かぼちゃの馬車事件とは?不動産投資の失敗を回避するための注意点

2024年03月15日

不動産投資に興味はあるものの、まとまった資金が必要なこともあり、危険なイメージが拭えないという方もいるでしょう。このイメージを決定づけることとなった一つは、多くの不動産投資家が巨額の負債を被ることになった「かぼちゃの馬車」事件です。不動産会社の手口が悪質なだけでなく、銀行も不正行為に関わっていたため、社会問題に発展しました。

今回はかぼちゃの馬車事件の概要と問題点を確認しながら、不動産投資で失敗を回避するための対策や注意点などを紹介します。

かぼちゃの馬車事件とは?

かぼちゃの馬車事件とは、シェアハウス「かぼちゃの馬車」への投資において、運営会社不動産会社の破綻によりサブリース賃料が未払いとなり、投資家が巨額の債務を抱えることになった事件です。自己破産となる投資家も多く、社会問題となりました。

本件は、不動産投資家が不動産会社の建築した女性専用シェアハウス「かぼちゃの馬車」を購入し、不動産会社とサブリース契約を結ぶことにより、安定した賃料を得られるというスキームです。物件価格は一棟1億円を超えるため、購入にあたり、通常は厳格な審査が行なわれるべきところ、不動産会社は融資書類を改ざんし不動産投資ローンの審査を通していました。

ローンが高額になればそれだけ銀行の利益も大きくなります。そのため、融資元の銀行は不動産会社に加担し融資に積極的になったことも、被害の規模を大きくしました。

このような背景から、不動産会社破綻後、投資家は銀行に調停を申し立て、不正融資を行なっていた銀行が物件と債務を相殺することで決着します。解決はしたものの、不動産投資の恐ろしさが露見する事件であったといえるでしょう。

かぼちゃの馬車事件の問題点

前項で少し触れたように、かぼちゃの馬車事件はただ事業者が破綻したのではなく、複数の不適切な行為が関係しています。どのような点が問題だったのか見ていきましょう。

高額な建築会社へのキックバック

キックバックとは、取引先に対して発注の謝礼として支払うものです。

建築会社から不動産会社へのキックバックの額は、工事費の2~3%が相場といわれています。しかし、不動産会社は建築会社に、建築費用の50%という破格のキックバックを要求し、それを収益源としていました。

建築会社はキックバックを捻出するために費用を建築費に上乗せしていたため、投資家は相場の倍に近い価格で物件を購入する事態となっていました。

銀行の不正融資

不動産投資では物件取得の資金のために不動産投資ローンを組み、家賃収入で返済していきます。家賃収入が得られなかった場合には、個人資金から返済が必要です。

そのため、ローンを組むには物件の収益性だけでなく、個人の支払能力についても審査されます。1億円以上の借り入れを行なうには、収入も高いレベルを求められるのが一般的です。

そこで当該の不動産会社では、ローンの審査が通るよう書類の書き換えを行ない、投資家に高金利・頭金なしの不動産投資ローンを銀行に申し込んでいました。そして銀行側も、建築費が高額になるとローン金額も大きくなるため、当該の不動産会社の行為を黙認して融資していたのです。

また、銀行は顧客に向けてかぼちゃの馬車についてのセミナーを実施するなど、融資に積極的でした。

このように、本来は高額な不動産投資ローンを組めない人もローンが組めてしまったことにより、サブリース賃料が入らなくなったとたんに自己破産しなければならなかった人もいます。

実現不可能なサブリース契約

かぼちゃの馬車事件では、投資家が不動産会社に物件を貸し不動産会社が入居者に転貸する、サブリース契約の危険性についても触れられることが多くあります。しかし、サブリース契約のスキーム自体は問題ではありません。

この事件で問題だったのは、その不動産会社側がニーズの低い物件に対して周辺相場を超える高額な家賃を設定し、実現不可能なサブリース契約をしていたことです。

かぼちゃの馬車は一般的なシェアハウスと異なり、共用スペースはほとんどありませんでした。にもかかわらず家賃は相場より高いため、入居率は40%程度にとどまっていたといいます。

サブリース契約では入居者の有無にかかわらずオーナーに賃料を支払わなければならないため、不動産会社の負担分はどんどんかさみます。

不動産会社の利益は、建築会社からのキックバックによるものであり、そもそもサブリース収入では収益が得られない状態でした。つまり、収益を上げるには、新規に物件を建築し続けなければならなかったのです。

しかし、建設するほど今度はサブリースの赤字が増えるため、経営が立ち行かなくなり破綻しました。

かぼちゃの馬車事件による不動産投資への影響

かぼちゃの馬車事件は、不動産投資の融資環境へ大きな影響を与えました。その一方、業界でのコンプライアンスが強化され、投資家にとっては適正な投資がしやすい環境になったというメリットもあります。

不動産投資に対する融資の引き締め

かぼちゃの馬車事件は、銀行による不正融資も一端を担っています。

そのため、かぼちゃの馬車事件が明るみに出ると、金融機関における不動産投資ローンの審査が厳しくなり、融資の引き締めが起こりました。

特に、融資額の大きい一棟物件の融資は事件以前よりも受けにくくなっています。

サブリース新法の制定

かぼちゃの馬車事件のほかにも、サブリースに関するトラブルは少なくありません。

特に、長期間の家賃保証を謳っておきながら一定期間後の家賃減額や一方的な解約などを申し出られたという事例が多く見られます。

トラブルの多くは、不動産会社から不動産投資家に十分な説明がなされていない、デメリットを意図的に知らせていないなどが要因と考えられるでしょう。

このようなサブリース契約に関するトラブルを防止するため、2020年12月15日より「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律」いわゆるサブリース新法のうちの「サブリース業者とオーナーとの間の賃貸借契約の適正化に関する措置」が施行されることになりました。

