不動産投資で確定申告が必要なケースと必要な書類・やり方を解説

2024年04月09日

不動産投資の収入がある人にとって、確定申告をするべきか迷う人も多いのではないでしょうか。不動産投資は確定申告が必要な場合と不要な場合があり、給与所得額や所得額によって異なります。また、確定申告で青色申告をする場合は、事前の申請が必要になるため注意が必要です。

そこで今回は、不動産投資で確定申告が必要になるケースと、確定申告に必要な書類、やり方について解説します。
経費として計上できる費用や税金の計算方法も、ぜひ参考にしてみてください。

不動産投資で確定申告が必要になるケース


 
確定申告は、会社員の場合でも年間2,000万円を超える給与収入がある場合、もしくは給与所得・退職所得以外で20万円を超える所得があった場合などに必要となります。そのため、不動産投資で20万円を超える所得がある人はもちろん、不動産投資による所得が20万以下だとしても、年間2000万円を超える給与収入がある人は確定申告が必須です。

会社員の場合、給与所得分の年末調整は会社が行なってくれるため、不動産所得分のみを自分で申告するようになります。不動産所得とは、賃料収入から管理費・減価償却費などの経費を引いた利益のことで、賃料収入がそのまま不動産所得になるわけではありません。
また、確定申告には白色申告と青色申告があます。このうち、青色申告は複式簿記で手間がかかりますが、特別控除があるため節税することが可能です。

不動産投資の確定申告の流れ

不動産投資の確定申告は、必要書類をそろえたうえで書類作成を行なうとスムーズです。また、確定申告書の提出方法も複数あるため、自分に合った方法を選ぶようにしましょう。

必要書類をそろえる

不動産投資の確定申告では、さまざまな書類が必要になります。不動産関連の書類については、基本的に不動産会社や管理会社からすでに受け取っているため、あらためて取り寄せる必要はありません。保険会社から発行される保険関係の証券や領収書などの控除関係の書類、給与所得がある場合は、勤務先から発行された源泉徴収票も必要です。

なお、必要な書類については次章で詳しく紹介します。

万が一書類を紛失していた場合、再発行に時間がかかる場合もあるため、早めに確認しておくようにしましょう。また、必要書類のなかにはコピーで良いものと原本が必要なものがあるため注意が必要です。わからない場合は、管轄の税務署へ問い合わせたうえで準備をしましょう。

決算書・収支内訳書の作成

青色申告の場合は日々の取引を記した帳簿の結果を青色申告決算書として作成、白色申告の場合は収入や経費などを明記した収支内訳書を作成します。

先述したように、青色申告は特別控除があるため節税できますが、決算書は記載項目が多く複雑なため、作成には時間と手間がかかります。また、青色申告をする場合は、事前に管轄の税務署へ「青色申告承認申請書」の提出が必要です。はじめて不動産投資を行なう場合、青色申告承認申請書は、不動産の貸付け開始から2ヵ月以内に提出する必要があり、確定申告の直前に提出しても認められないため注意しましょう。

確定申告書の作成

 
不動産投資で確定申告を行なう場合、青色申告と白色申告どちらも、「確定申告書B」という申告書を使用します。給与所得と不動産取得のみの場合、確定申告書Bのなかで、第一表と第二表を作成します。第一表には収入金額や所得金額、税金の計算などを、第二表には所得の内訳や社会保険料控除、生命保険料控除などの内容を記載します。

また、この場合確定申告書は6枚つづりになっており、3枚目は本人確認書類と源泉徴収票の、4枚目は控除関係書類の添付台紙です。5・6枚目は複写で、第一表と第二表の控えとなります。

確定申告書の提出

確定申告書を作成したら、管轄の税務署に提出します。提出方法は窓口、郵送、電子申請の3種類で、好きな方法を選ぶことが可能です。確定申告書の受付は例年2月16日から3月15日までとなっているため、必ず期限内に提出しましょう。提出期限に遅れると、無申告加算税や延滞税のペナルティが発生する場合があるため注意が必要です。

なお、青色申告の電子申請では特別控除額が最高で65万円になるなどのメリットがあります。ただし、電子申請をする場合はマイナンバーカードがない人は事前申請が必要です。マイナンバーカードがある場合は、マイナンバーカードの情報を読み取るカードリーダーが必要になるため、いずれも早めに準備しておきましょう。

不動産投資の確定申告に必要な書類

不動産投資の確定申告にはいろいろな書類が必要になるため、漏れのないように注意しましょう。

不動産売買契約書

不動産の売買契約をした際に発行される契約書です。売買代金のほか、支払い時期や手段、土地・建物の住所、面積、売り主と買い主の住所、氏名などが記載されており、売買契約の際に不動産会社から渡されます。

税金の納付通知書

国や地方自治体から送付される、不動産取得税や固定資産税などの納付書です。これらの税金は経費として計上できますが、個人の住民税や所得税は経費に含まれないので注意しましょう。

