新耐震基準はいつから?旧耐震基準・2000年基準、投資のポイントも解説

2024年04月03日

不動産投資用の物件を探すにあたり「新耐震基準の物件を選ぶべき」という話を聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。1981年6月の建築基準法改正以降運用されている新耐震基準は、それまでの旧耐震基準に比べて厳しい基準となっています。

この記事では新旧耐震基準、現行の2000年基準の内容を詳しく解説。新耐震物件かどうかを確かめる方法や、投資用には新耐震物件を選ぶべきとされる理由についても紹介します。

建物が最低限クリアすべき耐震基準とは?

耐震基準とは建築基準法などの関連法規で定められた、建物を建てるにあたって最低限満たすべきとされる地震への耐性基準をいいます。

建物の耐震性能を示す指標には「耐震等級」もあります。耐震等級は「住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)」に基づいて定められた「住宅性能表示制度」における等級です。

耐震等級は1~3の3段階が設けられており、数字が大きくなるほど高い耐震性を有していることを表します。耐震等級1が建築基準法レベルといわれ、耐震基準と同等とされます。

耐震基準は人命を守る最低限の基準なのに対し、耐震等級はそれに加えて建物自体も守ることを目的とした基準である点に違いがあるといえるでしょう。

新耐震基準と旧耐震基準の基本を知る

建物が最低限クリアすべき耐震性を表す耐震基準には、大きく「新耐震基準」と「旧耐震基準」があります。それぞれがどのような基準なのか解説します。

建築基準法制定で定められた旧耐震基準

1950年の建築基準法制定時に定められたのが、現在でいうところの「旧耐震基準」です。1948年に発生し、都市部に甚大な被害をもたらした「福井地震」を踏まえて制定されました。

「旧耐震基準」では、震度5程度の地震でも倒壊せず、多少の破損があったとしても補修すれば住み続けられることを基準とするよう謳っています。

そのため、当時は、震度6以上の地震の発生はあまり考慮されておらず、大規模地震に対する耐力も想定されていませんでした。

新耐震基準はいつから?制定の経緯

旧耐震基準制定後、建築基準法の改正で新耐震基準がスタートしたのは1981年6月1日のことです。

旧耐震基準のきっかけが福井地震だったのと同じように、新耐震基準制定をもたらしたのも1978年6月12日に発生した「宮城県沖地震」でした。この地震は「都市型地震の典型」といわれ、ブロック塀倒壊による死傷者が多く甚大な被害が発生しました。

宮城県沖地震は最大震度5であったものの、死者28名、負傷者1,325人を出す事態となり、大規模地震への対応の必要性が浮き彫りになります。

大規模地震も想定した新耐震基準

宮城県沖地震をきっかけに1981年6月1日から運用開始となった新耐震基準。旧耐震基準では「震度5程度の地震の際に倒壊せず、多少の破損があったとしても補修すれば住み続けられる程度」とされていた耐性について、「震度5程度の地震の際、軽度なひび割れ程度に抑える」へと基準が見直されました。

新耐震基準ではさらに、旧耐震基準で想定されていなかった大規模地震に対する基準も設定され「震度6~7レベルの大規模地震でも倒壊しない強度を求める」と、より厳しい基準となりました。

震度5の地震でも多くの被害を出してしまった宮城県沖地震を教訓に、大規模地震でも人命を守ることを目的として見直されたのです。

新耐震基準・旧耐震基準・2000年基準の違い

新耐震基準は2000年の法改正で内容が見直されています。見直し後の耐震基準は「2000年基準」「新・新耐震基準」などと呼ばれ、2023年時点で現行の耐震基準です。

