マンションの耐用年数とは?寿命との違いや寿命を延ばす方法などを解説
2024年05月16日
「マンションの耐用年数は47年らしいけど、47年以上経過したマンションは取り壊すのだろうか?」
「築古のマンションに投資すると、すぐに取り壊しになってしまうのだろうか?」
などと疑問に思う方もいるのではないでしょうか。47年というのは法定耐用年数のことで、建物の寿命とは異なります。
本記事では、マンションの耐用年数とは何か、寿命との違いや、マンションの寿命を決める要素、寿命の長いマンションを見極める方法などを解説します。
マンションの耐用年数とは
マンションの耐用年数には「法定耐用年数」「物理的耐用年数」「経済的耐用年数」の3種類があります。それぞれの違いを見ていきましょう。
法定耐用年数
法定耐用年数とは、建物の構造や用途によって法律で定められている耐用年数です。一般的な鉄筋コンクリート造のマンションだと、法定耐用年数は47年になります。
法定耐用年数は、減価償却と呼ばれる会計上の処理のために決められているもののため、法定耐用年数が過ぎたからといって建物が使えなくなるわけではありません。
ただし、法定耐用年数が近づいた物件や法定耐用年数が過ぎた物件は、融資の条件が厳しくなるケースが多くなります。
物理的耐用年数
物理的耐用年数とは、建物自体が劣化して住めなくなるまでの年数です。つまり、物理的耐用年数が建物本来の寿命といえるでしょう。
鉄筋コンクリート造の法定耐用年数は47年ですが、物理的寿命は100年を超えることも珍しくありません。
経済的耐用年数
経済的耐用年数とは、不動産としての価値がなくなるまでの年数です。必要な修繕費用なども加味したうえで判断されます。
例えば、物理的耐用年数を迎えていなくても、再開発で取り壊されるケースがあります。この場合、取り壊しによる再開発のほうが経済的にメリットがあると判断されていることから、経済的耐用年数を迎えたといえるでしょう。
マンションの平均寿命
マンションの耐用年数の種類は「法定耐用年数」「物理的耐用年数」「経済的耐用年数」の3つがあることがわかりました。それでは、実際のマンションの平均寿命はどのくらいなのでしょうか。
国土交通省によると、鉄筋コンクリート造の建物の平均寿命は68年です。この数値は平均のため、68年よりも長命だった建物もあれば、短命だった建物もあります。また、必ずしも「物理的耐用年数を迎えたから取り壊した」というわけではありません。
鉄筋コンクリート造のマンションの場合、メンテナンスを適切に行なえば、100年以上は維持可能です。外装仕上げにより150年程度まで延命できるとする研究結果もあります。
マンションの寿命を決める要素
鉄筋コンクリート造の建物は、メンテナンスを適切に行なえば100年以上維持できるにもかかわらず、実際には短命で取り壊される建物も少なくありません。この章では、マンションの寿命を決める要素について解説します。
耐震基準
耐震基準の改正が行なわれたのは1981年と2000年です。1981年の改正より前の耐震基準は「旧耐震基準」、1981年の改正以降は「新耐震基準」、2000年の改正以降は「新・新耐震基準(2000年基準)」と呼ばれています。
このなかでも、旧耐震基準は震度5程度の地震で建物が倒壊しないことが基準だったため、震度6強~7程度の地震では倒壊するおそれがあります。安全性に問題のある旧耐震基準では買い手がつきにくいため、取り壊しを選択するマンションもあるでしょう。
旧耐震基準でも、耐震補強工事による延命は可能ですが、耐震補強工事をしても新耐震基準と同等にできるわけではなく、一定の効果にとどまります。新たな柱やフレームなどにより外観などが変わるため、住人の賛成を得にくい点もデメリットです。
配管
マンション内の配管も寿命に大きな影響を与えます。配管の寿命は建物よりも短く30~40年のため、取り替えなどを適切に行なう必要があります。
しかし、高度成長期に建てられたマンションのなかには、配管がコンクリートの中に埋め込まれているケースがあり、寿命を迎えても交換できません。そのため、配管に不具合が発生すると建て替えざるを得なくなるでしょう。
コンクリート
コンクリートもマンションの寿命に影響を与える要因です。コンクリートは本来強アルカリ性ですが、経年劣化により中性化が進むと、コンクリート内部の鉄筋がさびやすくなります。鉄筋がさびると、膨張によりコンクリートにひび割れができ、さらに鉄筋の腐食が進む……という悪循環を招きます。
また、高度成長期に建てられたマンションには、「シャブコン」と呼ばれる質の悪いコンクリートが使用されているケースもあるのです。シャブコンが使われていると、強度が下がるほか、ひび割れも発生しやすくなります。
管理体制
マンションの寿命を決める要素として、管理体制も大切です。定期的に建物をメンテナンスするには、長期的な計画や積立が欠かせません。しかし、マンションによっては管理組合の体制が不十分で、長期修繕計画が立てられていなかったり、修繕費が十分に確保できていなかったりすることがあります。
寿命を迎えたマンションはどうなる?
