法定相続人とは?範囲や法定相続分の割合などについて解説

2024年01月22日

ある程度の財産を持つ方は、自分の死後に誰がどのくらいの遺産を相続することになるのか、どの程度相続税がかかるのか心配な方もいるでしょう。

法定相続人とは、民法上で相続人の権利を持つ人を指し、遺言書がない場合には遺産分割協議のもと、法定相続人が相続することになります。

この記事では、法定相続人の範囲や法定相続割合、法定相続人の人数によって決まる相続税の基礎控除の仕組みなどを解説します。

法定相続人とは?

法定相続人とは、遺言がない相続において、民法に規定された相続権を持つ人のことです。法定相続人の範囲や順位や、法定相続人とはならない人について解説します。

法定相続人の範囲と順位

法定相続人は、被相続人(亡くなった方)の配偶者と、被相続人と法律上血縁関係にある人です。このうち、配偶者は常に相続人となりますが、血族には以下のように相続の優先順位が定められています。

●第一順位:子(直系卑属)

●第二順位:父母や祖父母(直系尊属)

●第三順位:兄弟姉妹(傍系血族)

相続発生時には優先順に相続権が与えられ、上位の順位の人がいる場合、その下位の人には相続権が発生しません。例えば、被相続人に子がいる場合、第二順位である被相続人の父母や祖父母、および第三順位である兄弟姉妹は相続人になりません。

なお、第一順位の相続人が死亡している場合には、その子が代わりに相続する代襲相続が認められています。

養子の場合も、実子と同様に法定相続人となります。普通養子縁組の場合は、実親・養親の両方の法定相続人になりますが、特別養子縁組の場合は養子縁組の時点で実親との関係が消滅するため、法定相続人にはなりません。

法定相続人とならない人

法定相続人であっても、相続放棄をした人は法定相続人から除外されます。また、犯罪などにより相続人の権利を失う「相続欠格」や、被相続人や遺言執行者の申立により相続権を剥奪された「相続廃除」に該当する場合にも、法定相続人にはなれません。ただし、相続欠格や相続廃除の場合は、代襲相続は可能です。

法定相続人は戸籍に基づいて判断されるため、被相続人と内縁関係の人も法定相続人になることはできません。内縁関係の人に遺産を相続させるには、遺言書が必要です。

法定相続人の範囲・人数によって変わる相続割合

法定相続における相続割合は、法定相続人の範囲や人数によって変わります。相続財産が1,000万円の場合を例に、相続割合や相続金額がどのように変化するのか見ていきましょう。なお、法定相続では任意の割合での分割はできないため、相続割合を変えたい場合には遺産分割協議による合意が必要です。

被相続人に子や父母・祖父母、兄弟姉妹がおらず、相続人が配偶者のみの場合は、配偶者が1,000万円全額を相続します。相続人が配偶者と被相続人の子の場合、配偶者と子がそれぞれ2分の1となる500万円ずつを相続します。子が複数人いる場合は、子の相続分500万円を人数で等分することになるため、子が2人ならそれぞれ250万円ずつの相続になります。

被相続人に子がおらず、相続人が配偶者と直系尊属(父母または祖父母)となる場合には、配偶者が3分の2、父母があわせて3分の1を相続します。配偶者の相続額は約670万円、父母の相続額は約330万円です。

同じく被相続人に子がおらず、相続人が配偶者と第3順位の兄弟姉妹の場合には、配偶者が4分の3の750万円、兄弟姉妹が4分の1の250万円を相続します。

被相続人に配偶者がなく子がいる場合は、子が全額相続します。子が4人なら、1人250万円ずつの相続です。配偶者も子もない場合には、父母または祖父母が、父母または祖父母もない場合には、兄弟姉妹が全額を相続します。

なお、遺言書がある場合には、法定相続分よりも遺言書を優先します。ただし、配偶者や子、父母・祖父母などの直系血族には遺留分(法定相続の2分の1)を確保する権利があることを覚えておきましょう。

法定相続人の確認方法

誰が法定相続人にあたるかは、被相続人が生まれてから亡くなるまでの連続した戸籍で確認します。

現在の戸籍には以前の戸籍の情報が記載されているため、死亡時の戸籍から順に出生時まで辿っていくとよいでしょう。戸籍は本籍地の役所に請求する必要がありますが、遠方の場合は郵送での請求が可能です。

戸籍を確認し、ほかに前配偶者との子や認知した子、養子など新たな法定相続人が見つかった場合には、相続について連絡する必要があります。勝手に相続を進めたとしても、その内容は無効になります。

法定相続人の人数で相続税の基礎控除額も変わる

遺産を相続する際、全額に相続税が発生するわけではありません。評価額から一定額を差し引ける基礎控除が設定されているため、相続税は基礎控除額を超えた金額にのみ発生します。

基礎控除額は、法定相続人の人数により変わります。相続税の基礎控除の仕組みについて見ていきましょう。

相続税の基礎控除額の計算方法

相続税の基礎控除額は、以下の式で計算します。

基礎控除額=3,000万円+(600万円×法定相続人数)

例えば、1億円の相続財産に対して法定相続人が4人いる場合、基礎控除額は以下のように計算します。

基礎控除額=3,000万円+(600万円×4)=5,400万円

つまり、1億円-5,400万円=4,600万円に対して、相続税が発生することになります。相続税が発生する場合は、全体の相続税額をもとにそれぞれの相続人が実際に相続した財産割合に応じて負担します。

相続税法上の法定相続人数に含まれる人・含まれない人

相続税上の法定相続人の数は、実際に法定相続をする人の数とは異なる場合がある点に注意しましょう。

相続税法上では、相続の欠格・廃除の対象となる人は相続人の数に含まれませんが、相続放棄をした人については法定相続人の数に含まれます。そのため、特定の相続人に相続させるためにほかの相続人が相続放棄するケースでも、控除額には影響なく課税額が増えることはありません。