3つの基準を比較するとどのような違いがあるのか、詳しく見ていきましょう。

耐震チェックが厳格化された新耐震基準

新耐震基準と旧耐震基準で大きく異なるのは、二段階で耐震チェックが行なわれるようになった点です。新耐震基準の耐震チェックは一次設計・二次設計からなります。

一次設計とは、震度5程度の中地震で構造部材に損傷が発生しないよう設計されていることを確認するための計算法です。長期にわたる負荷や中地震による外力が部材にかかったとき、部材の内部からも力(応力)が生じます。応力が限られた箇所に集中してしまうと、部材に変形や亀裂などが生じてしまうため、それぞれの部材が一定の応力に耐え得るかどうかの確認が必要です。耐震基準ではその応力の基準が設けられ、一次設計において基準を満たしているかどうかを確認することになります。このため一次設計は許容応力度計算とも呼ばれます。

二次設計は、大地震でも倒壊しない設計になっているか確認するための計算法で、保有水平耐力計算などが行なわれます。保有水平耐力とは、地震などによる横からの力(水平力)に対して、建物が耐えられる力のことです。二次設計ではこの保有水平耐力が基準にのっとっているかを確認します。ほかに層間変形角(階の高さに対して地震でどれだけ横に変形するかの割合)などが基準に沿っているかも大切なチェック項目です。

新耐震基準では一次設計により中規模地震に備え、二次設計により大地震にも耐えうる構造を求めるのです。

さらに規制強化された2000年基準

現行の耐震基準は1995年の阪神・淡路大震災を機に改正された「2000年基準」です。阪神・淡路大震災では木造住宅の倒壊が相次ぎました。

こうしたことから2000年基準では、耐力壁の配置のバランスや床の剛性(加えた力による変形のしづらさ)、接合部に使う金物に関する規定が設けられています。また、地盤調査の実施、調査結果に沿った基礎構造にすることの義務化も追加されており、木造住宅に関する規定を中心として大幅に内容が強化されています。

そのため、木造の投資用物件を検討する際は、新耐震基準だけでなく2000年基準を満たしているかもチェックしましょう。

新耐震基準かどうかの確認方法

検討中の物件が新耐震基準を満たすかどうかは、どのように確認すればよいのでしょうか。おもな2つの方法を紹介します。

確認通知書の日付を確認する

物件が新耐震基準を満たしているかを確認する最も基本的な方法は「建築確認日が1981年6月以降」であると確かめることです。建築確認日が1981年6月以降であれば新耐震基準、1981年5月以前なら旧耐震基準が適用されています。

ここでポイントとなるのが、築年月や竣工日ではなく建築確認日を見なければならない点です。これを調べるには、現在の物件所有者が持つ「確認通知書」の確認年月日をチェックすることになります。

確認通知書を紛失している場合には「台帳記載事項証明書」または「建築計画概要書」で確認可能です。いずれも建築確認申請を実施した自治体が管理しているため、通常は役所に申請すれば閲覧・発行できます。

耐震基準適合証明書を取得する

誤解しがちですが、旧耐震物件だからといって必ずしも耐震性が不足しているわけではありません。1981年5月以前に建築確認を受けた建物のなかには、地震に強い構造で建てられており、新耐震基準レベルの耐震性を有しているものもあります。

この際、新耐震基準を満たすことを証明するのが「耐震基準適合証明書」です。耐震基準適合証明書の発行を希望する場合、まず建築士や国土交通省指定の確認検査機関などの専門家に依頼し、耐震診断を受ける必要があります。

診断の結果、新耐震基準を満たしていると認められれば証明書が取得できます。耐震基準適合証明書の取得には5~10万円程度かかるのが一般的です。

不動産投資は新耐震物件を選ぶべきとされる3つの理由

投資用物件を選ぶ際によくいわれるのが「新耐震物件を選ぶべき」という意見です。なぜ不動産投資には新耐震物件が向いているとされるのでしょうか。3つの理由を紹介します。

(1)地震による倒壊リスクが低いから

1つ目の理由は、大地震でも倒壊しないレベルの耐震性を有するとされるからです。新耐震物件は中規模地震までしか想定されていない旧耐震基準で建てられた物件に比べ、地震による被害を受けにくいと考えられます。

