夫が亡くなったら、夫の遺族年金、妻の厚生年金、どちらを受け取れる?

2024年01月16日

年金といわれると「老後にもらえる」というイメージがありますが、一家の大黒柱が亡くなった際に残された家族がもらえる遺族年金もあります。老後にもらえる厚生年金と、大黒柱が亡くなった場合にもらえる遺族年金は併用できるのでしょうか。

本記事では、大黒柱の夫が亡くなった場合、会社員だったことがある妻は退職後、夫の遺族年金と自身の厚生年金を両方受け取れるのか、それともどちらか片方のみもらえるのか解説していきます。

なお、本記事でいう「妻の厚生年金」は、正確には「老齢厚生年金」のことを指しています。のちほど記事内で詳しく説明します。

遺族年金と厚生年金の基礎知識

公的年金には、一家の大黒柱が亡くなった際に残された遺族がもらえる「遺族年金」、老後にもらえる「老齢年金」、障害で働けなくなった際にもらえる「障害年金」と、大きく分けて3つの種類があります。このうち、今回の記事に関係する遺族年金と老齢年金について詳しく解説します。

遺族年金

遺族年金は、さらに「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」の2種類に分けられます。

・遺族基礎年金
遺族基礎年金は、国民年金に加入していた人が亡くなった場合、その人に生計を維持されていた高校生以下の子どもを持つ配偶者、または子どもが受け取れる年金です。つまり、子どものいない配偶者は遺族基礎年金を受け取ることができません。

子どもを持つ配偶者(1956年4月2日以後生まれ)がもらえる遺族基礎年金額は、79万5,000円に子の加算額を加えて求めます。

●1人目の子の加算額:22万8,700円
●2人目の子の加算額:22万8,700円
●3人目以降の子の加算額:7万6,200円

例えば、10歳と12歳の子どもを持つ配偶者が受け取れる遺族基礎年金は、79万5,000円+22万8,700円+22万8,700円=125万2,400円となります。

・遺族厚生年金
遺族厚生年金は、亡くなった人が厚生年金に加入していた場合、その人と生計をともにしていた人のなかで、最も優先順位の高い遺族がもらえます。もらえる金額は、亡くなった人の老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3が基本です。

先ほど説明したように、遺族基礎年金は子どもを持つ配偶者か子どもにしか支給されませんでしたが、遺族厚生年金は子どもがいない配偶者や父母、孫、祖父母でももらうことができます。ただし、第1優先は子どもを持つ配偶者または子どもです。対象者がいなければ優先順位第2位の子のない配偶者に支給され、子のない配偶者もいなければ第3位の父母に支給されます。第4位は孫、第5位は祖父母です。

なお、厚生年金は基礎年金に上乗せしてもらえます。つまり、遺族基礎年金を受け取れる高校生以下の子どもを持つ配偶者または子どもは、遺族基礎年金と遺族厚生年金の両方を受け取れるということです。

老齢年金

老齢年金にも、「老齢基礎年金」と「老齢厚生年金」の2種類があります。正確には「特別支給の老齢厚生年金」という種類もありますが、今回は触れません。

・老齢基礎年金
老齢基礎年金は、保険料を納付している期間と保険料が免除されている期間などを合算した受給資格期間が10年以上ある人が原則65歳になるともらえる年金です。

もらえる額は何年加入していたかによって異なりますが、20歳から60歳になるまでの40年間すべての保険料を納付していた人の場合、年間79万5,000円の年金をもらえます。

・老齢厚生年金
老齢厚生年金は、老齢基礎年金の受給対象者が厚生年金に加入していた期間がある場合に、老齢基礎年金に上乗せしてもらえる年金です。受け取れる年金額は、現役時代厚生年金に加入していた期間や受け取っていた給料の額に応じて計算されます。

厚生年金に加入できるのは、会社員や公務員、基準を満たしたパート・アルバイトなど、雇用されて働き給料を受け取っている人です。よって、会社員などは老齢基礎年金と老齢厚生年金の両方をもらえ、自営業などは老齢基礎年金のみもらえる、ということになります。