サブリース新法では、かぼちゃの馬車事件に見られるような誇大広告や不当勧誘を禁じ、重要事項説明や書面交付を義務化しています。違反者には罰則規定も定められました。

かぼちゃの馬車事件から得られる不動産投資の教訓

かぼちゃの馬車事件で被害を受けた不動産投資家は、おもに不動産投資の初心者でした。つまり、不動産投資について正しい知識を身に付けていなかったために、騙されてしまったともいえます。

かぼちゃの馬車事件から得られる、不動産投資の教訓は次のとおりです。

不動産の価値や需要を判断できる知識が必要

かぼちゃの馬車の建築費は、キックバック分が含まれるため相場の約2倍に達していました。投資家自身が不動産価値を見極められれば、そもそも価格に見合っていない物件を購入することはなかったでしょう。

賃貸需要や家賃設定に関する知識も同様に、需要が厳しい物件を高額で賃貸に出しても、入居者が付かないのは当然です。その場合は家賃を下げるなどの工夫が必要となるでしょう。

信頼できる不動産会社の選択が重要

本来不動産投資において、不動産会社と不動産投資家はビジネスパートナーであるはずです。

しかし、今回の不動産会社の例を見ると、不動産会社は投資家の利益ではなく自社の利益にしか着目していなかったと考えられるでしょう。

投資家に対して誠実でない不動産会社を選ぶと、投資の失敗を招きます。不動産投資を進める際は複数社を比較し、担当者の対応などから信頼できる不動産会社を選択することが重要です。

不動産に投資する際のポイントと注意点

これから不動産投資を始めるにあたり、失敗を回避する方法はあるのでしょうか。初心者が押さえておきたい投資のポイントや注意点を紹介します。

不動産投資のリスクを知っておく

どのような投資にもリスクがあるように、不動産投資にもリスクがあります。おもなリスクを挙げてみましょう。

・空室リスク
・家賃下落リスク
・災害リスク
・資産価値下落リスク
・修繕リスク
・金利上昇リスク

リスクを回避するには、リスクの種類を知り、対策を取ることが重要です。

例えば、空室リスクや家賃下落リスクに備えるには、賃貸需要の高いエリアを選択する、客付けに強い不動産会社に管理を依頼するなどの対策が取れます。災害リスクについては、適切な保険に加入しておく、災害リスクの低いエリアを選ぶなどの方法が有効です。

利回りのみで判断しない

投資先の物件を選ぶ際、利回りのみで判断するのは危険です。利回りが高いからといって、高収益が期待できるとは限りません。

投資物件に記載されている利回りは、満室想定で計算した表面利回りです。一般的に物件価格が低くなると表面利回りが高くなるため、築古物件や地方物件は利回りが高くなります。

しかし、このような物件は満室運営が困難なため、実際に得られる利回りは大きく下がります。つまり、利回りが高いということは、リスクも高いということになるのです。

投資目的を明確にしておく

不動産投資を始める場合、投資目的を明確にしておくことも大切です。目的に応じて最適な物件は異なります。

例えば、老後資金の確保であれば利回りは低くてもできるだけ長く安定して運用できる人気エリアの物件が適しています。一方、節税対策であれば減価償却費を多く取れる木造の築古物件やマンションが有利です。

投資の目的が不明瞭であると、適切な物件選択が行なえません。結果、勧誘に流されやすくなってしまうため注意してください。

不動産投資初心者なら「COZUCHI」がおすすめ

かぼちゃの馬車事件などを振り返ると、不動産投資に興味はあるものの不安で一歩を踏み出せないという方もいるでしょう。

不動産投資には、物件を購入する現物投資以外にも、不動産投資クラウドファンディングを利用する方法もあります。
不動産投資クラウドファンディングでは、少額からの投資が可能かつ、ほったらかしで運用もできるため不動産投資初心者の方でも挑戦しやすい投資手法といえます。

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まとめ

かぼちゃの馬車事件は不動産投資の怖さを示しているだけではありません。不動産投資の基本的な仕組みややり方を理解していれば避けられた可能性も高く、学ぶべき点が多くあります。これから不動産投資を始める方は参考にしてください。

不動産投資は、収益物件を購入して賃貸経営を行なうほかにも、クラウドファンディングを通じた投資も可能です。大きな金額を投入するのが不安なら、少額投資ができる不動産投資クラウドファンディング「COZUCHI」もご検討ください。

■監修者

名前:齋藤 彩(さいとう あや)
所有資格:AFP(Affiliated Financial Planner)、薬剤師免許、1級FP技能士

おもなキャリア:
急性期総合病院において薬剤師として勤める中、がん患者さんから「治療費が高くてこれ以上治療を継続できない」と相談を受けたことを機にお金の勉強を開始。ひとりの人を健康とお金の両面からサポートすることを目標にファイナンシャルプランナーとなることを決意。現在は個人の相談業務・執筆活動を行っている。