不動産の登記簿謄本はオンライン申請も可能|窓口申請との違いや注意点も解説
2024年05月16日
不動産取引で求められる登記簿謄本は、オンラインでも申請可能な書類です。オンライン申請には、自宅や職場などから手続きを進められる一方で、窓口申請とは異なるいくつかの注意点があります。オンライン申請を使って効率良く登記簿謄本を取得するのであれば、オンライン申請の流れや注意点を知っておくことも大切です。
今回は、不動産における登記簿謄本の概要を確認したうえで、オンライン申請するメリットと具体的な流れを解説します。記事の後半では、登記簿謄本のオンライン申請の注意点も紹介します。ぜひ参考にしてください。
登記簿謄本とは?
まずは、不動産における登記簿謄本の概要を確認しましょう。
不動産における登記簿謄本の概要
不動産の登記簿謄本とは、建物・土地・マンションといった不動産について、登記済みの以下内容が記載された証明書を指します。わかりやすくいうと「物件の概要」「誰が所有しているか」「権利関係」を確認できる書類です。
●所有者の氏名、住所
●不動産の所在
●不動産の地番・地積・家屋番号・床面積など(不動産の種類によって内容が異なる)
●甲区(過去から現在までの所有者)
●乙区(所有権以外の権利に関する内容)
登記とは、不動産などの権利に関する事項を世の中に公示するために、登記所にある公簿に記載することです。登記簿謄本には、不動産のほかに法人や商業などの種類もあります。
かつては、上記のような登記情報を「用紙」で管理しており、その用紙を複写して証明したものを「登記簿謄本」と呼んでいました。しかし現在では、登記情報がコンピュータで管理されており、その内容を印刷して証明したものを「登記事項証明書」と呼んでいます。
不動産取引の手続きをするうえで、登記簿謄本(登記謄本)と登記事項証明書は、同じ意味合いで使われるものととらえてよいでしょう。
不動産における登記簿謄本の種類
不動産の登記簿謄本には土地、建物、建物(区分所有)があり、さらに以下の4種類に分けられます。
●全部事項証明書:その名のとおり、登記記録されたすべての事項が記載されています(閉鎖記録を除く)。
●現在事項証明書:登記記録された事項のなかで、現時点で効力があるものだけが記載されています。
●一部事項証明書(何区何番事項証明書):登記記録のうち、請求した一部の事項だけが記載されています。例えば、大規模マンションの敷地で権利者が多い場合、一部事項証明書を選択することでページ数を減らせます。
●閉鎖事項証明書:データ化される以前の登記事項が記載されています。また、合筆によって存続していない土地や、滅失した建物など、閉鎖となった登記記録も記載されています。その不動産の管轄法務局でのみで取得可能です。
基本的には不動産取引において求められた証明書を取得する形となりますが、自分が内容確認するために申請する場合は、使用目的に合ったものを選ぶことがおすすめです。
不動産の登記簿謄本における3つの取得方法
登記簿謄本の取得方法には、以下の3種類があります。
①登記所の窓口で請求 ⇒ 窓口で受け取る
②オンライン請求 ⇒ 窓口で受け取る
③オンライン請求 ⇒ 郵送で受け取る
ここからは、②と③のオンライン請求方法について詳しく解説します。
不動産の登記簿謄本をオンライン請求するメリット
不動産の登記簿謄本をオンライン請求する3つのメリットは以下のとおりです。
手間や待ち時間を削減できる
登記簿謄本の申請から取得までの手間や待ち時間を減らしたい場合は、オンライン申請がおすすめです。「オンライン申請 ⇒ 郵送交付」を選択すれば、登記簿謄本の取得手続きをすべて自宅や職場で完結できます。
また、法務省では、登記簿謄本を登記所で受け取る場合も、オンライン請求したほうが窓口での待ち時間が短くなることを案内しています。オンライン申請を利用すれば、手数料を電子納付できるため、収入印紙の用意も不要です。
発行手数料が安くなる
登記簿謄本の発行手数料もオンラインのほうが安くなります。
①登記所の窓口で請求 ⇒ 窓口で受け取る : 600円
②オンライン請求 ⇒ 窓口で受け取る : 480円
③オンライン請求 ⇒ 郵送で受け取る : 500円
また「オンライン請求 ⇒ 郵送」を選択した場合、法務局に行くための交通費も節約可能です。
申請可能時間が長い
オンラインには、以下のように申請できる時間が長いメリットもあります。
・登記所窓口:平日の8:30~17:15
・オンライン:平日の8:30~21:00
夜の21:00まで申請できるため、昼間の仕事を終えた帰宅後に自宅から申請することも可能です。申請のために有給休暇をとる必要もありません。
ただし、平日17:15以降にオンライン申請を行なった場合、受け付けてもらえるのは翌日の8:30以降となります。手数料の支払いも翌日となり、交付までに時間がかかるおそれがあるため注意しましょう。
不動産の登記簿謄本におけるオンライン請求の流れ
不動産登記簿謄本におけるオンライン申請のやり方・流れは、法務局が公開する以下の資料に書かれています。ここでは、オンライン申請のポイントを、申請の流れに沿ってみていきましょう。
参考:はじめてのかんたん証明書請求ガイド|登記・供託オンライン申請システム
1.申請者情報を登録する
登記・供託オンライン申請システムのトップページ右下にある「申請情報登録」をクリックします。利用規約が表示されるため、内容をよく読んだうえで「同意する」をクリックしましょう。