なお、本記事は夫を亡くした妻が年金を受給する想定ですから、ここでいう「妻の厚生年金」は、正しくは「妻の老齢厚生年金」のことを指しています。

夫の遺族年金と妻の厚生年金は、原則どちらかを選択する

遺族年金や老齢年金の基礎知識がおさらいできたところで、本題に入りましょう。大黒柱の夫を亡くした妻は、夫の遺族年金と自分の厚生年金を両方受け取れるのでしょうか。

結論からいうと、夫の遺族年金と妻の厚生年金は、原則1つしか受け取れません。どちらか一方を選択することになります。

そもそも公的年金は、原則1人1種類しか受け取れないと決められています。ただし例外もあり、同じ性質を持つ基礎年金と厚生年金は同時に受け取ることができます。例えば、先ほども言及したとおり、遺族基礎年金と遺族厚生年金、老齢基礎年金と老齢厚生年金はそれぞれ同時に受け取ることが可能です。

ところで、「妻が厚生年金を受け取る」ということは、妻は会社員(または公務員や条件を満たしたパート・アルバイト)として働いていたということになります。亡くなった夫が自営業だった場合と会社員だった場合に分けて詳しく見ていきましょう。

夫が自営業で、妻が会社員の場合

亡くなった夫が自営業だった場合、遺族基礎年金が支給されます。よって、妻は夫の遺族基礎年金と妻自身の老齢年金(老齢基礎年金・老齢厚生年金)のどちらか多いほうを選択することになります。

ただし、先ほども述べたように、遺族基礎年金は高校生以下の子ども(または20歳未満の障害がある子ども)がいる間しか受け取ることができません。厚生年金を受け取れるということは、妻は65歳以上であるとわかります。65歳以上の妻の子どもがまだ高校生であるケースは少ないでしょう。そのため、実際は多くの人が遺族基礎年金を受け取る資格を持っておらず、自分自身の老齢年金(老齢基礎年金・老齢厚生年金)を選ぶことになると考えられます。

夫が会社員、妻も会社員の場合

一方、亡くなった夫が会社員で妻も会社員だった場合、かつ、妻自身の老齢厚生年金もある場合は、以下のA、Bの金額を算出し、高いほうが遺族厚生年金の額になります。

A:夫の老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3(基本の遺族厚生年金額)
B:夫の老齢厚生年金の報酬比例部分の2分の1と、妻の老齢厚生年金の2分の1の合計

ただし、妻の老齢厚生年金相当額は支給停止となるため、AまたはBのうち当該金額から妻の老齢厚生年金額を差し引いた額が実際に受け取ることができる遺族厚生年金です。
また、AまたはBよりも妻の老齢厚生年金額の方が高い場合は、遺族厚生年金ではなく老齢厚生年金の受給を選択することができます。

実際にいくら受け取れる?年金額シミュレーション

それでは、会社員の夫が亡くなった場合、残された妻は年金をいくら受け取れるのかシミュレーションしてみましょう。夫と妻の老齢年金額は下記のように設定します。

●夫の老齢年金額は150万円(うち老齢基礎年金が80万円、老齢厚生年金が70万円)
●妻の老齢年金額は120万円(うち老齢基礎年金が80万円、老齢厚生年金が40万円)

先ほど解説したA、Bに当てはめて計算すると、下記のようになります。
A:70万円×3/4=52万5,000円
B:(70万円×1/2)+(40万円×1/2)=55万円

今回のケースでは、B「夫の老齢厚生年金の2分の1と、妻の老齢厚生年金の2分の1の合計」の金額が最も多くなりました。Bと妻の老齢厚生年金の差額を求めると、55万円-40万円=15万円となり、よって妻が受け取る遺族年金は15万円となります。

したがって、夫が亡くなったあとに残された妻が受け取る年金額は、老齢基礎年金80万円+老齢厚生年金40万円+遺族厚生年金15万円=135万円 となることがわかりました。

老後の一人暮らしに必要なお金はいくら?

