個人事業主でも退職金は準備できる!おすすめの退職金制度や方法など紹介

2024年01月30日

個人事業主として働くうえで「個人事業主には退職金がないし、年金も少ないから老後が不安」「健康の問題などで急に働けなくなったらどうしよう」と感じている方も多いのではないでしょうか。

個人事業主には会社から受け取れる退職金はありませんが、国の制度などを利用することで、自分で退職金を準備できます。

この記事では、個人事業主が退職金を準備する際におすすめの方法や制度を紹介します。老後や廃業後の生活資金に不安を感じている方は、ぜひ参考に準備してください。

個人事業主でも退職金は準備できる!

個人事業主は会社や団体に属しているわけではないため、会社から退職金を受け取ることができません。しかし、退職金代わりになる個人事業主向けの制度を利用することによって、自分で退職金を準備できます。

個人事業主向けの制度のなかで特にメリットが多くおすすめなのが、これから紹介する「小規模企業共済制度」です。

個人事業主に人気の退職金制度「小規模企業共済制度」とは?

小規模企業共済制度は、おもに従業員20人以下の小規模企業の役員や個人事業主を対象とする退職金制度です。毎月一定の掛金を積み立てておき、事業を廃業した際や65歳以上になった際などに退職金代わりの共済金を受け取ります。

この制度は、小規模企業の経営者や個人事業主が廃業したあとの生活の安定や、会社員との社会保障の差を埋めることを目的に、昭和40年に作られました。独立行政法人中小企業基盤整備機構が運営しており、2023年3月現在、全国で162万人が加入している制度のため、安心して加入できます。

具体的な加入資格は、下記のとおりです。

1.常時使用する従業員が20人以下の建設業、製造業、運輸業、サービス業(宿泊業・娯楽業に限る)、不動産業、農業などの個人事業主や会社役員
2.常時使用する従業員が5人以下の商業(卸売業・小売業)、サービス業(宿泊業・娯楽業以外)の個人事業主や会社役員
3.組合員が20人以下の企業組合の役員
4.常時使用する従業員が20人以下の協業組合の役員
5.常時使用する従業員の数が20人以下で、農業の経営が主の農事組合法人の役員
6.常時使用する従業員の数が5人以下の士業法人(弁護士法人、税理士法人等)の社員
7.1と2に当てはまる個人事業主の共同経営者(個人事業主1人につき2人まで)

小規模企業共済制度のメリット

小規模企業共済制度の積み立て金額は、月々1,000円から7万円まで500円単位で自由に設定でき、途中で金額を変更することも可能です。事業がうまくいかないなどで一定の条件を満たす場合は掛金を減らしたり止めたりすることができるため、安心して加入できるでしょう。

積み立てた掛金は全額所得控除の対象となり、税金の計算対象から外してもらえます。老後の資金を積み立てながら、同時に節税もできるのはうれしいメリットです。

また、共済金を受け取る際にも節税効果を受けられます。退職金のように一括で受け取る方法と、年金のように分割で受け取る方法、一括と分割を併用する方法の3通りから選べるのですが、一括受け取りの場合は税制上退職金とみなされ、退職所得控除の対象になります。ちなみに、分割受け取りの場合は公的年金等控除の対象です。

さらに、小規模企業共済に加入していれば、積み立てた金額の範囲内で低金利の貸付制度を利用できます。「一般貸付」「緊急経営安定貸付」「傷病災害時貸付」などさまざまな貸付があり、即日で借り入れることも可能です。個人事業主は一般的に融資を受けるのが難しいため、資金繰りが苦しいときや新しい事業を始めたいときに、すぐに借り入れできる制度があるのは安心です。

このように、小規模企業共済は退職金の代わりになるだけでなく、節税や資金繰りなど、さまざまな点でメリットを受けられる制度といえます。

小規模企業共済制度のデメリット

小規模企業共済制度のデメリットは、短期間で解約すると損してしまうことです。

積み立てた期間が6ヵ月に満たない場合、老後や廃業後にもらうはずの共済金を受けとることができません。なお、12ヵ月未満の場合、準共済金(加入資格を満たさなくなり解約した際にもらえる)や、解約手当金(任意解約または掛金滞納による解約の際にもらえる)を受け取れないことも覚えておきましょう。

小規模企業共済制度は、あくまで長期間積み立てることが前提の制度です。基本的に20年以上積み立てていれば、その合計額以上を受け取ることができます。しかし、20年未満で任意解約した場合、積み立てた合計額を下回る金額しか返ってきません。