申請者情報を登録する画面が表示されたら、以下の情報を入力して「確認」をクリックしてください。システムの利用登録が完了し、登記簿謄本(登記事項証明書)を請求する画面にログインできるようになります。
●申請者ID・パスワード
●氏名
●住所
●連絡先、電話番号
●メールアドレス など
2.請求書を作成する
登記・供託オンライン申請システムのログインページで、申請者IDとパスワードを入力してログインしましょう。証明書請求メニューで「不動産(土地・建物)登記事項証明書」を選択すると、対象物件の選択ができる画面が表示されます。
初めてオンライン申請するときは、入力ミスが起こりにくい「オンライン物件検索」のサービスを活用するのがおすすめです。オンライン物件検索では、基本的に所在や地番などを選んで検索し、表示された当該物件を選択して「確定」ボタンをクリックする流れとなります。
物件を確定したあとは「登記事項/地図・図面証明書交付請求書」の画面で、以下の必要事項を入力していきます。
●証明書の種類、通数
●証明書の交付方法、郵送種別
●請求先の登記所を選択
3.請求書を送信する
必要事項を入力して「確認」をクリックしたら、次の画面で「氏名または法人団体名」を全角カナで入力してください。再び「確定」を押したあと、次の画面で「送信実行」をクリックすると登記簿謄本の請求データ送信が行なわれます。
4.手数料を納付する
「送信実行」を押したあとは「処理状況を確認する」のボタンをクリックして、処理状況を確認します。一覧からいま送信した請求を見つけて「納付」をクリックすると、電子納付ができる流れです。
なお、登記簿謄本の手数料は、ATMからでも納付できます。
不動産登記簿謄本をオンライン請求する際の注意点
不動産登記簿謄本のオンライン請求には、多くのメリットがある反面、以下で紹介する3つの注意点もあります。そのため、登記簿謄本の請求では、オンライン申請だけにこだわるのではなく、自分のスケジュールやライフスタイルに合う方法を選択することが大切です。
登記上の正しい住所が必要
登記簿謄本の交付申請では、登記内容と同じ「正確な住所」が必要となります。特に、不動産特有の以下2つの番号は、住所の表記と異なることが多いため注意してください。
●土地の「地番」
●建物の「家屋番号」
不動産取引のために登記簿謄本を取得する場合、固定資産税評価額の納付書や土地や建物の権利書などで正しい住所を確認しておく必要があります。
土日の申請はできない
登記簿謄本を請求できるのは、窓口・オンラインのどちらであっても、平日の受付時間のみです。確定申告のオンライン申請のように、24時間できるわけではありません。
また、オンライン申請の受付時間も夜21:00までと決められているため、日時ともに余裕をもったスケジュールで申請手続きを行なうことが大切です。
交付までに日数がかかる
オンライン申請は、請求内容に基づく形でプリントアウトしたものを封入し、それから発送する流れです。そのため、郵送の場合、申請から交付までに1~3日程度かかります。例えば、今日(月曜日)オンライン申請をして郵送交付を受ける場合、登記簿謄本が届くのは翌日(火曜日)以降となるでしょう。
また、オンライン申請を行なったのが金曜日の夜であれば、翌週の月曜日に受付 ⇒ 火曜日以降の到着となる可能性があります。
オンライン申請は、自宅から請求できる非常に便利なサービスです。しかし、1日でも早く登記簿謄本を取得したい場合は、登記所に直接出向いたほうがよいでしょう。なお「オンライン請求 ⇒ 窓口受け取り」の方法であれば、申請する時間帯によっては即日発行が可能です。
登記事項要約書はオンライン申請できない
登記記録の概要を記載した「登記事項要約書」は、法務局の窓口でのみ発行される書類です。オンラインでは、登記簿謄本以外の書類も申請できますが、登記事項要約書は対象ではありません。
不動産登記関連でオンライン申請できる書類の内容が知りたい方は、法務局の公式情報をチェックしてください。
参考:法務省:オンラインによる登記事項証明書等の交付請求(不動産登記関係)について
登記簿謄本の閲覧なら有料サービス利用もおすすめ
不動産の登記情報を閲覧したいだけであれば「登記情報提供サービス」という有料サービスを利用するのがおすすめです。
登記情報提供サービスでは、登記簿謄本に記載される情報をパソコンなどの画面上で閲覧できます。料金は書類によって異なり、登記簿謄本の全部事項は1件あたり332円で閲覧可能です。
印刷しても証明書にはなりませんが、書類を請求するよりも安価に閲覧できるため、登記情報のみを確認したいときはぜひ利用してみてください。
まとめ
今回は、登記簿謄本のオンライン申請におけるメリットや、オンライン申請の流れ・方法を紹介しました。
「オンライン申請 ⇒ 郵送」は、自宅で登記簿謄本の請求・取得を完結できる便利なサービスです。ただし、取得までには日数がかかることがあります。各申請方法のメリットや注意点をよく確認したうえで、自分のスケジュールやライフスタイルに合う方法を選択してください。
■監修者
名前:齋藤 彩(さいとう あや)
所有資格:CFP(Certified Financial Planner)、1級FP技能士、薬剤師免許
おもなキャリア:
急性期総合病院において薬剤師として勤める中、がん患者さんから「治療費が高くてこれ以上治療を継続できない」と相談を受けたことを機にお金の勉強を開始。ひとりの人を健康とお金の両面からサポートすることを目標にファイナンシャルプランナーとなることを決意。現在は個人の相談業務・執筆活動を行っている。