節税になる「控除」とは?仕組みや種類・手続方法について解説

2024年04月03日

所得に対しては所得税などの税金がかかりますが、所得金額すべてに対して課税されるのではなく、一定の金額を所得や税金から差し引く「控除」という制度があります。控除という制度を利用することで、税金の負担を抑えることが可能です。

控除を受けるには、確定申告や年末調整で手続きをする必要があります。
控除にはさまざまな種類があるため、どのような控除を受けられるのか仕組みや内容、手続方法などを知り、節税に役立てましょう。

税金における控除の意味と仕組み

控除とは、ある金額から一定の金額を差し引くことを意味する言葉です。税金においては、条件に応じて一定の金額を差し引くことにより、税負担を軽減させることをいいます。

控除は、税負担を公平にするために設けられている仕組みです。

所得が同じであっても、人によって扶養しなければならない人数が多かったり、高額の医療費を支払ったりなどの事情があり、生活にかかる費用は異なります。それにもかかわらず、税金が同じように課税されては、健康で文化的な生活を送れなくなってしまうおそれもあるでしょう。

そこで、条件に応じて収入から一定金額を差し引くことで、個々の事情を考慮して税負担を抑えるのが控除の目的です。

控除には、所得金額から控除額を差し引く所得控除と、算出した所得税から控除額を差し引く税額控除の2種類があります。種類別に、控除内容や適用条件を解説します。

所得控除の種類

所得控除は、収入から必要経費(給与所得者の場合は給与所得控除)を引いた所得額から差し引くことのできる金額です。15種類の所得控除があり、人的控除と物的控除(その他の控除)に分けられます。

人的控除

人的控除は本人や家族の事情に配慮したもので、以下の8種類があります。

控除区分

控除対象となるおもな要件

控除金額(所得税)

基礎控除

納税者本人の合計所得金額2,500万円未満 

納税者本人の所得金額により最大48万円

配偶者控除

納税者本人の合計所得金額が1,000万円以下で、配偶者の合計所得金額が48万円以下

納税者本人の所得金額により、一般の控除対象配偶者は最大38万円、老人控除対象配偶者は最大48万円(※1)

配偶者特別控除

納税者本人の合計所得金額が1,000万円以下で、配偶者の合計所得金額が48万超133万円以下

納税者本人の所得金額により、最大48万円

扶養控除

16歳以上の親族を扶養

扶養対象扶養親族38万円、特定扶養親族63万円、同居老親等以外48万円、同居老親等58万円(※2)

障害者控除

本人や配偶者、扶養親族が障害者の場合

障害者27万円、特別障害者40万円、同居特別障害者75万円

ひとり親控除

配偶者がおらず、同一生計の子がいるひとり親

(合計所得500万円以下)

35万円

寡婦控除

離婚・死別後婚姻をしておらず、扶養親族がいる寡婦で、ひとり親に該当しない場合

(合計所得500万円以下)

27万円

勤労学生控除

納税者本人の合計所得金額75万円以下で、働いている学生

27万円

※1 その年の12月31日現在の年齢が70歳以上の場合は老人控除対象配偶者
※2 特定扶養親族:19歳以上23歳未満、老人:70歳以上(12月31日時点)

物的控除(その他の控除)

物的控除(その他の控除)とは、社会政策的な配慮に基づく控除です。以下の7種類があります。

控除区分

控除対象

控除金額(所得税)

医療費控除

一定以上の医療費を支払ったとき

(支払済医療費-保険金などによる補填額)-10万円(総所所得金額等が200万円未満の人は総所得金額等×5%)

セルフメディケーション税制:1万2,000円を超える部分(最大8万8,000円)

社会保険料控除

健康保険料(税)や国民年金保険料の支払い

全額

小規模企業共済等掛金控除

小規模企業共済や確定拠出年金の掛金など

全額

生命保険料控除

生命保険料、介護医療保険料、個人年金保険料を支払ったとき

最大12万円

地震保険料控除

地震保険料を支払ったとき

最大5万円

寄附金控除

ふるさと納税など、所定の寄附をしたとき

「寄附金合計額」と「総所得金額×40%」の少ないほうの額-2,000円

雑損控除

災害や盗難、横領で資産に損害を受けたとき

「(損害金額+災害に関連する支出額-保険金の額)-(総所得金額等)×10%」と「災害に関連する支出額-5万円」の多いほうの額

税額控除の種類

税額控除は所得税額から差し引ける控除で、社会政策的な目的や二重課税防止のために設けられた制度です。個人のほか事業者を対象としたものなど多数の種類があるため、ここではおもに個人の利用機会が多い控除を紹介します。

控除区分

対象

控除金額

(特定増改築等)住宅借入金等特別控除

住宅ローンを使用して要件を満たす住宅の新築や取得、増改築などをした場合

年末時点での住宅ローン残高(上限2,000万円)の0.7%(最長10年間)(※1)

配当控除

総合課税の適用を受ける配当金や分配金

(国内に本店または事業所がある法人から支払われたもの)

  1. +②(※2)
  1. 剰余金の配当にかかる配当所得×10%
  2. 投資信託の分配金にかかる配当所得×5%

外貨建等証券投資信託(特定外貨建等証券投資信託を除く)の収益の分配にかかる配当所得の場合:2.5%

外国税額控除

国内に居住する人が外国所得税を支払ったとき

所得税額×国外所得金額÷所得総額を上限に支払った外国所得税額

政党等寄附金特別控除

政党や政治資金団体に一定の寄附をしたとき

(寄附金額-2,000円)×30%

※1 令和6年1月1日から令和7年12月31日までの場合
※2 その年の課税総所得金額等が1,000万円以下の場合

控除を受けるには?