また、先述したように、共済金を受け取るときに退職所得控除や公的年金等控除が受けられますが、共済金は受け取る際に課税対象となることも忘れないようにしてください。

【個人事業主向け】退職金を準備できるおすすめの方法

小規模企業共済制度のほかにも、退職金を準備するのに役立つ制度はあります。ここからは、個人事業主が退職金や老後に向けた資産形成を準備できるおすすめの方法として、iDeCo、国民年金基金、不動産投資を紹介します。

iDeCo(個人型確定拠出年金)

iDeCo(個人型確定拠出年金)は、公的年金とは別に自分で老後資金を準備するための制度です。毎月一定の掛金を拠出し、定期預金や投資信託、保険などから自分で金融商品を選んで運用しながら積み立てていき、60歳以降に受け取る仕組みです。20歳以上60歳未満の個人事業主だけでなく、条件を満たした会社員も加入できます。

iDeCoは老後の資金を自分で準備してもらうために国が作った制度ということで、さまざまな節税メリットがあります。まず、iDeCoで積み立てた掛金はすべて所得控除の対象となり、所得税の計算対象から外すことができます。また、運用して得られた利益に税金はかかりません。さらに、60歳になって資産を一時金として受け取る際には、退職所得控除が受けられます。

ただし、iDeCoはあくまでも老後の資産形成のため、原則として60歳にならないと積み立てた資金を受け取ることができません。また、iDeCoは自分で金融商品を選んで自己責任で運用します。将来もらえる金額は確定しておらず、商品によっては元本保証されていません。

さらに、iDeCoを利用するには手数料がかかります。毎月の掛金を払うのが難しくなり一時停止した場合も口座管理手数料は引かれていくため注意が必要です。

国民年金基金

国民年金基金は、国民年金に上乗せできる公的年金制度の一つで、20歳から60歳までの第1号被保険者などが加入できます。会社員などの第2号被保険者は国民年金と厚生年金の両方を受け取れるのに対し、個人事業主などの第1号被保険者は国民年金しか受け取れません。その年金額の差を解消するために、この制度が作られました。

65歳から一生涯受け取れる終身年金が基本のため、長生きに備えることができます。また、2口目からは確定年金を選ぶことも可能です。複数のプランがあり、自分の状況や老後の生活設計に合わせて選べます。

小規模企業共済制度やiDeCoと同様、国民年金基金の掛金も全額所得控除の対象となります。また、年金として受け取る際に公的年金等控除が受けられます。

注意していただきたいのは、一度加入すると途中で任意に脱退ができないことです。今までに支払った掛金を途中で引き出すこともできないため、無理なく支払えるプラン設定にしておきましょう。なお、脱退はできませんが、月々の掛金を減らすこと(2口目以降)や、2年間の支払い猶予は可能です。

不動産投資

不動産投資は、マンションやアパートなどの物件を購入し、それを他人に貸して運用することで家賃収入を得る投資です。退職金制度や年金制度ではありませんが、老後の資産形成の方法として注目されています。

株やFXのように毎日値動きがあるわけではないため、良い物件を選ぶことができて入居者が定着すれば、毎月の収益を予測しやすいです。入居者がいる限り長期的にまとまった額の家賃収入を得られるため、退職金や年金の代わりとして資産形成ができます。

デメリットは、家賃の集金や建物のメンテナンスといった管理業務を行なわなければならないことです。ただし、不動産管理会社に管理業務を委託することもできますから、本業と並行することも可能です。

初期費用がかかるのもデメリットの一つでしょう。不動産投資を始めるには、まず物件を購入しなければなりません。

また、不動産投資は入居者が定着すれば収入が安定しますが、逆に入居者がいない場合、収入は得られません。また、家賃を滞納された場合も収入が得られないため、入居者選びは慎重に行ないましょう。

不動産投資に興味はあるものの、管理の手間が必要なことや初期費用が多くかかることから現実的でないと思われる場合は、不動産投資クラウドファンディングという選択肢もあります。

不動産投資クラウドファンディングでは、インターネット上で募集した投資家から資金を集めたうえでプロが不動産を選んで運用し、得られた収益を投資家に還元します。そのため、物件購入費用や管理の手間がかかりません。

不動産クラウドファンディングの匿名組合型であれば、一般的に金額は1口1〜10万円程度、償還期間1〜2年程度からはじめることができます。現物不動産を購入して投資する初期費用等を考えると、比較的少ない資金ではじめられる投資と言えます。

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不動産投資は退職金準備の手段としておすすめですが、物件を購入する必要があり、初期費用が多くかかることから、ためらってしまう方も多いでしょう。そんな方は、ぜひ不動産投資クラウドファンディングの「COZUCHI」をご検討ください。

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まとめ

個人事業主は会社に勤めていないため、会社からの退職金をもらうことができません。そのため、自分で退職金や老後に向けた資産形成を準備する必要があります。

個人事業主が退職金や老後資金を用意するためにおすすめの方法は、小規模企業共済制度、iDeCo、国民年金基金、不動産投資です。

お金の不安なく老後を迎えるために、自分に合った退職金の準備方法について、早いうちから考えておきましょう。

【監修者】

名前:齋藤 彩(さいとう あや)
所有資格:AFP(Affiliated Financial Planner)、薬剤師免許
おもなキャリア:
急性期総合病院において薬剤師として勤める中、がん患者さんから「治療費が高くてこれ以上治療を継続できない」と相談を受けたことを機にお金の勉強を開始。ひとりの人を健康とお金の両面からサポートすることを目標にファイナンシャルプランナーとなることを決意。現在は個人の相談業務・執筆活動を行っている。