不動産の減価償却とは?減価償却の計算方法やメリット、注意点などを解説
2024年04月03日
「不動産の減価償却により節税ができる」と、聞いたことがある方は多いのではないでしょうか。しかし、具体的な仕組みやその他のメリットについては知らないという方もいるかもしれません。
そこで本記事では、不動産減価償却の概要や計算方法、メリットなどを解説します。この記事を読めば、不動産減価償却がどのようなものかがわかるようになるでしょう。
取得した不動産の減価償却について知りたいという方は、ぜひ参考にしてください。
不動産の減価償却とは
「減価償却」とは会計で使われる考え方で、使用や時間経過などによる固定資産の価値の減少を計算して、費用として配分する手続きのことです。不動産購入における減価償却は「法定耐用年数」と呼ばれる年数に応じて計算します。
取得した資産を一括して費用に計上すると、資産が複数年にわたって与えた影響を会計に正しく反映できなくなるため、減価償却を行ないます。
なお、不動産の減価償却では、建物と土地を分けて考えなければなりません。建物は時間経過とともに価値が減るため減価償却を行ないますが、土地は価値が減らないため減価償却の対象外となるからです。
法定耐用年数とは
法定耐用年数は、会計上の固定資産の使用可能期間で、建物の構造や用途などによって法律で定められています。
住宅・店舗用 |
飲食店用 |
事務所用 |
工場・倉庫用 |
|
木造・合成樹脂造 |
22年 |
20年 |
24年 |
15年 |
金属造(骨格材の肉厚が3mm以下) |
19年 |
19年 |
22年 |
17年 |
金属造(骨格材の肉厚が3mm超4mm以下) |
27年 |
25年 |
30年 |
24年 |
金属造(骨格材の肉厚が4mm超) |
34年 |
31年 |
38年 |
31年 |
鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造) 鉄筋コンクリート造(RC造) |
住宅用:47年 店舗用:39年 |
34~41年(内装構造で異なる) |
50年 |
38年 |
法定耐用年数が過ぎたからといって建物が使えなくなるわけではありませんが、法定耐用年数が過ぎた物件は、融資の条件が厳しくなるケースが少なくありません。
不動産減価償却の計算方法
減価償却の計算方法には「定額法」と「定率法」がありますが、2016年度の税制改革で、建物などについては定率法が使えなくなりました。そのため、ここでは定額法の計算方法のみを解説します。
定額法とは耐用年数の期間内で、同じ額の減価償却費を毎年計上するものです。計算式は以下のようになります。
1年間の減価償却費=取得価額×耐用年数に応じた定額法の償却率
また、償却率は「償却率=1÷法定耐用年数」で求められます。定額法では、減価償却費を以下の計算式で求めることもできます。
1年間の減価償却費=取得価額÷減価償却期間
なお、新築の場合は、減価償却期間に法定耐用年数をそのまま当てはめて計算できます。
中古不動産は減価償却をどのように計算する?
続いて、中古で不動産を購入した場合の減価償却期間の計算について見ていきましょう。中古不動産では、法定耐用年数が残っているかどうかで計算方法が異なります。
・法定耐用年数が残っている場合
減価償却期間=(法定耐用年数-経過年数)+経過年数×20%
・耐用年数が残っていない場合
減価償却期間=法定耐用年数×20%
計算で端数が出たときは切り捨てです。また、計算結果が2年未満のときは一律2年として扱われます。
不動産を減価償却するメリット
不動産を減価償却すると、具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか。ここではメリットを2点紹介します。
実際の支出がない経費として計上できる
減価償却をすると、実際の支出がなくても経費として計上できます。一般的に、経費は実際の支出をともないますが、減価償却は帳簿上支出として計算するだけで、実際の支出はありません。
しかし、所得からは減価償却分の経費を差し引けるため、所得税などの税金が減って手取りが増えます。特に、中古で購入して耐用年数が短いケースでは、1年当たりの減価償却費が増えるため高い節税効果を得られるでしょう。
損益通算ができる
損益通算ができることも減価償却のメリットです。損益通算とは、ある所得で赤字が出た際に、ほかの所得から赤字分を差し引ける仕組みです。
例えば、不動産所得と給与所得があるケースで不動産所得が赤字になると、損益通算によって赤字が給与所得で相殺され、課税対象額が圧縮されます。給与所得は源泉徴収されているため、払いすぎた税金が還付されるでしょう。
