マンションが高すぎて買えない!価格高騰の理由やコストを抑える方法

2024年09月12日

マンションの購入を考えているものの、物件価格の高騰で迷っている方や諦めている方もいるのではないでしょうか。

国土交通省が発表した「不動産価格指数(令和5年11月・令和5年第3四半期分)」によると、2023年11月の住宅の価格指数は、2010年を100とした場合に戸建て住宅が113.6なのに対し、マンションは193.4です。このことから、2倍近くの価格差があることがわかります。

参照:国土交通省「不動産価格指数(令和5年11月・令和5年第3四半期分)を公表~不動産価格指数、住宅は前月比 1.1%下落、商業用は前期比 1.0%上昇~」

マンションを購入する好機を逃さないために、購入価格がなぜ高騰しているのか、そして今後安くなる見込みがあるのかを把握することが大切です。

この記事では、マンションの価格に影響をおよぼす最近の社会情勢、コストを抑えてマンションを購入する方法について解説します。購入検討する際に、ぜひ参考にしてください。

マンションの価格が高騰している理由は?

はじめに、マンション価格の高騰につながっていると考えられる4つの背景を解説します。

マンションの供給数不足

1つ目の理由として挙げられるのは、マンション需要に対して供給数が不足していることです。

不動産経済研究所「全国新築分譲マンション市場動向2023年」によると、全国の新築分譲マンション発売戸数は6万5,062 戸で前年よりも10.8%減少しています。一方で価格は高騰し、2023年のマンション全国平均価格は5,910万円で前年比15.4%の上昇です。

また、不動産経済研究所「首都圏新築分譲マンション市場動向2023年のまとめ」によると、首都圏では平均価格8,101万円、㎡単価122.6 万円と最高値を更新しました。特に東京23区は、平均価格1億1,483万円と1億円を超えています。東京23区の供給戸数は増えているものの、埼玉県や神奈川県などその他の地域では減っていることから、首都圏全体の供給戸数も減っている状況です。

出典:株式会社不動産経済研究所「全国 新築分譲マンション市場動向 2023年」
出典:株式会社不動産経済研究所「首都圏 新築分譲マンション市場動向 2023 年のまとめ」

金融緩和政策による低金利

マンション購入にあたっては多くの方が住宅ローンを利用しますが、この住宅ローンの金利も価格高騰の要因となっています。

日本銀行は2013年に「量的・質的金融緩和」を開始し、国債や投資信託等を買い入れて資金の市場流入を活発化させました。その結果、長期国債の金利と連動している住宅ローンの固定金利が長期国債の金利低下にともなって低下したのです。金融緩和に加えて金融機関の金利引き下げ競争により、短期金利に連動する住宅ローン変動金利も低水準です。

住宅ローン金利が低いことは、ローン返済者にとってはメリットであり、マンションの販売促進につながっていたと推測できます。この機会にマンションを購入しようと需要が高まるものの、前述したように販売戸数は減少しているため、ますます価格が高騰しました。

テレワークの普及

2019年12月に、中国から拡大した新型コロナウイルス感染症の流行により、仕事の仕方も変わりテレワークが普及しました。

自宅で過ごす時間が増え、仕事用の集中できるスペースや、家での余暇を快適に過ごすためのスペースなどが必要になり、今住んでいる家ではそれらが叶えられないと判断した方もいると考えられます。結果的に住み替えを検討する方が増え、マンション需要のさらなる高まりへとつながりました。

また、海外投資家もこの住み替え需要の高まりを予測し、昨今の円安状況も踏まえて、積極的に物件を購入していたと推測できます。

建築資材や人件費の高騰

建築資材の不足などから建築コスト全体が上昇していることも、価格推移に影響しています。

一般財団法人 建設物価調査会のデータによると、建築費指数は2015年を100とした場合に、2018年頃から右肩上がりに推移し、2024年2月時点で130ほどになっています。新型コロナウイルス感染症流行に起因する国際海上輸送の停滞により、輸入資材の確保が困難となったことも拍車をかけたと考えられるでしょう。

参照:一般財団法人 建設物価調査会「建設物価 建築費指数(R)【2024年2月分】」

さらに、建築業界では人手不足が続いています。人材を確保するために賃金(人件費)が上がり、その費用がマンション購入価格に上乗せされています。

「高すぎて買えない」時期は終わるのか?マンションの価格推移に関わる3つの動向

前述したように、マンションの価格高騰には複数の要因が絡んでいます。

そこで、マンションの価格推移に関わる要因のうち、昨今大きな動きがあったものを3つ紹介します。これらの動向には、今後も注視が必要でしょう。

マイナス金利の終了

日本銀行は、2016年から続いていたマイナス金利政策の解除を、2024年3月に決定しました。マイナス金利は、民間の金融機関が日本銀行へ預けるお金の一部に対して適用されていたものです。日本銀行に預金を積み上げると損をする仕組みにし、各金融機関が企業への貸出や投資などに資金を回すように促すことで、経済活性化の一端を担っていました。

このマイナス金利の終了は、市場金利が上がり、住宅ローンの金利も上がる可能性を示唆しています。

一方で日本銀行の植田総裁は「今回の措置で、預金金利や貸出金利が大きく上昇するとは見ていない」との見解を発表しています。銀行から企業への貸付にかかる金利は短期プライムレートに準じており、住宅ローンの変動金利にも影響しますが、この金利が変動するかどうかが1つのポイントになるでしょう。

