キャピタルゲインとは?インカムゲインとの違いと税金について解説
2024年04月04日
これから投資を始める方のなかには、キャピタルゲインとインカムゲインという言葉を初めて聞く方も少なくないでしょう。キャピタルゲインとインカムゲインは利益の種類であり、仕組みや対象物、損失に対するリスクが異なります。
この記事では、キャピタルゲインとインカムゲインとの違い、キャピタルゲインのメリットとデメリット、キャピタルゲインにおける税金について解説します。
キャピタルゲインとは
キャピタルゲインとは、保有している資産の売却によって獲得できる売買差益のことです。
例えば、50万円で購入した株式を60万円になったタイミングで売却した場合、差額である10万円がキャピタルゲインになります。
キャピタルゲインは資産を高く売却して利益を得る方法のため、「値上がり益」や「譲渡所得」と呼ばれることもあります。なお、資産の売却によって出た損失については「キャピタルロス」といいます。
また、キャピタルゲインは利益に該当するため課税対象となります。
キャピタルゲインとインカムゲインの違い
インカムゲインの概要を踏まえ、キャピタルゲインとの違いにつて解説します。
インカムゲインとは
インカムゲインとは、資産の保有により継続的かつ安定的に獲得できる収益のことです。インカムゲインに該当する収益には、株式投資の配当金や株主優待、投資信託の普通分配金、銀行預金や債券の利息、不動産投資の家賃収入などが挙げられます。
例えば、1株あたり20円の配当金がある株式を1,000株保有している場合、「20×1,000=2万円」のインカムゲインを獲得することが可能です。
なお、キャピタルゲインと同様に、インカムゲインに対しても税金がかかります。配当金・普通分配金・利子に対しては20.315%が課税され、総合課税となる不動産の家賃収入には、ほかの所得と合算した金額に対して課税されます。
前述したように、売却で損をした場合にはキャピタルロスが発生しますが、インカムゲインは所有するだけで収益が得られるため、「インカムロス」という概念が存在しません。
ただし、インカムゲインを得たとしても、売却時にキャピタルロスが発生した場合には最終的にマイナスになるおそれがあります。
キャピタルゲインとインカムゲインの違い
キャピタルゲインは売却で得られる利益であるのに対し、インカムゲインは保有中に得られる利益という点が異なります。さらに、キャピタルゲインとインカムゲインでは、以下のように利益を得る対象物も異なります。
手法 |
対象物 |
キャピタルゲイン |
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インカムゲイン |
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預金・債券とソーシャルレンディングなどを除き、ほとんどの対象物ではキャピタルゲインとインカムゲインの両方を得られます。
キャピタルゲインは、短期間で大きな利益を狙うことが可能です。社会情勢の急激な変化によって価格が高騰した場合、投資から数日で利益を得られることも少なくありません。基本的に値上がり益を狙うため、少ない元手でも利益を大きく増やせる収益性の高さもキャピタルゲインの特徴です。
ただし、キャピタルゲインを得られる対象物は、株式やFX投資などの値動きが大きなものです。思ったとおりに値上がりするとは限らないうえに、値動きが大きいほど損失を受けるリスクも大きくなります。
一方、資産の保有により収益を得るインカムゲインでは、短期間で大きな利益を狙うことは難しいものの、継続的に安定した利益が得られるため、損失リスクを抑えられます。
キャピタルゲインのメリットとデメリット
キャピタルゲインを狙うメリットとデメリットには、以下のものが挙げられます。
キャピタルゲインのメリット
キャピタルゲインのメリットは、インカムゲインと比べて大きな利益を得られることです。価格が安いタイミングで資産を取得し、値上がりしたタイミングで売却すれば大きな利益を得られます。
前述のとおり、値動きが大きい株式など、投資の種類によっては短期間で資産を大きく増やすことも可能です。特に、株価は元手の数倍に値上がるケースもあるため、少ない元手であっても利益が増えるのはキャピタルゲインのメリットといえます。
キャピタルゲインのデメリット
キャピタルゲインを得られるかどうかは、資産の売却が確定した時点で決定します。含み益がある状態でも価格が変化する可能性があり、利益が確定するまで安心はできません。
また、対象物の売却で資産を大きく増やせる反面、購入する商品や売却のタイミングを誤ると損失が大きくなることもあります。思ったほど利益が伸びない、希望の価格までの値上がりに時間がかかるなど、収益性が不透明な点もキャピタルゲインのデメリットです。
経済や自然災害などの影響で、株式をはじめとする対象物は大幅に値下がりする可能性があります。ハイリターンが基本のキャピタルゲインでは、値下がりの幅が大きいと元本割れを起こすリスクがあるのです。
キャピタルゲインを得るには、売却タイミングの見極めや損失を最小限に抑える損切りなど、ある程度の知識と判断力が求められます。
