IRRとは?計算式や不動産投資での活用のポイントもわかりやすく解説
2024年01月30日
不動産に投資するかどうかを検討する際、IRRでの判断が求められるケースがあります。重要性は認識していても、どういった指標かわからない方も少なくないかもしれません。
この記事ではIRRの概要や不動産投資で重視される理由を解説。不動産投資におけるシミュレーションや活用するメリット、注意点も紹介します。これを読めば、投資初心者でもIRRをうまく使えるようになるでしょう。
IRR(内部収益率)とは
IRRとはどういった指標なのでしょうか。不動産投資においてIRRが重視される理由と併せて見ていきましょう。
投資回収が早いほど高まるIRR
IRR(内部収益率)とは、一言で表せば「投資分をどれくらいの期間で回収できるかを示す指標」のことです。より正確に表すと、「投資金額の現在価値」と、「将来対象物件によって得られるであろうキャッシュフロー(以下、CFと表記)の現在価値」が等しくなるような割引率を指します。
ここまでの説明は少し難しく感じるかもしれません。上記を理解するには「時間が経過するとお金の価値が下がる」という基本を身につける必要があります。
投資の世界では、お金を得られる機会が早ければ、その分再び投資に回して増やせる機会があると考えます。言い換えれば現在の手元のお金に最も価値があると考えるのです。例えば、1年後の100円より現在の100円のほうが価値は高いと考えます。
上記の考え方をベースに、将来入るであろうお金の価値を現在価値に換算するときに用いる利率を割引率といいます。そして、投資対象の物件が将来生み出すCFを現在価値に換算した際、初期投資額と等しくなるときの割引率こそがIRRです。
時間経過にともないお金の価値は下がっていくという考え方が前提のため、投資回収が早期に可能な物件ほど高IRRとなります。
NPV(正味現在価値)や利回りとの違い
NPV(正味現在価値)や利回りもよく用いられる指標です。
NPVは、投資対象が今後生み出すと想定されるすべてのCFの現在価値から投資金額を差し引いたものです。IRRは「NPVがゼロになるときの割引率」と言い換えることもできるので、NPVと密接な関係にあるといえるでしょう。
次に、利回りは投資対象における1年間の収益性を確かめるためのもので、「お金は価値が常に一定」という考え方が前提です。これを踏まえると、時間の価値も反映するのがIRR、年間の収益性をシンプルに確認できるのが利回りと整理するとよいでしょう。
不動産投資でIRRが重視される理由
IRRが重視されるのは、不動産投資の特性をよく反映している指標だからです。
賃貸物件は常に満室稼働というのは考えづらく、大半の物件はCFが毎年変化します。利回りは単年で想定するため、こうしたCFの変化を踏まえた判断ができません。
一方のIRRは毎年変化するCFも考慮に入れた指標であり、対象物件の実態により即した判断が可能です。
IRRの計算式と不動産投資におけるシミュレーション
それではIRRはどのように求めるのでしょうか。具体的なシミュレーションと併せて計算方法を紹介します。
IRRの計算式
まず、IRRの前提となる計算式を確認しましょう。
現在価値 = 将来価値 ÷(1+r)^n
※r=割引率、n=計算対象となる年数、^=累乗
先述のようにIRRは「物件が将来生み出すCFを現在価値に換算した際、初期投資額と等しくなるときの割引率」なので、次の式が成立するときの割引率rと考えられます。
上記の計算式より、IRRの計算には投資期間における各期のCFおよび初期投資額を把握することが必要です。
Excel計算可能なIRR
IRRを自力で求めるのは難易度が高いと感じるかもしれません。IRRを簡単に計算したいときはExcelの「IRR関数」が便利です。
IRR関数では、IRRを表示したいセルに「=IRR(値)」を記入し、値部分に初期投資額・CFが記載されているセルの範囲を指定するだけで求めることができます。
このとき、初期投資額は費用ととらえて必ずマイナスの値で指定します。なぜならIRR関数は、計算対象の範囲内に正の値と負の値を各1つ以上含んでいないと計算できないためです。それではExcelでIRRを実際に計算してみましょう。
不動産投資におけるIRRシミュレーション
ExcelのIRR関数を用いて、以下の条件でシミュレーションしてみます。
●購入価格:5,000万円(一棟アパート)
●実質利回り:7.0%
●年間CF:350万円
●投資期間:10年
●売却価格:4,500万円
Excelによる計算結果は次のとおりです。
IRR関数入力時の値には、0年目~10年目までの「合計」のセル範囲が入ります。
今回の条件下において10年目で売却するときのIRRは6.3%となりました。購入価格と運用期間中のCF、売却価格の想定があればIRRの計算ができることがわかります。
不動産投資でIRRを用いるメリット
不動産投資を検討する際、IRRを用いることでどのようなメリットがあるのか詳しく解説します。
投資判断の材料に時間の価値を含むことができる
先述のとおり、年を経るごとにお金の価値は下がっていくことから、投資の可否を判断するに際には時間の価値は大切な要素です。
とりわけ不動産投資は空室の発生で年間家賃収入が下がる、修繕を要して費用負担が増えるなど、運用期間中のCFが不安定な投資手法です。IRRは、運用期間を通して変動するCFを現在価値に換算して確認できるため、変動しやすい不動産投資の収益性を確かめるのに適した指標といえます。