控除は自動的に適用されるものではなく、原則確定申告が必要です。給与所得者は会社での年末調整で手続きできる控除もありますが、確定申告が必須の控除もあります。
年末調整や確定申告の流れを簡単に紹介します。

年末調整で手続きする

会社員などの給与所得者の場合、人的控除や生命保険料控除など一部の控除は、会社の年末調整時に控除の適用が可能です。「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」や控除に必要な書類および証明書を提出します。

申告書の提出期限は、その年の最後に給与の支払を受ける日の前日までですが、一般的には10月下旬から12月上旬頃に提出を求められる会社が多いでしょう。

ただし、医療費控除や寄附金控除(ふるさと納税のワンストップ特例を除く)、雑損控除、住宅ローン控除の初回控除などの年末調整対象外の控除は年末調整では対応できません。確定申告が必要になります。

確定申告をする

自営業など会社員以外の方、会社員でも年末調整の対象となっていない控除を受ける場合や本業のほかに一定の所得がある場合などは、確定申告が必要です。

会社ですでに年末調整をしていても、「控除の申告を忘れてしまった」「提出後に家族状況に変化があった」などの場合も確定申告で対応します。

確定申告は、翌年の3月15日までに行ないます。申告書はオンラインで作成すると簡単です。

控除や税制優遇を活用した資産運用方法

税金の負担を少しでも抑えるには、利用できる控除を確実に適用させるだけでなく、税制優遇などを積極的に活用することもポイントです。ここからは、控除や税制優遇などを活用した資産運用方法を紹介します。

NISA

NISA(少額投資非課税制度)は、NISA口座内での株式や投資信託の取引において生じた配当や譲渡益について非課税とする制度です。利益に対してかかる所得税・住民税・復興特別所得税合わせて20.315%の税金がかからなくなります。

2024年より制度拡充された新NISAでは、つみたて投資枠と成長投資枠の併用が可能となり、年間最大360万円・生涯1,800万円の枠内で非課税投資が可能となりました。非課税保有期間も無期限で売却により翌年以降に枠が復活するなど、旧制度よりも高い節税効果を目指せるようになっています。

iDeCo

iDeCo(個人型確定拠出年金)は、掛金が小規模企業共済等掛金控除の対象となり課税所得額を下げられるだけではありません。運用益は非課税で再投資が可能で、受取時にも受取方法により公的年金等控除・退職所得控除の税制優遇が設けられています。

会社員の場合は企業型に加入している人も少なくありませんが、制度改正により企業型加入者もiDeCoに加入しやすくなりました。iDeCoは原則60歳になるまで資金を動かせないことがデメリットですが、上手に活用することで税金の負担を抑えられるでしょう。

不動産投資

不動産投資は、所有する不動産を賃貸し家賃収入を得る投資方法になります。

不動産投資が節税に役立つのは、減価償却費の計上により不動産所得が帳簿上赤字になれば、課税所得が減り所得税や住民税を抑えられるからです。給与所得や事業所得など対象となるほかの所得から損失を控除できる、損益通算の仕組みを活用しています。

減価償却は、経年劣化する資産の取得費用を、耐用年数が経過するまで分割して経費計上できる仕組みです。不動産では建物や設備の減価償却が可能で金額も高くなるため、実際は黒字でも、帳簿上赤字になることは少なくありません。

また、資産を不動産で所有すれば現金よりも相続税評価額が低くなるため、相続税や贈与税の節税対策としても有効です。

※組合事業の場合は損益通算できませんので、ご注意ください

まとめ

税金の負担を抑えるには、まず利用できる控除を活用することが重要です。控除の種類は多岐にわたるため、どのような場合に控除を受けられるのかを知っておきましょう。

節税対策として不動産投資が注目されていますが、物件を購入する必要があり、投資規模が大きくなります。不動産投資に興味を持った方は、まずは少額から取り組める不動産投資クラウドファンディングから、不動産投資を始めてみてはいかがでしょうか。

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■監修者

名前:齋藤 彩(さいとう あや)
所有資格:AFP(Affiliated Financial Planner)、薬剤師免許、1級FP技能士

おもなキャリア:
急性期総合病院において薬剤師として勤める中、がん患者さんから「治療費が高くてこれ以上治療を継続できない」と相談を受けたことを機にお金の勉強を開始。ひとりの人を健康とお金の両面からサポートすることを目標にファイナンシャルプランナーとなることを決意。現在は個人の相談業務・執筆活動を行っている。