キャピタルゲインの対象物と税金
キャピタルゲインの利益にかかる税金は、資産の種類によって異なります。ここでは、3種類の対象物における税金の種類、税率について解説します。
不動産投資
不動産投資におけるキャピタルゲインとは、不動産の売却(譲渡)で得た利益のことです。不動産の売却益は「譲渡所得」といい、譲渡所得税として所得税と住民税が課されます。
譲渡所得税の税率は不動産の所有期間によって異なり、所有期間が5年以下では「短期譲渡所得」、5年超では「長期譲渡所得」に該当します。
例えば、不動産の所有から6回目の正月を迎えると長期譲渡所得となり、その場合の税率は20.315%(所得税15.315%、住民税5%)です。一方、6回目の正月を迎えていない場合は短期譲渡所得となり、税率は39.63%(所得税30.63%、住民税9%)になります。
短期譲渡所得は税率が高く設定されているため、早期に不動産を売却すると税金が高くなることに注意が必要です。
仮想通貨(暗号資産)
仮想通貨の利益は「売却価格-購入価格-手数料=利益」で求めることが可能です。
仮想通貨で得たキャピタルゲインは、雑所得に分類されます。
雑所得には所得税と住民税が課されますが、仮想通貨の利益に対してはほかの所得などとの合計金額に応じて税率が決まります。
所得額が大きいほど税率が高くなり、納める税金も高額になります。最高でおよそ55%(住民税含む)にまで達するため、税金のことも考慮して取引しなければなりません。
株式投資・投資信託・外国為替証拠金取引(FX)
株式投資・投資信託・FX取引のキャピタルゲインに対しては、所得税と住民税が課されます。
株式や投資信託では仮想通貨と異なり、ほかの所得と合算しない「申告分離課税」が適用されます。そのため、利益に対する税率は20.315%(所得税15.315%、住民税5%)と、一律の額になっています。
ただし、ストックオプションで獲得したキャピタルゲインについては、総合課税が適用される場合があるので注意が必要です。
キャピタルゲインの確定申告は口座の種類によって異なる
株式や投資信託でキャピタルゲインを得た場合、基本的に確定申告をしなければなりません。ただし、証券会社で利用する口座の種類によっては、申告が不要になります。
次に、証券会社の口座の種類、確定申告の必要性について解説します。
一般口座
一般口座で株式を取引する場合、給与所得以外で20万円を超える所得があった際には確定申告が必要です。後述する特定口座とNISA口座は証券会社が管理しますが、一般口座は投資家自身が損益を計算して確定申告をする必要があります。
確定申告の申請期間は、例年2月16日~3月15日です。資産の種類によって必要書類が異なるため、早めに確認準備をしておくと安心でしょう。
特定口座(源泉徴収あり)
「源泉徴収あり」の特定口座の場合、確定申告は原則不要です。株式の売買益に対する税金を証券会社が計算し、特定口座内で源泉徴収する仕組みであるためです。
なお、特定口座では「源泉徴収なし」を選択することも可能であり、源泉徴収なしとした場合には、一般口座と同様に確定申告をする必要があります。
また、株式の取引で損失が出た場合には、ほかの利益と相殺して所得税を軽減できる損益通算を利用できます。損益通算を行なっても損失が出るときは、最長3年間にわたって繰越控除することも可能です。
特定口座間での損益通算、または過去の損失の繰越控除を受ける場合、確定申告をしたほうが所得税を節税できる可能性があります。
NISA口座
NISA口座とは、NISA制度が利用可能な口座のことです。NISA口座で上場株式の買付や積立投資を行なうと、売却益や配当金などの収益が非課税になります。通常は20.315%が課税されるところ、NISA口座を通すだけで非課税になるのが大きな特徴です。
なお、2024年からスタートの「新NISA」では、つみたて投資枠では年間120万円まで、成長投資枠では年間240万円まで投資ができ、得られた利益は非課税になります。投資で収益を得ても税金がかからないため、NISA口座では原則的に確定申告が不要です。
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まとめ
キャピタルゲインは短期間で大きな収益が見込める半面、急激な値動きにより損失を受けるリスクが大きい性質があります。一方、インカムゲインは大きな収益を狙いにくいものの、継続的な安定収益が見込めます。
どちらが良い、悪いというものではなく、自分に合った投資スタイルを見極めることが大切です。
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■監修者
名前:齋藤 彩(さいとう あや)
所有資格:AFP(Affiliated Financial Planner)、薬剤師免許、1級FP技能士
おもなキャリア:
急性期総合病院において薬剤師として勤める中、がん患者さんから「治療費が高くてこれ以上治療を継続できない」と相談を受けたことを機にお金の勉強を開始。ひとりの人を健康とお金の両面からサポートすることを目標にファイナンシャルプランナーとなることを決意。現在は個人の相談業務・執筆活動を行っている。