戸建ての固定資産税はいくら?計算方法や評価替えにともなう注意点も解説

2024年05月20日

固定資産税は、戸建て住宅などの購入によって毎年かかるようになる税金の一つです。税金などの支出を少しでも押さえたい場合、戸建て購入などによって生じる固定資産税の額をシミュレーションしたうえで、節税につながる買い方・建て方などを模索することも大切になります。

この記事では、戸建てにおける固定資産税の相場・平均額、計算方法などを詳しく解説します。戸建て購入前に固定資産税の額を把握したい方は、ぜひ記事内容を参考にしてください。

戸建てにおける固定資産税の相場・平均額はいくら?

詳しくは後述しますが、固定資産税の平均額や相場は、土地・建物の評価額や、軽減措置の適用の有無などで変わってくるものです。そのため、「新築なら○万円、中古は○万円」などと一概にいえるものではありません。

目安として、2,000万円~4,500万円で戸建てを取得した場合、年間の固定資産税額は10万円~15万円程度になるのが一般的な平均とされています。

戸建ての「土地」における固定資産税の計算方法

戸建ての固定資産税の計算には、いくつかの前提があります。

まず、戸建ての固定資産税は、土地と建物を分けて計算するものです。固定資産税の税額は「固定資産税評価額×1.4%」の式を使って算出するのが基本となりますが、土地と建物ではこの評価額が異なります。そのため、土地と建物の固定資産税は、別々に計算をする必要があります。

また、このページでは、税率を「1.4%」として解説していきますが、これはあくまで多くの自治体で採用されている標準税率です。自治体によっては、1.5%や1.6%を税率とするケースもあります。そのため、自分が所有する戸建ての固定資産税を計算する際には、その物件がある市町村の税率を必ず確認することが大切になります。

では、ここから戸建ての「土地」に関する固定資産税の計算方法を見ていきましょう。

土地部分の固定資産税は、以下の計算式で算出します。

固定資産税評価額(課税標準額)×税率(標準は1.4%)

戸建ての土地における「課税標準額」とは

土地の評価額は、地目別の売買実例価格などをベースに各自治体によって計算されます。ここでいう地目とは、各土地を用途で分類したものです。宅地の場合、地価公示価格や不動産鑑定士による評価額などの7割を目安に評価額を計算するのが一般的になります。

戸建ての「建物」における固定資産税の計算方法

建物における固定資産税の計算式は、以下のとおりです。

固定資産税評価額(課税台帳登録価格)×税率(標準は1.4%)

戸建ての建物における「課税台帳登録価格」とは

建物の評価額となる課税台帳登録価格は、以下の計算式で算出します。

再建築価格×経年減点補正率

再建築価格とは、評価時点において、評価対象となる家屋と同一のものを同じ場所に新築するとした場合に必要となる建築費をあらわします。経年減点補正率は、家屋が建てられた年数からくる損耗に対する減価率です。

戸建ての固定資産税における軽減措置

国や自治体では、固定資産税の軽減措置の制度を設けています。各制度の条件に該当すれば、固定資産税を安くすることも可能です。

ここでは、戸建ての新築・住宅用地の取得・特定リフォームのそれぞれで使える一部制度の概要を紹介します。

なお、このほかに、各自治体独自の軽減・優遇措置も存在します。これらの軽減措置は制度内容が改正されることもあるため、必ず国や各自治体の最新情報をチェックしてください。

戸建て新築にかかる固定資産税の軽減措置

新築の戸建てに使える固定資産税の軽減措置には、以下の2つがあります。

新築住宅に係る税額の減額措置

新築の戸建てとマンションに関する軽減措置です。2024年3月31日までに新築された戸建ての場合、一定の要件をクリアしていれば固定資産税が3年間、2分の1に減額される制度になります。

4年目以降は、減額がなくなり固定資産税の額は元に戻ります。

参考:新築住宅に係る税額の減額措置(国土交通省)

認定長期優良住宅に関する特例措置

認定長期優良住宅とは、国が定めた可変性、耐久性、耐震性、維持や管理が適切に行なわれるなどの基準をクリアした家のことです。

この制度では、2024年3月31日までに条件に該当する認定長期優良住宅の新築または取得をした場合、固定資産税や所得税などの税金が数年間軽減されることになります。

戸建てにおける固定資産税の特例措置は、5年間です。6年目以降は、前述の「新築住宅に係る税額の減額措置」と同様に、元の税額に戻ることになります。

参考:認定長期優良住宅に関する特例措置(国土交通省)

住宅用地の取得にかかる固定資産税などの軽減措置

条件に該当する住宅地用地の取得をした場合、固定資産税と都市計画税が軽減される以下のような制度です。

●小規模住宅用地(住宅用地かつ200平米以下、超える場合は住宅1戸あたり200平米までの部分)
 固定資産税は価格の6分の1、都市計画税は価格の3分の1
●一般住宅用地(小規模住宅用地以外の住宅用地(200平米を超える部分))
 固定資産税は価格の3分の1、都市計画税は価格の3分の2