マンションが寿命を迎えた場合、その対応にはどのような選択肢があるのでしょうか。ここでは「建て替える」「売却する」「そのまま住み続ける」の3つを考えてみましょう。
建て替える
マンションを建て替える場合は、現在の住人である区分所有者が建て替え費用をまかなう必要があります。新築のときから住んでいる人は、建て替え時にはすでに高齢になっているケースが多く、建て替え費用を新たに負担したくない人も少なくありません。建て替えには区分所有者の4/5以上の賛成が必要となるため、実現は難しいのが現状です。
区分所有者の負担を軽くするには、建て替え前よりも住戸数を増やして販売することなどが考えられます。ただし、立地などの条件がそろっていないと、住戸数を増やしても買い手がつかない事態もあり得るでしょう。
売却する
建て替えができない場合は業者に売却して、売却で得られた利益で新たな住居へ引越しする方法もあります。寿命を迎えたマンションを売却する場合は、売却先の業者がマンションを取り壊して、土地を新たに利用します。売却した利益は区分所有者に分配されますが、解体費用が差し引かれるため、十分な利益は期待できません。
また、売却も建て替えと同様に、区分所有者の4/5以上の賛成が必要ですし、立地条件が良くなければ思うような価格での売却はできないでしょう。
そのまま住み続ける
建て替えも売却もできない場合は、マンションにそのまま住み続ける選択肢もあるにはあります。しかし、寿命を迎えているマンションは維持管理が困難で、「限界マンション」となる可能性が高いでしょう。限界マンションになれば、治安が悪化するなどデメリットしかありません。
寿命が長いマンションを見分けるには
寿命が長いマンションと短いマンションはどこが異なるのでしょうか?ここでは寿命が長いマンションを見分けるポイントを解説します。
修繕の状況を確認する
寿命が長いマンションはメンテナンスが適切に行なわれているため、過去の大規模修繕履歴や、立地に応じた長期修繕計画が立てられているかをチェックしましょう。修繕履歴や修繕計画は、不動産仲介業者に依頼すれば確認できます。
また、メンテナンスを適切に行なうには修繕費用の確保も重要です。修繕積立金を滞納している人が多くないかもチェックしましょう。
マンションの設備を確認する
適切なメンテナンスが行なわれていないマンションは、外壁のひび割れや塗装はがれ、ベランダや階段の手すりなどにさびが目立つなど、何らかの問題が発生していることが少なくありません。特にひび割れは、コンクリートや鉄筋の劣化だけでなく、雨漏りの原因にもなります。設備を目視して、問題点がないかを確認しましょう。
また、廊下やゴミ捨て場の清掃状況のほか、駐輪場の整理整頓状況なども確認すると、マンションに対する住人の管理意識を把握できます。細かなところにも管理が行き届いている物件であれば、建物の維持管理もしっかり行なえている可能性が高いでしょう。
住宅性能評価書を確認する
住宅性能評価書とは、第三者評価機関が全国共通ルールに基づいて、住宅の性能を公平な立場で評価した書面です。建物の耐震性能のほか、柱や土台などの耐久性などが数値で示されているため、専門知識がない消費者でも、住宅性能評価書を確認することで優良な建物を選びやすくなります。
例えば、建物の耐震性能を示す耐震等級は1~3で定められています。耐震等級1は建築基準法で定められた最低限の耐震性能を満たす水準、耐震等級3は等級1の1.5倍の耐震性能を満たす水準です。
また、柱や土台などの耐久性を示す劣化対策等級も、1~3で定められています。等級1は建築基準法に定められた最低限の劣化対策が講じられているにとどまり、等級3は約75~90年の耐久性が見込まれる対策が講じられています。
まとめ
マンションの耐用年数の種類は「法定耐用年数」「物理的耐用年数」「経済的耐用年数」の3つがあります。マンションの法定耐用年数は47年ですが、47年以上経過しても住めなくなるわけではありません。実際のマンションの平均寿命は68年で、適切なメンテナンスを行なえば100年以上の寿命があります。
マンションの寿命を左右する要素は、耐震基準や配管、コンクリートなどです。寿命を迎えたマンションは建て替えや売却などの措置が必要ですが、実現できず限界マンションになるケースもあります。
マンションへの投資を考えているのであれば、修繕状況やマンションの設備、住宅性能評価書などを確認して、寿命の長いマンションを選びましょう。
■監修者
氏名:太田 照明
保有資格:損害保険トータルプランナー、生命保険協会認定FP、CFP、1級FP技能士
主なキャリア:大学を卒業後、自動車と外食産業の営業を経験し、その後保険業界へ。