夫が亡くなったあとに妻が受け取る年金について考えてきましたが、夫の死後妻が一人暮らしをするとなると、実際はどれくらいのお金がかかるのでしょうか。

総務省統計局が行なった2022年の家計調査によると、65歳以上の単身無職世帯の月の消費支出は14万3,139円、さらに税金や社会保険料などの非消費支出は1万2,356円が平均でした。消費支出と非消費支出を合わせると15万5,495円で、これを年額にすると186万5,940円です。

先ほどのシミュレーション例だと妻が受け取れる年金は135万円でしたから、年間50万円以上も赤字になってしまうことになります。

実際の家計調査でも、65歳以上の単身無職世帯の収入のうち年金に相当する社会保障給付の平均は12万1,496円でした。これを年額に直すと145万7,952円ですから、やはり赤字です。いずれにしても、公的年金等で支給される額では、老後一人暮らしをするためのお金として足りないことがわかりました。

参照:総務省統計局 家計調査年報(家計収支編)2022年(令和4年)結果の概要

老後に備えるための資産形成に必要な投資とは

夫が亡くなったあともお金の心配なく暮らすためには、年金だけに頼るのではなく、早いうちから自分で老後の資金を準備しておいた方がいいかもしれません。そのために投資をはじめることも選択肢のひとつとなるでしょう。

資産形成の代表的な投資方法として、株式や投資信託が挙げられます。これらの金融商品は長期・分散・積立で投資を行っていくことで資産形成に有効だと言われています。ただし、これらの金融商品は市場の変動によって価格が大きく変動することもあります。

長期で資産形成をするうえで、こうした価格の変動に対して、より価格変動の少ない商品への投資も組み合わせることが分散投資に繋がります。その手段として、考えられるのが不動産投資です。。

不動産投資とは、マンションやアパートを購入し貸し出すなどして運用する投資方法のことです。株や投資信託などと比べると値動きが緩やかで、入居者が定着すれば毎月安定した家賃収入が見込めるため、老後の資産形成に向いています。ただし、不動産を購入するための初期費用や管理の手間などがかかるため、不動産投資に興味はあるものの始めるのをためらっている人も多いのではないでしょうか。

その場合、ぜひ不動産投資クラウドファンディングを検討してみてください。不動産投資クラウドファンディングとは多くの投資家から資金を集めて不動産投資を行ない、得た利益を投資家に還元するといった投資です。

そのため普段投資できないような都心の案件やホテルなどの大規模プロジェクトにも、手軽に投資することができ、一口1万円や10万円といった少額から投資できるサービスもあるので、投資が手軽にはじめやすいことも特徴です。

少額から投資できる「COZUCHI」で老後の備えを

不動産投資クラウドファンディングの「COZUCHI」ではプロが厳選した不動産に1万円から投資できるため、初心者でも始めやすいです。手続きや管理はプロにすべて任せられるので、投資後は配当の振り込みを待つだけで運用できます。

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まとめ

大黒柱の夫が亡くなり、残された妻が受け取れる年金について解説してきました。

夫の遺族年金と妻の厚生年金は、基本的にどちらか多い方を選択することになります。妻自身の厚生年金がなるべく反映されるようにし、夫の遺族年金がそれより多ければ、差額分のみを受け取ります。

残された妻が一人暮らしをするとなると、年金だけでは足りない場合も多いでしょう。年金だけに頼るのではなく、老後の資産を自分で準備していく必要があります。資産形成の方法として、不動産投資クラウドファンディングの「COZUCHI」をぜひ検討してみてください。

【監修者】

氏名:赤上 直紀(あかがみ・なおき)
保有資格:1級ファイナンシャル・プランニング技能士
主なキャリア:元銀行員。資産運用やローンを通じて、多くのお客様のライフプランニングに携わる。現在は、編集者として金融機関を中心に、ウェブコンテンツの編集・執筆業務を行う。