民間住宅の家賃補助とは?会社・自治体・国の制度を詳しく紹介

2024年07月04日

民間の賃貸物件に入居する場合、一定の条件を満たすことで、勤務先などから「家賃補助」を受けられる可能性があります。毎月の支出のうち、家賃が占める割合は大きいため、できれば家賃補助を受けたいと考える方は多いでしょう。

この記事では、民間住宅の家賃補助の概要を解説したうえで、勤務先・地方自治体・国による家賃補助制度の内容を詳しく紹介するので、ぜひ参考にしてください。

民間住宅の家賃補助とは?

民間住宅の家賃補助とは、民間の賃貸マンションやアパートの入居者を対象に、毎月の家賃の一部を補助することを指します。具体的な補助金額は、ケースによってさまざまです。
民間住宅の入居者は、家賃補助を利用することで、家計の負担を軽減できます。また、立地が良い物件や、面積が広い物件を選びやすくなるなど、住まいの選択肢も広がるでしょう。

なお、民間住宅の家賃補助に関する制度は、以下の3つに分類可能です。

●勤務先による家賃補助制度
●地方自治体による家賃補助制度
●国による家賃補助制度

それぞれの家賃補助制度について、次章から見てみましょう。

勤務先による家賃補助制度

会社によっては、福利厚生の一環として、従業員に対する家賃補助制度を導入しています。

代表例が、住宅手当や家賃手当として、補助金額分を給与に上乗せして支給する方法です。また、賃貸物件の初期費用や賃料を、一部または全額負担してもらえる「借り上げ住宅」や、不動産会社との提携による「仲介手数料の割引」といった家賃補助もあります。

家賃補助を受ける条件は会社ごとに異なりますが、例えば以下のようなものが挙げられます。

<家賃補助の条件例>
●会社から住宅までの距離が◯km以内であること
●年齢が◯歳以下であること
●扶養家族がいること
●正社員であること など

一般的には、大規模な会社ほど家賃補助制度が充実している傾向があります。
ただし近年では、従業員の働き方・ライフスタイルの多様化や、会社のコストカットなどを背景に、家賃補助制度を廃止する会社も少なくありません。自分が勤める会社に家賃補助制度があっても、その制度がいつまで続くかはわからない点に注意しましょう。

地方自治体による家賃補助制度

地方自治体では、住民が安心して住み続けられることや、住民を新たに誘致することを主な目的とし、独自に家賃補助を実施しているケースがあります。施策の目的によって、新婚世帯・子育て世帯・高齢者などと、家賃補助の対象者が異なる点が特徴です。

一例として、東京都新宿区が実施する「民間賃貸住宅家賃助成」があります。民間賃貸住宅家賃助成は、新宿区内に住む子育て世帯の経済的な負担を軽減し、定住化を促進するための制度です。世帯全員の前年中における総所得金額の合計が520万円以下の世帯が対象で、助成額は月額3万円、助成期間は最長5年間です。

民間企業の家賃補助制度と同様に、地方自治体による家賃補助制度でも、家賃補助を受けるためには条件をクリアしなければなりません。

また、各施策の申請期間内に、必要書類をそろえて申請する必要があります。先述の東京都新宿区の「民間賃貸住宅家賃助成」の場合は、年1回、2週間程度と申請期間が短いため、手続きを忘れないよう注意が必要です。

人気の制度では対象者を抽選で決めるケースもあるため、申請したからといって、確実に家賃補助を受けられるわけではない点にも留意しましょう。

詳しくは、インターネットにて「地方自治体名+(家賃補助/家賃助成/住宅助成)」などのキーワードで検索し、公式ホームページから最新情報を確認してください。

参考:民間賃貸住宅家賃助成|新宿区

国による家賃補助制度

続いて、国による家賃補助制度を3つ紹介します。

住居確保給付金

住居確保給付金とは、離職や廃業などで収入が減少し、住む場所を失うおそれがある方を対象に、家賃相当額を支給する制度です。住居確保給付金の支給は、生活困窮者自立支援法に基づきます。

制度の具体的な内容は、市区町村ごとに定める上限金額の範囲内で、家賃相当額を原則3ヵ月間支給するというものです。延長は2回まで可能で、最大9ヵ月間支給されます。

また、給付金は対象者本人に支払われるのではなく、地方自治体から賃貸住宅の賃貸人や不動産会社などへ直接支払われます。

なお、2025(令和7)年4月からは、家賃が安い住宅への転居費用も、住宅確保給付金でまかなえるようになる見込みです。

参考:住居確保給付金|厚生労働省
参考:生活困窮者自立支援法第6条|e-Gov法令検索

住宅セーフティネット制度

日本では、低所得者や子育て世帯、高齢者など、住宅の確保に配慮を要する方(=住宅確保要配慮者)が増加傾向にあります。しかし、住宅確保要配慮者全員をフォローできるだけの公営住宅の整備は、難しい状況にあるのが現状です。