また、相続税法上では、法定相続人の数に含められる養子の数が決まっています。被相続人に実子がいる場合は1人、実子がいない場合には2人までです。

なお、これは控除額の計算上での扱いであり、それ以上の養子がいる場合でも民法に規定された相続権がなくなることはありません。

なお、生命保険金や退職金の非課税額は、この法定相続人の人数を用いて「500万円×法定相続人数」で計算します。

相続税対策のためにできること

基礎控除額を超える相続財産がある場合は相続税が課税されますが、相続財産やその評価額を減らせれば節税が可能です。ここからは、相続税対策に有効な手法を3つ紹介します。

生前贈与

生前贈与は、相続税対策として広く活用されている手法です。

贈与をすれば、贈与された側に贈与税が課税されます。しかし、年間(1月1日~12月31日)に110万円までの贈与であれば非課税となる「暦年贈与」という方法を活用すれば、税負担なく財産を引き継がせることが可能です。

毎回、贈与契約書を作成して振り込むなど履歴の残る方法で贈与を行なえば、暦年贈与を証明できます。

ただし、相続開始前一定期間に行なわれた贈与分は、相続財産に含める必要があるため注意しましょう。2023年(令和5年)までは相続開始前3年以内、2024年(令和6年)以降は7年以内の生前贈与が加算の対象になります。

暦年贈与のほかに、住宅取得資金や教育、結婚、子育て資金の贈与などが非課税となる制度も活用可能です。

生命保険の非課税限度額を活用する

生命保険金は相続税の対象となることがありますが、被相続人が契約者として保険料を支払い、受取人が相続人である場合は「500万円×法定相続人」の非課税枠を利用できます。相続人を受取人とした生命保険は相続税額を抑えられるだけでなく、遺産分割協議が終了するまでの生活費や相続税の納税資金として活用できることも、大きなメリットです。

より高い相続税圧縮効果を考えるなら、生命保険金の受取人は被相続人の配偶者ではなく、子をおすすめします。

相続において配偶者には配偶者控除が設けられており、相続財産が1億6,000万円もしくは配偶者の法定相続分の大きいほうを超えるまで、相続税は非課税です。

配偶者が相続する財産が相続税非課税の範囲内なら、配偶者は生命保険の非課税枠を活用するにいたりません。

なお、生命保険を含めて一次相続で配偶者が多くの財産を相続して保有したまま亡くなると、二次相続の際に相続税が高額になる点に注意が必要です。

法定相続人を増やす

法定相続人を増やせば、1人につき相続税の基礎控除額を600万円増やせます。

先に述べたとおり、実子がいない場合は2人、実子がいる場合には1人までの養子が法定相続人として認められるのです。

ただし、安易な養子縁組は親族間のトラブルになりやすいため、注意してください。また、相続発生直前の養子縁組は相続税対策のために行なわれたと判断され、税務署に否認されるケースもあります。

不動産を活用して相続税評価額を減らす

相続財産が現金や預貯金の場合、相続税評価は額面そのままで評価されます。しかし、不動産であれば時価よりも低く評価されるため、現金を不動産に換えて相続税評価額を下げることが可能です。不動産の場合は、目安として時価の7~8割程度の相続税評価となります。

不動産が賃貸用の土地・建物であればさらに評価額が下がるため、相続税を大きく圧縮できるでしょう。また、この土地が小規模宅地等の特例の条件を満たす場合、貸付事業用宅地等として、200平方メートルまでの部分について50%の評価減が可能です。

ただし、小規模宅地等の特例は、相続開始前3年以内に貸付事業を始めた土地には適用できないため、早期から相続を見据えた対策が必要になります。

「COZUCHI」の中長期運用型は相続税対策としても期待できる

相続税対策に、不動産投資クラウドファンディングの活用も可能です。

不動産クラウドファンディングのうち、相続税対策として利用できるのは、事業者と投資家が任意組合契約を結ぶ任意組合型のものです。任意組合型では出資者に不動産の所有権があるため、相続税評価は不動産として評価されます。現金で保有しているよりも評価額が低くなるため、相続税を抑えるのに役立つでしょう。

「COZUCHI」の中長期運用型のファンドでは、相続税対策として期待できる任意組合の仕組みを採用しています。実際の運用はプロが行うため、管理の必要はありません。実際に不動産を所有するよりも、運用、管理などの手間を抑えた運用が可能です。

COZUCHIについてさらに詳しく知りたい方は、以下のホームページをご覧ください。

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まとめ

法定相続人の範囲や人数について理解しておくことは、相続税対策を考えるうえで不可欠です。特に法定相続人の人数は、相続税の基礎控除額や生命保険の非課税枠などに関係します。どの程度課税が見込まれるのかを知り、計画的に相続税対策を始めましょう。

不動産の保有は、相続税対策として有効です。そのために、現物不動産を購入するほか、任意組合型不動産投資クラウドファンディングを利用する方法もあります。

任意組合型不動産投資クラウドファンディングでは、現物不動産での賃貸経営よりも手間やリスクを抑えた運用が叶うため、選択肢の一つとして検討してみてはいかがでしょうか。

 

【監修者】

名前:金子 賢司
東証一部上場企業で10年間サラリーマンを務める中、業務中の交通事故をきっかけに企業の福利厚生に興味を持ち、社会保障の勉強を始める。以降ファイナンシャルプランナーとして活動し、個人・法人のお金に関する相談、北海道のテレビ番組のコメンテーター、年間毎年約100件のセミナー講師なども務める。趣味はジャザサイズ。健康とお金、豊かなライフスタイルを実践・発信している。
保有資格:CFP