※組合事業の場合は、発生した損失は損益通算出来ないのでその点は注意しておきましょう。
「不動産所得が赤字になると、不動産投資ローンが組めなくなるのでは?」と思う方もいるかもしれません。しかし、減価償却による赤字は帳簿上のもので、本来の赤字とは性質が異なります。金融機関も減価償却する前のキャッシュフローで評価するため、融資への悪影響は少ないでしょう。
不動産を減価償却する際の注意点
不動産の減価償却には、メリットだけではなく注意点もあります。ここでは、注意点を3つ紹介します。
土地と建物を分ける
前述したように、不動産で減価償却ができるのは建物のみで、土地は減価償却ができません。そのため、土地と建物を一括取得した場合は、それぞれの取得価額を分ける必要があります。
内訳が不明なときは、一定の基準に基づいて按分しなければなりません。基準には時価や固定資産税の評価額などがありますが、客観性に欠ける基準で按分すると税務署から認められないケースもあるため注意しましょう。
売却時に税金が高くなる場合がある
不動産を売却した際に発生する譲渡所得は、以下の計算式で求められます。
譲渡所得=譲渡収入金額-(取得費+譲渡費用)
取得費とは、取得価額などから所有期間中の減価償却費相当額を差し引いた金額です。所有していた年数などによっては取得費が小さくなり、譲渡所得が増える可能性があるため注意しましょう。
特に、所有期間が5年以内のときは短期譲渡所得として扱われ、その場合は税率が約40%になります。5年超の所有で適用される長期譲渡所得の税率である約20%と比べると、税率は約2倍です。
デッドクロスに注意
減価償却を利用する際には、デッドクロスにも注意しましょう。デッドクロスとは、ローンの元金返済額が減価償却費を上回ることを指します。ローン返済のうち、経費にできるのは利息のみで、元金は経費にできません。
そのため、元金返済額が減価償却費を上回ると、帳簿上では利益が出ていても資金繰りが悪化します。最悪の場合、ローン返済や税金の支払いができなくなるおそれもあるでしょう。
特に、築古物件は短い期間で減価償却ができ高い節税効果がありますが、デッドクロスが起こりやすいため注意が必要です。
不動産減価償却をうまく利用するポイント
不動産減価償却のメリットや注意点を踏まえたうえで、うまく利用するポイントを解説します。
木造の築古物件を選ぶ
木造物件は法定耐用年数が短いため、同じ取得価額でも鉄筋コンクリート造などと比べると1年に計上できる減価償却費が多くなり、高い節税効果が得られます。築古物件は耐用年数が短いことから、木造の築古物件ではさらに節税効果が高まることが考えられます。
ただし、前述したように築古物件はデッドクロスが起こりやすいため注意しましょう。
出口戦略を考える
減価償却は法定耐用年数という制限があり、いずれは利用できなくなるため、出口戦略も考えておかなければなりません。減価償却が利用できなくなると、所得税などが大きく増額して資金繰りが悪化するおそれがあります。
減価償却が使えなくなるときは、実質的な利回りが低下するため、売却などを考えるタイミングの一つです。例えば、収益物件としてそのまま売却したり、建物を取り壊して更地にして売却したりすることなどが考えられます。
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まとめ
不動産減価償却は、建物の費用を法定耐用年数に応じて分割して計上していくものです。実際の支出がともなわないため、税金が減って手取りが増えるなどのメリットがあります。
一方で、減価償却で節税できる期間は限られていることから、あらかじめ出口戦略を考えておく必要があるでしょう。
不動産投資をするうえで減価償却は必須ともいえる知識ですが、会計に詳しくない方にとってはわかりにくいかもしれません。
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■監修者
名前:工藤 裕徳(くどう ゆうとく)
所有資格:特定社会保険労務士、行政書士、1級FP技能士
おもなキャリア:
1989年安田信託銀行(現・みずほ信託銀行)入行、その後、Alico Japanを経て、
2002年大和証券に入社。国際企画部、経営企画部、フィリピン現地法人取締役、上海合弁企業監査役、バンコク駐在員事務所長などを歴任した後、2017年大和証券を退職。
タイの日系企業の財務顧問(CFO)に就任するとともに、2018年3月工藤国際社会保険労務士事務所を設立し、2021年3月に法人化。2023年3月に行政書士事務所を併設。