地震によって建物が倒壊してしまうと賃料収入が入らなくなるうえに、建て替えや修復に大きな費用がかかる可能性があります。地震保険に加入している場合でも、生じた損害をすべて補償してもらえるわけではありません。新耐震物件ならこうしたリスクを低減できます。

なお、地震をはじめとした自然災害で入居者に損害が生じたとしても、基本的にオーナーの賠償責任はありません。しかし、もとから設備に不備があり、災害によって損害が生じたと認められれば、オーナーに損害賠償責任が生じるリスクもあります。一定の耐震性が証明されている新耐震物件はこうしたリスクも比較的小さいといえるでしょう。

また、耐震性が確保されていると判断されるので売却しやすい点を考えても、新耐震物件を選ぶのが得策です。

(2)メンテナンスや保険にかかる費用が安いから

2つ目の理由は、新耐震物件のほうが旧耐震物件に比べてメンテナンスコストを低く抑えられるからです。

旧耐震物件は築古物件のため、たとえ物件価格が安かったとしてもメンテナンスコストが高くなります。加えて、耐震性を証明したい場合には、耐震診断と耐震基準適合証明書が必要となります。耐震性不足と診断されれば、耐震補強に莫大なコストがかかるかもしれません。

新耐震物件は、火災保険や地震保険の保険料が旧耐震物件に比べて安くなるのもポイントです。

(3)ローン審査が通りやすいから

3つ目の理由は、新耐震物件は旧耐震物件に比べて不動産投資ローンの審査が通りやすい傾向にあるからです。

金融機関は、融資対象物件の収益性や法定耐用期間に対する残存年数などをベースに融資の可否や条件を決定します。築古の旧耐震物件は収益性・築古ともに低く評価される可能性があり、ローンが組めないこともあるでしょう。新耐震物件なら一定の評価を得られるため、ローンを組める可能性が高まります。

旧耐震物件でも条件次第で借りられるローンはありますが、融資の活用を前提とするなら新耐震物件が有利です。

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上記で紹介したように、不動産投資では物件の耐震基準も確認する必要があります。もちろん新耐震基準を満たす物件が安心ですが、好立地・割安など旧耐震物件にも魅力的な投資案件は存在します。

不動産投資クラウドファンディング「COZUCHI」には、新耐震・旧耐震どちらのファンドもありますが、プロがその点も踏まえて物件の持つリスクや収益性を吟味しています。そのため、旧耐震物件への投資案件であっても元本毀損はこれまでにありません。(2024年2月末時点)

「COZUCHI」は新耐震・旧耐震を問わず、魅力的な物件に1万円の少額から投資できます。まだ不動産投資をしたことがないという方も、ぜひCOZUCHIで投資をスタートしてみてはいかがでしょうか。

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まとめ

耐震基準には1981年5月まで運用されていた旧耐震基準、1981年6月以降に運用されている新耐震基準があります。現行の耐震基準は2000年に制定された「2000年基準」であり、それ以前の2つよりも基準が厳しくなっています。

築古物件でも新耐震レベルの耐震性を有している場合がありますが、証明するには耐震基準適合証明書の取得が必要です。耐震性の高さ・メンテナンスコストの安さ・ローン審査の通りやすさから考えると、不動産投資には新耐震物件がおすすめです。

■監修者

名前:齋藤 彩(さいとう あや)
所有資格:AFP(Affiliated Financial Planner)、薬剤師免許、1級FP技能士

おもなキャリア:
急性期総合病院において薬剤師として勤める中、がん患者さんから「治療費が高くてこれ以上治療を継続できない」と相談を受けたことを機にお金の勉強を開始。ひとりの人を健康とお金の両面からサポートすることを目標にファイナンシャルプランナーとなることを決意。現在は個人の相談業務・執筆活動を行っている。