借入金の返済予定表

不動産購入時にローンを組んだ場合に発行される、1年間のローン返済表です。毎月の返済額や元金、利息の内訳、借入金残高などが記載されており、「返済計画表」や「償還予定表」と呼ばれることもあります。
基本的にローン金利は経費になりますが、不動産所得が赤字の場合、土地取得分の金利については経費とならないため注意が必要です。

各種保険の証券

加入している保険会社から送付される、損害保険などの証券です。不動産投資では建物に火災保険、もしくは火災保険と地震保険をセットでかけることも多いでしょう。その年に発生した保険料は経費として計上することが可能です。

賃貸契約書

不動産の賃貸借契約を締結した際に作成する契約書です。法律で義務付けられたフォーマットはありませんが、賃貸借の目的物や契約期間、借り主および同居人、家賃債務保証業者もしくは連帯保証人などが記載されています。

賃料送金明細書

家賃の回収を業者へ委託している場合に、回収した家賃などを清算した明細書です。不動産管理会社から送付されます。

売渡精算書

不動産を購入する際に発生した登記費用などの明細で、不動産会社から送付されます。

管理費、修繕積立金などの領収証

建物のメンテナンスや、修繕のために積み立てたお金の領収書です。いずれも経費として計上することができます。不動産管理を業者に委託している場合は、管理会社から送付されます。

譲渡対価証明書

 
土地と建物の案分割合を示す書類で、不動産会社から送付されます。減価償却の算出で必要になりますが、売買契約書に記載がある場合は不要です。

源泉徴収票

給与所得がある場合に企業から発行される書類です。年間の給与額と源泉徴収した税金の額を記載しています。給与所得があると、不動産投資で赤字になった場合に、損金を給与所得と損益通算することが可能です。その計算を行なうためにも源泉徴収票が必要です。

不動産投資にかかる税金と必要経費

不動産投資にかかる税金は自分で計算することができます。計算方法や経費として計上できる項目を知っておけば、どのくらいの税金がかかるか把握できるでしょう。

不動産投資にかかる税金の計算方法

不動産投資における家賃収入で得た収益に対する税金は、他の所得と合算する「総合課税」によって算出されます。大まかには不動産投資で得た家賃収入から必要経費を差し引いた分が課税対象となるため、必要経費が大きいほど税金が安くなる仕組みです。本記事ではわかりやすくするため所得を不動産所得のみとして解説します。

まず、以下の計算式で不動産所得を算出します。

・不動産所得=収入−必要経費
※電子申請で青色申告をする場合は、特別控除としてまず不動産所得から65万円を控除して計算します。

次に、不動産所得から所得控除を差し引いて、課税所得を算出します。

・課税所得=不動産所得−所得控除

最後に、課税所得と所得税率、税額控除を計算して、所得税を算出します。

・所得税額=課税所得×所得税率−税額控除

不動産投資に関する必要経費とは

不動産投資に関する必要経費には以下のようなものがあります。

<租税公課>
土地や建物に課せられる税金で、固定資産税や都市計画税などがあります。

<修繕費>
建物の維持や管理、修繕にかかる費用です。

<減価償却費>
建物の取得費用を耐用年数に応じて計上します。

<損害保険料>
火災保険や地震保険などの保険料です。

<管理費>
入居者の募集や物件の管理をする管理会社に支払う費用です。

<交通費>
物件の内覧や不動産会社との打ち合わせ、不動産投資セミナーの参加などにかかった交通費が該当します。

<新聞、書籍などの購入費用>
不動産投資に関する情報収集を目的に購入した新聞、書籍などの費用が該当します。

これら以外にも、不動産所得を得るのに使った費用は基本的に経費として計上することができます。

まとめ

不動産投資では給与所得・退職所得以外に年間20万円を超える不動産所得が発生した場合や、年間2000万円を超える給与収入がある場合などに確定申告が必要です。

確定申告は例年2月16日から3月15日までとなっており、提出期限に遅れると、無申告加算税や延滞税のペナルティが発生する可能性があるため注意しましょう。また、不動産投資の確定申告ではいろいろな書類が必要になるため、抜けや漏れのないよう、早めに準備しておくと安心です。

※現行税制に基づくものであること。※2024年2月時点
※組合事業としての不動産所得の場合には扱いが異なる場合がございます。

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■監修者

名前:齋藤 彩(さいとう あや)
所有資格:AFP(Affiliated Financial Planner)、薬剤師免許、1級FP技能士

おもなキャリア:
急性期総合病院において薬剤師として勤める中、がん患者さんから「治療費が高くてこれ以上治療を継続できない」と相談を受けたことを機にお金の勉強を開始。ひとりの人を健康とお金の両面からサポートすることを目標にファイナンシャルプランナーとなることを決意。現在は個人の相談業務・執筆活動を行っている。