そこで、民間の賃貸住宅や空き家を活用し、住宅確保要配慮者への居住支援を行なう「住宅セーフティネット制度」の運用が、2017(平成29)年10月に開始されました。住宅セーフティネット制度の基本の仕組みは、以下のとおりです。

(1)所定の審査を経た住宅が、「セーフティネット住宅情報提供システム」に、住宅確保要配慮者の入居を拒まない住宅として登録される(=登録住宅)
(2)登録住宅の賃貸人や入居者には、住宅改修費用補助や家賃低廉化などの経済的支援がなされる(地方自治体によっては賃貸人に対する家賃収入補助あり)
(3)地方自治体などが、住宅確保要配慮者へ登録住宅の情報提供を行なう
(4)住宅確保要配慮者が登録住宅へ入居する

賃貸住宅の賃貸人にとって、おもな収益源は家賃収入です。そのため、経済的に困っている方の入居受け入れは、「家賃滞納のリスクが高まる」として敬遠されやすい傾向があります。

一方で、住宅セーフティネット制度を活用すれば、賃貸人も経済的な支援を受けられます。また、登録住宅として、入居希望者を集めやすくもなるでしょう。

つまり、住宅セーフティネット制度は、住宅確保要配慮者と賃貸人の双方にメリットがある制度といえます。

参考:住宅セーフティネット制度について|国土交通省

移住支援金

移住支援金は、国の予算をもとに、地方自治体が運営する家賃補助制度です。正式名称は、「地方創生移住支援事業」といいます。

移住支援金のおもな対象者は、東京23区内に在住または通勤していて、東京圏外または東京圏内の条件不利地域に移住した方です。移住先で起業や就業をすれば、世帯の場合は最大100万円の支給、単身の場合は最大60万円が支給されます。

就労を開始してから移住先の地方自治体に申請し、移住支援金を受け取りましょう。なお、移住支援金の取り扱いがない地方自治体もあるため、事前に確認してください。

参考:移住支援金|地方創生サイト

家賃補助を前提とした「特定優良賃貸住宅」もある

ここまで紹介した制度は、あくまで個人を対象に、ケースに応じて家賃を補助するものです。一方で、最初から家賃を補助することを前提に建てられる、「特定優良賃貸住宅」もあります。

特定優良賃貸住宅では、国と地方自治体が、行政関連団体や土地所有者に対して家賃の一部を補助することで、入居者の家賃負担を軽減するほか、礼金や仲介手数料、更新料もかかりません。また、特定優良賃貸住宅と認められるためには、面積や構造、設備などが法律で定める条件を満たす必要があるため、一定の質が確保された住まいといえるでしょう。

ただし、特定優良賃貸住宅の家賃補助額は、入居者世帯の所得額によって変わる点や、毎年一定率で減額されていく点に注意が必要です。

参考:特定優良賃貸住宅の供給の促進に関する法律|e-Gov法令検索

民間住宅の家賃補助と不動産投資の関係

民間住宅の家賃補助は、不動産投資の観点でも注目したい要素です。

賃貸住宅を対象とする不動産投資を成功させるうえでは、「入居率」が重要となります。入居率とは、物件の総戸数に対し、どれくらいの戸数が埋まっているかを数値化した指標です。

入居率を高めるためには、「入居者に選ばれる物件」でなければなりません。もちろん、物件の立地や設備なども入居率に影響しますが、以下の点もポイントといえるでしょう。

●地方自治体の家賃補助の条件に合う物件か
●同じエリア内にある会社の家賃補助の条件に合う物件か

なぜなら、毎月の支出のなかで家賃は大きな割合を占めるため、「できることなら家賃補助を受けられる物件を選びたい」と考える方が多いからです。投資先として、地方自治体や近隣企業などの家賃補助の条件に合う賃貸住宅を選ぶことで、入居率の向上につながる可能性があります。

なお、不動産投資に興味がある方は以下の記事もぜひ参考にしてください。

参考:マンション投資のメリット・デメリットとは?基礎知識や成功のコツも解説

また、まずは少額で手軽に不動産投資を始めたい方におすすめの「不動産投資クラウドファンディング」について、以下の記事で紹介しています。併せてご覧ください。

参考:マンガでわかる!「不動産投資クラウドファンディングとは?」

まとめ

勤務先や地方自治体、国は、おもに民間の賃貸マンションやアパートの入居者を対象に、毎月の家賃の一部を補助するさまざまな制度を整えています。

家賃補助を受ける条件や補助金額は制度によって異なるものの、家計の負担軽減や、住まいの選択肢の拡充につながるでしょう。

■監修者

名前:齋藤 彩(さいとう あや)
所有資格:CFP(Certified Financial Planner)、1級FP技能士、薬剤師免許

おもなキャリア:
急性期総合病院において薬剤師として勤める中、がん患者さんから「治療費が高くてこれ以上治療を継続できない」と相談を受けたことを機にお金の勉強を開始。ひとりの人を健康とお金の両面からサポートすることを目標にファイナンシャルプランナーとなることを決意。現在は個人の相談業務・執筆活動を行っている。