの、退職などで入居後にライフスタイルが変わり、外出時の利便性が落ちることが考えられます。マンションの周辺環境は、老後のライフスタイルを考えながらチェックしましょう。

車に乗れなくなったり、バスや電車など人が多い場所を避けたりすることも考えられるため、徒歩圏内に買い物できるお店や医療機関があると安心です。また、気軽に散歩できる公園が近くにあると、健康管理やリフレッシュができて良いかもしれません。

高齢者が参加しやすいコミュニティや管理組合がある

馴染みのない土地にマンションを購入すると、コミュニティに入れず孤立してしまうことへの懸念があります。

家選びでは、家の中や家族のことだけを想定しがちですが、人付き合いもイメージしなくてはなりません。老後に何を楽しみたいか、その希望が叶えられるコミュニティがあるか、老後の生活をよくイメージして決めましょう。

また、マンションの管理組合がきちんと機能しており、希望を伝えやすい雰囲気があることも大切です。

老後のマンション暮らし|住み替えのタイミングに注意

住み替えを検討するタイミングは子どもの独立や退職などさまざまありますが、多くはライフステージが変わるタイミングで、お金の流れが変わるときでもあります。シミュレーションをしっかりと行なっていても、実際にライフスタイルが変わると想定どおりに進まないことがあるかもしれません。例えば、親の介護が発生して居住地の再考が必要になることなどが考えられるでしょう。

そうしたリスクを避けるために、資金計画を含めてファイナンシャルプランナーへ相談するのも一つの方法です。また、今住んでいる自宅を売却する際には、複数の不動産会社を比較検討して決めましょう。

まとめ

老後のマンション暮らしは、コンパクトかつ機能的に暮らせるライフスタイルで、高い防犯性や自宅の維持管理が楽になることがメリットです。一方で、戸建てには庭などスペースに余裕があるほか、隣人など周囲の音が気になりにくく、マンションと比べて静かに暮らせるメリットがあります。どちらにするかは、老後をどのように過ごしたいかをしっかりと考えて決めることが大切です。

また、住宅ローンを利用する場合には、不測の事態にあっても継続して支払える余裕のある資金計画が重要で、ときには専門家の手も借りながら検討を重ねることが大切です。

■監修者

名前:齋藤 彩(さいとう あや)
所有資格:CFP(Certified Financial Planner)、1級FP技能士、薬剤師免許

おもなキャリア:
急性期総合病院において薬剤師として勤める中、がん患者さんから「治療費が高くてこれ以上治療を継続できない」と相談を受けたことを機にお金の勉強を開始。ひとりの人を健康とお金の両面からサポートすることを目標にファイナンシャルプランナーとなることを決意。現在は個人の相談業務・執筆活動を行っている。