不動産投資で重要な3つの数字を網羅できる
不動産投資においては「初期投資額」「運用中に得られる利益」「売却価格」の3つの要素が重要です。これらの3つの要素を踏まえて、総合的に投資可否を判断する必要があります。
先ほどのシミュレーションからも明らかなように、IRRは3つの要素をすべて組み入れた指標です。IRRを用いれば投資物件の総合的な収益性をチェックできるでしょう。
ほかの投資手法と収益性を比較できる
IRRは不動産投資以外の投資手法においても、収益性を比較することができます。
例えば、投資信託や貯蓄型の保険商品などでもIRRを求めることが可能です。投資対象が異なる場合や投資する期間が異なる商品においても比較ができるのも、IRRのメリットといえるでしょう。
IRRを活用する際の注意点
IRRを用いるには認識しておきたい注意点もあります。以下に挙げるポイントを押さえて上手に使いましょう。
投資規模は反映されない
特に注意すべきポイントはIRRには投資規模が反映されないことです。
IRRはあくまでも「NPVがゼロになるような割引率」であり、対象物件の収益率を示すに過ぎません。投資期間を通じて得られる「収益額」の大小は考慮されないのです。IRRのみで投資を判断してしまうと、IRRは低くても期間全体を通じて得られる収益は大きい物件を投資対象から外してしまうリスクがあります。
IRRが低かったとしても、全体で考えたときに高い収益を得られるなら投資すべき場面もあるでしょう。投資判断時には物件から得られる収益の総額もチェックしておくと判断の精度が高まります。
ただ、投資額に制約のある個人投資家にとっては、IRRが高い物件を優先的に選ぶのは得策といえます。
高IRR物件は高リスクの可能性もある
IRRが高いからといって、必ずしも良い投資物件とは限らない点にも注意が必要です。
初期投資におけるローン比率を高めて自己資金の割合を下げれば、計算上の初期投資額が低減されます。つまり、ローンで借り入れる割合が高まれば必然的にIRRも高くなるのです。そのため、IRRが高い優良物件だと思っていたら、実はローンの借入比率を高く見積もっているハイレバレッジで投資リスクの高い物件というケースもあるのです。
これに対しては、初期投資のうち自己資金のみ考慮して算出する「エクイティIRR」、融資分も考慮する「プロジェクトIRR」とをわけて使うことも必要になる場合もあるでしょう。
長期投資計画の評価が低くなりやすい
1つ目に紹介した注意点にも通じますが、長期にわたる投資計画の評価は短期投資と比すると低くなりやすいのも気をつけるべきポイントです。
IRRは投資回収にかかるスピードによって変動し、長期安定的な収入を目的とする投資では評価が低くなりがちです。期間を通じた総収益が高い優良な長期投資計画と比べても、短期投資のほうがIRRは高くなりやすいでしょう。
長期投資を前提とする場合、IRRだけに投資判断を頼り過ぎないことも大切です。
高IRRも狙える「COZUCHI」の短期運用型
短期で投資回収できる物件なら高いIRRを狙えます。不動産投資クラウドファンディング「COZUCHI」の短期運用型は、運用期間が半年〜2年のものが多く、気軽に不動産投資を始められます。
短期運用型では物件の賃料収入や売却想定価格をしっかりと吟味して、想定年利回りで4〜10%のファンドが提供されています。。
またCOZUCHIでは、投資家の方とプロジェクト利益をシェアしたいという想いから、ファンドの終了時において、組成時の想定を上回る利益を獲得できた場合には、当初想定していた運用利回りを超える配当を実施する独自の方針を定めており、想定以上の利回りを得られる可能性があるのも魅力です。
また併せて、投資家が出資する部分を優先出資部分、損失が出た場合に先行して毀損対象となる劣後出資部分を事業者が出資するという優先劣後方式が採用されています。これにより投資家の元本及び分配金の安全性を高める仕組みとなっています。
COZUCHIについてさらに詳しく知りたい方は、以下のホームページをご覧ください。
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また、お問い合わせや会員登録については、以下のページにお進みください。
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まとめ
IRRとは、物件が将来生み出すCFを現在価値に換算した際、初期投資額と等しくなるときの割引率のことです。IRRなら時間の価値や運用期間中の収益などを考慮できるため、運用期間中のCFが安定しない不動産投資の収益性を確かめるのに適した指標といえます。
一方でIRRには投資規模が反映されないなど注意点もあるため、それ以外の指標と併せて総合的に判断することが重要でしょう。
【監修者】
名前:齋藤 彩(さいとう あや)
所有資格:AFP(Affiliated Financial Planner)、薬剤師免許
おもなキャリア:
急性期総合病院において薬剤師として勤める中、がん患者さんから「治療費が高くてこれ以上治療を継続できない」と相談を受けたことを機にお金の勉強を開始。ひとりの人を健康とお金の両面からサポートすることを目標にファイナンシャルプランナーとなることを決意。現在は個人の相談業務・執筆活動を行っている。