ただし自治体によって軽減される割合が異なることがあります。詳細は、各自治体のホームページなどを確認してください。

参考:固定資産税・都市計画税(土地・家屋)(東京都主税局)
   住宅用地の課税標準の特例措置(大阪市)

戸建てリフォームにともなう固定資産税の軽減措置

中古戸建ての場合も、以下のようなリフォーム工事をすることで固定資産税が減額になることがあります。

●耐震リフォーム
●バリアフリーリフォーム
●省エネリフォーム
●長期優良住宅化リフォーム

なお、戸建てリフォームに関する減税制度の場合、以下のように実施する工事内容によって減税対象となる税金の種類が異なります。制度利用するときには、詳細情報をチェックしてください。

参考:リフォームのお得な制度(一般社団法人 住宅リフォーム推進協議会)

戸建ての固定資産税額はいくらぐらいになる?

固定資産税額を知るには、土地や建物の評価額を把握する必要があります。具体的な評価額は役所の職員が行なう調査によって算定されますが、調査は建物の完成以降に実施されるものです。そのため、完成前の段階では固定資産税額の計算に使う具体的な評価額の把握ができません。ただ、ここまで紹介した「地価公示価格の7割」などの目安となる数字を使うと、おおよその固定資産税額を計算することが可能となります。

【設定条件】
●土地の取得費:1,300万円(評価額:910万円)
●建物の建築費:1,700万円(評価額:1,190万円)
●土地と建物の評価額は7割で算出
●住宅用地:190平米のため住宅用地の特例を使うことで、土地の課税評価額は6分の1
新築住宅の軽減措置も対象

【上記条件に基づく戸建ての固定資産税額】
●土地の固定資産税=910万円×1.4%×1/6=約2.1万円
●建物の固定資産税=1,190万円×1.4%×1/2=約8.3万円
●合計=2.1万円+8.3万円=約10.4万円

マンションの場合、固定資産税額の計算におけるポイントが戸建てとは少し異なります。詳細を知りたい方は、以下の記事をチェックしましょう。

関連記事:マンションの固定資産税はいくらかかる?仕組みや軽減措置についても解説

戸建ての購入後に評価額を調べる方法

戸建て物件を購入し、役所側で評価額の算定・システム登録したあとであれば、以下の方法で具体的な評価額を把握できます。具体的な評価額を使い、上記の流れで計算すると、実際に払うべき固定資産税額に近い数字を把握しやすくなるでしょう。

●固定資産税の納税通知書
●固定資産税の課税台帳
●固定資産評価証明書

3年ごとの評価替えにともなう注意点

役所では、戸建て住宅の土地・家屋に対して、評価額の見直しである「評価替え」を3年に1度のペースで実施します。

そもそも固定資産税は、適正な時価を評価額として課税されるものです。一般論で考えれば、戸建て住宅の価値(時価)は建物の経年劣化により年々下がっていくものとなります。

ただ、適正時な時価は、建築費の下落・上昇や、新駅の開業で人流が大きく変わるなどの外的要因から変動する側面もあります。例えば、近年のように建築費の高騰が続けば、戸建て住宅の見た目が古くなっても、その価値が下がらずむしろ上昇することもあるでしょう。

そこで家屋の評価替えでは、以下のうち低い方の評価額が採用されることになっています。

●新たな評価額=再建築価格×経年減点補正率
●前の評価額

自分の計算結果と役所が示す固定資産税額に大きな開きがある場合は、窓口で理由などを確認してもよいでしょう。

まとめ

戸建ての固定資産税の金額は、土地と建物で別々に算出します。それぞれの税額を知るには、それぞれの評価額を把握する必要がありますが、物件の完成前、または購入前では具体的な評価額を調べることができません。その際は、「地価公示価格の7割」などの目安となる数字を使うことで、おおよその税額を知ることが可能です。

ただし、戸建ての土地・家屋には3年ごとに評価替えがあり、それによって評価額が変わることがあります。新たな評価額がこれまでよりも高かった場合、評価額が据え置かれることもあるため、経年によって固定資産税額が下がるとは一概にはいえません。自分の計算結果と役所が示す税額に開きがあるときには、役所の窓口で理由などを確認してもよいでしょう。

■監修者

名前:齋藤 彩(さいとう あや)
所有資格:CFP(Certified Financial Planner)、1級FP技能士、薬剤師免許

おもなキャリア:
急性期総合病院において薬剤師として勤める中、がん患者さんから「治療費が高くてこれ以上治療を継続できない」と相談を受けたことを機にお金の勉強を開始。ひとりの人を健康とお金の両面からサポートすることを目標にファイナンシャルプランナーとなることを決意。現在は個人の相談業務・執筆活動を行っている。