2024春闘による大幅な賃上げ

マンションを買う側の資金面も重要な指標です。

日本労働組合総連合会の集計結果によると、2024年の春闘では満額回答が相次いでおり、賃上げ率が5%を超えたと、2024年3月22日付のプレスリリースで報告されています。通常は、賃金アップにより個人消費が拡大しますが、近年の物価上昇とバランスが取れているかがポイントです。

参照:日本労働組合総連合会「中堅・中小組合含め、高水準の回答続く!~2024 春季生活闘争 第 2 回回答集計結果について~」

また、総務省統計局が開示している「2020年基準 消費者物価指数 全国 2023年(令和5年)平均」によると、2023年の物価指数(総合指数)は前年に比べて3.2%上昇し、依然物価高の状態が続いているとされています。2024年の春闘による賃上げが物価上昇を上回るものとなるか、注視が必要です。

参照:総務省統計局「2020年基準 消費者物価指数 全国 2023年(令和5年)平均 (2024年1月19日公表)」

2023年末の円高とその後の円安

海外投資家の動きに、特に影響するのが外国為替相場です。一時は150円台となるなど、近年稀に見る円安が続いていましたが、2023年末に一時円高に転じました。これは、アメリカの金利引下げ観測の高まりと、国内の金融緩和政策修正観測の影響によるものと考えられます。

これにより円安脱却が期待されましたが、2024年3月にマイナス金利政策解除が発表されたのち、再び円安へと推移しました。すでに政策変更が為替相場に織り込まれていたことに加え、日本銀行の声明文に「緩和的な金融環境の継続」が明記されていたことが要因とみられます。

2024年はアメリカの利下げ開始見通しや大統領選など外国為替相場に影響を与えるトピックスが並んでいるほか、「有事のドル買い」の要因となる地政学リスクの高まりなども懸念されます。国内の金融政策の転換と合わせ、これらが為替相場にどの程度影響をおよぼすかが鍵になるといえます。

マンションが高すぎて買えない場合の代替案やコストを抑える方法

新築マンションの価格が高騰し、価格上昇の収束を見通せないなかでも、住まいを必要とし購入を決断しなければならない方もいるでしょう。ここでは、コストを少しでも抑えてマンションを購入する方法を紹介します。

中古マンションを購入する

1つ目は、中古マンション購入の検討です。マンションは一般的に築年数が経過するほど価値が下がるため、新築と比較すると中古マンションのほうがコストを抑えて購入できます。特に、築20年を超えると、価格がさらに安くなる傾向があります。

しかし、築年数が経過すると設備の古さなどに不安があるため、耐震性や管理状態などに留意して物件を選ぶ必要が生じるでしょう。

古い物件ほど修繕が必要になる可能性がありますが、修繕にかかる費用は修繕積立金として管理費等と合わせ徴収されるのが一般的です。管理費や修繕積立金が適切に徴収されて有効に活用されているか、管理組合の議事録などを見て、管理組合が機能しているかを確認するとよいでしょう。

補助金や減税の制度を利用する

2つ目は、補助金制度等の利用です。例えば、新築マンションについては、条件に該当すれば子育てエコホーム支援事業や給湯省エネ2024事業などが利用できます。長期優良住宅、環境に配慮したZEH住宅といった物件が対象になるなど、補助金によって条件が異なるため、しっかりと確認することが大切です。

長期優良住宅化リフォーム推進事業など、中古マンションをリフォームする際に適用できるものもあります。さらに、各自治体でマンション購入時に利用できる支援制度を設けている場合があるので、確認するとよいでしょう。

また、マンション購入では住宅ローンを利用する方が多くいますが、所得や償還期間によっては、住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)を利用できます。こちらも購入する物件等に条件があるため、事前に確認しましょう。

エリアや間取りを再考する

3つ目は、購入する物件の希望条件を再考することです。

例えば、立地は主要駅の近くなど利便性が高ければ価格も高騰しますが、隣駅や沿線上など条件エリアを拡大することで価格を下げられるケースもあります。また、間取りを再考してよりコンパクトな家を選択すれば、その分のコストも抑えられます。

ただし、条件を考え直すなかで、災害リスクなどは極端に妥協しないようにしましょう。防犯性のほか、子育て世代の場合は子どもの通学路の環境など、妥協できない点を整理しておくことも大切です。

まとめ

マンション価格の高騰は、購入を検討する消費者の「高すぎて買えない」という考えにつながっているのが現状です。その背景には、マンションの供給不足や建築資材の不足などさまざまな要因が考えられます。

金融政策など、マンション価格に影響を与える要因に動きはあるものの、マンションがこの先必ず安くなるとはいえません。

今後の価格推移を注視しつつ、安く購入できる方法や中古マンションの検討も行い、納得のいく住まいを手に入れましょう。

■監修者

名前:八木 満里子(やぎ まりこ)
所有資格:日本証券アナリスト協会認定アナリスト、日本FP協会認定AFP、日本証券業協会一種外務員資格、消費生活アドバイザー

おもなキャリア:
地方銀行で通算21年間勤務、おもに市場リスク管理を担当。
その後、コンプライアンス意識の高さと金融関連資格を強みに金融系ライターとして活動中。
2024年より、一般社団法人日本金融教育支援機構認定講師。